734話 ぐみゃぁ
《プレイヤーによって神の箱庭が解放されました。ゲーム内のシステムウィンドウ、もしくは公式ホームページから鑑賞することが可能です》
「え?」
これ、ワールドアナウンス級のことだったの?
どうやら、俺が一番最初に箱庭を弄って登録したようだ。一応ウィンドウを開いてみると、ゲーム内から確認できる動画などの後ろに、箱庭というページが追加されていた。
登録されているのは、1つだけだ。
プレイヤー名ユート、タイトルはモンスたちの秘密基地。うん、俺が今作ったばかりの箱庭だな!
しかも、すんごい勢いで視聴数が伸びていく。その横には星が表示されているな。これは、採点的なことかな? 4.9って、高くね? まあ、一番目の作品だし、とりあえず星付けとけって感じなのかもしれんが。
「でもこれ、完全に俺が解放者だってバレたよなぁ……。絶対にどうすれば箱庭を弄れるか聞かれるじゃん」
どうしよう。教えるのはいいんだけど、俺もどうしてこうなったか全くわからんぞ?
「……よし、早耳猫に行こう!」
分かってること全部アリッサさんに教えちゃって、後はお任せだ!
ということで、その足で始まりの町にある早耳猫へと向かったんだが……。
「うみゃぁぁぁぁ!」
「うぉぉっ⁉」
店に入った瞬間、アリッサさんと目があった。数秒ほど固まったままこちらを見つめていたかと思うと、いきなり叫び声をあげる。
いや、なになに?
突然だったから、驚いてちょっと跳び上がっちゃったぜ。
「あ、あのー?」
「ふふふふ。先に叫んでおけば、きっと耐えられるわ。頑張るのよ私。がんばれがんばれがーんばれ」
「えーっと?」
「ごめんなさい。ちょっと大きな声出しちゃったわね」
「は、はぁ」
どうしたんだろうか? 叫ぶ練習か? だとしたら悪いタイミングで入っちゃったな。
「出直しましょうか?」
「いえいえ! とんでもない! むしろ今なのよ! ここで帰られたら爆弾膨れ上がるし! 今お願い!」
「わ、わかりました」
大丈夫そうかな? うん。大丈夫だろう。
「分かってるわよ! あれでしょ! 神の箱庭!」
「えーっとですね、どこから話せばいいかな。まず、大地母神の試練に挑戦したんですね」
「そ、そこからなのね」
「はい」
やっぱり早耳猫も情報を仕入れているか。パン屋さんの情報を売ったし、挑戦できていると思ったんだ。
だったら話が早い。
「で、ボガートの村の先にある洞窟で、試練を達成したんですよ」
「……? ボガートの村?」
「はい。ほら、地下にある――」
ガタン!
アリッサさんが急に立ち上がる。
「地下? え? 地下なんてあった?」
「はい。結構大きな入り口がありましたよ?」
「……うそ?」
「本当っす」
どうやら、あの洞窟は普通は見えないらしい。入るためには、何か条件があるのだろうが……。分からんな。
アリッサさんに話を聞くと、早耳猫と検証班でかなり細かく探索を行い、地図もだいたいは作製済みであった。
その地図を見せてもらったけど、洞窟があった場所には何も記されていない。その代わり、俺の知らないボスの情報とかがあったけど。
俺はアリッサさんに情報を教えながら、記憶を掘り返す。さすがに入り口のスクショなんて撮ってないからね。
「で、ここにこう地下へと降りていくような洞窟があって、その先にボガートの村があったんですよ」
「ボガートの村って、戦闘にならないの?」
「村のボガートさんたちは肌が白くて、優しい感じでしたよ。なんでも、外にいる茶色いボガートは、日焼けしたヤンチャ坊主らしいです」
「ヤンチャ?」
「はい」
ボガートの村で聞いた話なんかを交えながら、村の様子を語っていく。
「村では物々交換なのね」
「はい。でも、ここで洞窟を進むための必須アイテムが手に入るんで、絶対に物々交換しておく方がいいですね」
ガラス玉がなかったら、キモヒルに心を折られていただろう。あれは絶対に必要だ。
「で、この洞窟を踏破すると大地母神様の石像がある広間に出るんです。これがスクショですね。メッチャ綺麗でしょ?」
「そ、そうね。すっごく綺麗ね」
「でしょ? いやぁ、これを見るだけでも、いく価値ありますよね!」
水臨大樹や各町など、名所はいくつかあるけど、俺的にはベスト3に入るくらいの美しさだと思うのだ。
「き、綺麗なだけなの?」
「まさか! それだけじゃありませんよ」
「そ、そうよね。そうに決まってるわよね!」
ふっふっふ! アリッサさんのご期待通り、すんごい情報を出しちゃいましょうかね!
「その女神像に触れると、試練を受けることができるんです。それで――」
試練の種類と、それを達成することで得られる職人術のスクショを見せる。さらに、俺は大地母神の息吹を手に入れたということ。それを使った後モンスたちが何故か踊り出し、水臨樹が光ったこと。そして、その後に神の箱庭が出現したこと。
箱庭の仕様などを説明し、情報の提供は終了だ。
「――というわけです」
「うぐぐ……ぐ、ぐみゃぁぁぁぁぁ! 耐えられなかったぁ!」




