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733話 ユートの庭


「こ、今度は神精台が光り出したんだけど!」

「ムム!」

「――♪」


 精霊様を模した木像が光り輝いていた。オルトとサクラは大喜びだ。


 そして、水臨樹の根元に驚くべきものが出現していた。


 神精台の丁度目の前に、緑色の光が渦巻いていたのだ。水臨大樹の上にある、あの試練の渦にそっくりである。


 俺は渦に近寄ると、恐る恐る触れてみた。特に触れた感触はない。


 すると、水臨大樹と同じようなウィンドウが表示されたではないか。


 そこには、『ユートの箱庭』という名前と、中に入るかどうかの選択肢が表示されていた。


 試練じゃなくて、箱庭?


 あと、ターミナルの移動って項目もあるな。この渦のことだよな? これを、移動させることも可能らしい。畑内だけではなく、ホームにも持って行けるみたいだ。


「……いや、どうなってるんだ?」

「ム?」

「ヤヤ?」


 オルトたちも、この渦に関しては分かっていないらしい。水臨樹が光って花が咲くまでは想定内だけど、これは知らない? つまり、畑関連のイベントじゃない?


「うーむ」


 とりあえず、緑に光る渦に触れてみる。すると、ユートの箱庭という名前と、そこに入るかどうかという選択肢が提示されていた。


「入ってみなきゃ、何も分からんしな」


 とりあえずYesを選択してみる。その直後、俺の視界が一変し、不思議な場所に移動していた。転移したんだろう。


 オルトたちはいない。


 そこはなんというか、巨大な円形のガラスケースの中だった。直径が20メートル、高さは30メートルくらいかな? ガラス試験管を逆さにして立てたような、丸みを帯びた天井だ。


 足元は茶色の土が敷き詰められており、それ以外は何もない。


「なんだここ……」


 ガラスの外は緑色の宇宙みたいな感じで、この場所以外には何も見えなかった。


 戸惑っていると、目の前にウィンドウが立ち上る。よかった。ユートの箱庭から出るという選択肢もちゃんとある。


 ただ、それ以上に目を引くのが、配置、移動、消去という項目だろう。一番上の配置という部分を押してみる。


 すると、ウィンドウには大量の選択肢が表示されていた。


「なんだこれ? 地面、オブジェクト、空、エフェクト……?」


 地面を再度押すと、芝生A、芝生B、芝生Cと始まり芝生・枯やら、芝生・花とか、色々なものが選べる。試しに芝生Aを選んでみると、足元の地面が一瞬で変化した。


 サッカーのコートに生えているような、短くて均一な長さの芝生だ。選んだものが、反映されたらしい。


「巨大なジオラマというか、箱庭的な感じなのか?」


 その後、時間をかけてユートの箱庭を弄っていると、色々なことができると分かった。


 まずここは、プレイヤーの手で望むようにデザインできる箱庭らしい。観賞用のテラリウムやアクアリウムみたいな感じで、様々なものを配置できるようだ。


 地面も、芝生から湿地、草原、荒野に溶岩まで、多種多様な種類が配置できる。周囲にも木々や岩、泉や滝など、好きなようにオブジェクトを置けた。


 これが凄いのは、大きさや高さ、幅を好きに変更できるところだろう。巨大な岩や、極小の滝など、不思議なものを生み出すことも可能だった。


 配置可能オブジェクトの中には、水臨樹や神聖樹などもあり、凝れば相当綺麗な巨大テラリウムが作れそうだった。


 ああ、配置物に制限はないようで、何度出し入れしたり配置移動をしても、ポイント的な物が消費されたりする様子はなかった。


「ふー。いい出来なんじゃないか?」


 途中からメッチャ凝り始めちゃって、時間を忘れてデザインしちゃったぜ。


 中央には、我が畑のシンボルとなりつつある水臨樹がドーンと生え、その周辺には色々な果樹や花を配置した。そして、その根元には綺麗な泉で爽やかさを演出している。


 地面に長さが不規則でやや自然感がある芝生・Dに、飛び石や木柵を設置してちょっとカントリー感も意識してみた。


 さらに、泉の畔には赤い屋根の小屋を置けたので、まるで小人の住処のような可愛さもあるだろう。


 というか、実際にNPCがテラリウム内を駆け回っている。AI非搭載でランダムに遊び回るだけなのだが、小さなNPCを5体まで配置可能だったのだ。


 テイムモンス以外にも、今まで出会ったモンスターなども選ぶことができた。普通ではテイムできない大型のボスなども選択可能だったのには驚いたね。


 俺は可愛い方面へと振ったが、怪獣ジオラマ的な造りにもできるんだろう。


 今回はノーム、灰色リス、ハニーベア、樹精、フェアリーを選択しておいた。従魔にいる種族を選んだ場合は、自分のモンスと同じ顔にもできるらしいので、当然オルトたちをモデルに設定したのである。


 また、季節は春、時間は昼にして、全体的に明るく、花がたくさん咲いている状態だ。


 タイトルをつけるなら、モンスたちの秘密基地かな? というか、作製終了を選んだら、名前を付ける欄が出てきたな。


 俺はそこに、今考えたばかりのタイトルを入力する。さらに、なんか色々な項目が出てきたな。


 鑑賞に評価に保存に――なんか項目がズラズラと並んでいるんだが……。とりあえず、全部デフォルト設定でいいかな?


 さすがに時間をかけ過ぎたし、一度外に出たいのだ。


「ふー。これでいいのか?」


 ただ、ここで1つ疑問が。これ、この後どうなるんだ? ただテラリウムを作って、観賞して終わりか? まあ、メッチャ楽しいからそれでも全然かまわんけど。


 ただ、その疑問はすぐに解消された。


 ピッポーン。


《プレイヤーによって神の箱庭が解放されました。ゲーム内のシステムウィンドウ、もしくは公式ホームページから鑑賞することが可能です》

「え?」


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― 新着の感想 ―
[良い点] シロガネさん「え?」 全プレイヤー「えっ…??」 運営 「えぇ…」 アリッサ 「うm」
[良い点] デフォルト設定でいいかな? アッ(察し)
[一言] デフォルトの意味を無難と捉えてる白銀さん…
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