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744話 馬車発見


 発見した轍をさらに辿っていくと、途中で途切れてしまった。この辺は地面が硬く、跡が残らないのだろう。


 どうすればいいのか分からないので、とりあえず真っ直ぐに歩を進めた。


 他に轍がないか皆で探すが、特に見当たらない。だが、それとは違うが、確実に手掛かりとなるものを発見できていた。


 俺たちが進んだその先には、馬車そのものがあったのである。ただ、尋常な状態ではない。


 馬車は綺麗に横転し、様々な荷物が周囲に散乱していた。リンゴや芋などの食料に加え、服や雑貨も多い。


 慌てて駆け寄ると、馬車の裏側にNPCの男性が倒れていた。


「おい! 大丈夫か!」

「まだ生きてるぞ!」


 ジャンピングバードから飛び降りたラモラックたちが男性を抱き起こし、救護をしている。この2人は回復魔術もしっかり履修済みであるらしい。


 将来的に聖騎士とかそっち方面を狙っているんだろう。


「う、うぅ……」

「目が覚めたぞ!」

「あんた、大丈夫か?」

「え? ここは……?」


 最初は混乱していたハーフリングの男性だが、馬車の惨状を見て何があったのか思い出したらしい。慌てて立ち上がると、周囲を見回す。


 そして、絶望的な表情を浮かべた。


「あ、相棒がいない……。馬たちも……」


 彼は相棒であるケット・シーの女性とともに、行商をしているそうだ。


「いつも使ってる安全なはずのルートに、今回に限ってモンスターが出たんだ……」


 彼らは馬車を走らせてモンスターを引き離そうとしたが、最後には追い付かれて襲われてしまったという。


 男性はその時点で意識を失い、気づけば俺たちに助けられていたという訳だった。


「あの……相棒を探すのを手伝ってもらえませんか? お礼ならしますから!」


 まあ、予想通りの展開だよね。ジークフリードが皆の顔を見回し、全員が静かに頷いた。ここで断る選択肢はないもんな。


「わかりました。僕らも探しましょう」

「あ、ありがとうございます!」


 結局、男性が妖精村へと援軍を呼びにいき、俺たちがモンスターが出現した地点へと向かうこととなった。


 彼らはこの先にある岩山で、オーガに襲われたという。オーガ自体はそこまで強いモンスターではないが、一般人には強敵なんだろう。


 言われた方角へと進むと、情報通り前方に岩山が見えてくる。


「あんな岩山あったっけ?」

「うーん? このエリアは広いし、正直分からないなぁ」

「マップでは、岩があることにはなっていますが……。あれほど大きくはなかったのではないですかねぇ?」


 レーが、地図と岩山を見比べながら言う。つまり、イベントトリガーを引いたら出現したってことだ。あれが目的地で間違いなさそうだった。


 馬たちを走らせて岩山に向かうと、想定よりも大きいことが分かった。


 高さは30メートルくらいだが、奥にかなり長いのだ。そして、亀裂のような登り道が、俺たちを誘っているかのように姿を現す。


 幅は10メートルはないかな? まあ、身動きが取れないほど細くはないが、両側の壁が高いため日の光が遮られて薄暗いし、かなりの圧迫感がある。


「さて、ここからは警戒しながら行こうか」

「なあ、俺とラモラックは、上から行く方がいいんじゃないか? ここなら、足場を使って登れるぞ?」

「ぬふ。それはいい案ですね」

「頼めるかい?」

「おう!」


 確かに、リチャードたちのジャンピングバードなら、この岩山を登ることができるだろう。先行してもらえば、索敵にかなり有利だ。


「ファウとアイネも一緒に行ってくれ」

「ヤー!」

「フマ!」


 俺の指示に、ファウたちはビシッと敬礼して飛び出していった。ラモラックたちの隣を並走しながら、手を上げてジャンピングバードに挨拶をしている。


「おー、白銀さんの従魔ちゃんたちと合同特殊任務!」

「燃えるな!」

「ヤヤー!」

「フママー!」


 ファウたちの姿はあっという間に見えなくなった。何か見つけてくれたらいいな。


「じゃあ、僕たちも行こうか」

「おう」


 モンスターや罠を警戒しながらゆっくり亀裂を進んでいくと、先頭のジークフリードが何かを発見した。


「血痕だ」

「ほほぉ? 確かに! こちらの壁も、そうですね!」


 男性たちは短時間で壊滅させられたため、オーガに大きな手傷は負わせていないだろう。つまり、これはそれ以外の血の痕ということになる。


「相棒さんが、攫われてきたってことか?」

「その可能性は高いだろうね」

「おお! あそこを見てください!」


 今度はレーが血を発見した。それも、ちょっとした血痕ではなく、大きな血だまりである。


「これは、急いだ方がよさそうだね」

「そうですねぇ。人間の血だとすれば、かなり危険だ」


 足を止めていると、上からリチャードたちが戻ってくる。


「この先、大きく開けてる場所がある」

「結界みたいなもんで中は覗けないが。十中八九あそこにボスがいるだろう」

「ヤ!」

「フマ!」


 ファウたちも、身振りで何かあると訴えてくれる。できれば、普通のオーガだとありがたいんだけどなぁ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 白銀さんだからねぇ きっとレアな敵が出て来るんじゃないかな
[一言] 『・・・ だとありがたい ・・・』 間違い無くフラグですね。(苦笑)
[気になる点] これ、オウガ襲われてない?(血痕) 馬かもしれんけど。 [一言] このイベント、騎士候補の為に設定されてる気がするんだけど? 馬が居ないって事は馬車を動かすのに騎乗モンスを手配する…
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