760話 魚介購入
始まりの町へと戻った俺たちは、転移で北海の町へと跳んだ。
「またきたな!」
「ヤー!」
「フムー!」
今度こそ、魚介類を手に入れてやるぜ!
「皆も、お魚屋さんを発見したら教えてくれよ?」
「クマ!」
「ペペン!」
まだデスペナは残っているが、町の探索なら特に問題ない。のんびりとマップを埋めていこうと思う。
「まずはあっちから行くか」
「フマー!」
「キュ!」
「ラー!」
今回は何となく、寒さに強そうな面子だ。火の力を持っているファウに、水属性のルフレとペルカ。毛皮のあるクママとリック、アコラ。風の子のアイネである。
歩き回って判ったが、北海の港町は三日月の形をしていた。
町の北側に大きな湾があり、その湾を囲むように町があるのだ。湾にはいくつもの桟橋があり、港が複数あるっぽかった。
そんな港に隣接された、水揚げ場。その横にある大きな倉庫の中には、大量の魚が並べられていた。
「おお! 魚がたくさん!」
ホタテもタラバガニもケガニもエビもいる! ここはパラダイスやー!
「やったー!」
「フムー!」
「ペペーン!」
思わずルフレとペルカと一緒に万歳をしちゃったぜ。
魚を前にして大喜びしていると、漁師さんが話しかけてきた。
「兄ちゃん、魚好きなのかい?」
「はい! 大好きです!」
「フムムー!」
「ペーン!」
漁師さんの言葉に、俺たちは食い気味に答える。ルフレもペルカも全身を使って魚大好きアピールだ。
「がはははは! そうかいそうかい! 普通は小売りはしてないんだが、兄ちゃんなら売ってやってもいいぜ!」
NPCの漁師さんが、なぜか超好意的だ! ルフレとペルカの可愛さにメロメロなのか? ともかく、ラッキーだ!
買えるだけ買いましょう! 金ならある! 成金野郎の資金力を見せてやるぜ!
そうして魚を大量購入していると、漁師さんがとっておきだと言って巨大な魚を出してきた。なんと、マグロである。
それも、2メートル近いやつを、そのまま丸ごと!
「え? これ、全部、丸のまま売ってもらえるんですか?」
「え? 丸ごと買ってもらえんのかい? 切り分けずに? 値段、結構するけど?」
「買いましょう!」
300万Gは確かに食材の値段としては破格! 超お高い! でも、マグロだよ? そりゃあ、買うでしょ!
寿司に鉄火丼にマグロユッケにステーキに兜焼きに煮付けに――ともかく、ありとあらゆるマグロ料理が食べられる!
リアルじゃお高くて中々手が出ない大トロ中トロだって、これならどれほどの量が取れるか!
マグロ三昧! 素敵ワード過ぎる!
「凄いな兄ちゃん! また来な! 次も珍しい魚を仕入れとくからよ!」
「お願いします!」
「フムムー!」
「ペペーン!」
ルフレとペルカも漁師さんに抱き着いてお礼を言っているな。照れてるね! やっぱ可愛さは正義ってことか!
魚や貝、海藻類を大量に買い込んで満足した俺たちは、のんびり散策に切り替えて北海の町を巡っていた。
露店では魚介の網焼きが売られ、町の至る所に雪像が置かれている。ただ歩き回るだけでも楽しいのだ。
「フムー!」
「ペーン!」
ルフレとペルカが、両手に串焼きを持ってスキップしている。
「お前らもご機嫌だな」
「フムムー!」
「ペペー」
「口の中にものを入れながら喋るんじゃありません」
まあ、両手に二本ずつ串焼き持ってるし、食べないとドンドン増えていっちゃうだろうから仕方ないんだが。
だったら買い与えなければいいって?
いや、ね。露店の誘惑って、凄いじゃん? ホタテやイカが焼かれて、放たれる暴力的な匂いと言ったら……。
我慢できるはずがないのだ。そりゃあ、片っ端から買ってしまう。
そして、ルフレとペルカから「ずるい」って感じのジト目で見られたら、2人にも買わないわけにはいかないでしょ?
つまり、魚介の串焼きが美味そう過ぎるのが悪い!
「ラー!」
「クマー!」
「うぉぉぉぉ? ちょ、揺らすなって! アコラ、肩の上で跳ねるな!」
「キュー!」
「ヤヤー!」
「フマー!」
「リックもファウもアイネも、左右から耳引っ張らないで!」
クママたちも買い食いがしたいのだろう。俺の体をガクガク揺する。
しかし、北海の町では魚介ばかり売っていて、他のモンスたちが食べられるようなものが売っていないのだ。
雑貨屋とかに入れば普通の食べ物はあるだろうが、それじゃ食べ歩きには向かないしな。
「ほれ、これでも食べてなさい」
「ラー……」
「クマー……」
とりあえず、おやつを渡してそれを食べてもらうが不満気だ。それでもちゃんと食べるんだもんな。食いしん坊どもめ。
「あー、もう! とりあえず港にいって海でも見ようぜ!」
こういう時は、勢いで誤魔化すのだ!




