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731話 大地母神の息吹


 大地母神様の試練を達成したことで、俺は職人術という奥義を教えてもらえることになったのだが、これがなかなか悩ましかった。


 採取、料理、農耕、全部俺にとっては重要な項目なのだ。だが、うちで一番重要なのはとなると――。


「やっぱ、農業かなぁ」


 畑は今以上に広げていきたいし、水臨樹のこともある。今以上にちゃんと育てるには、奥義があってもいいだろう。


「ムー!」

「トリ!」


 農業コンビは喜んでいるな。というか、リックやメルムも万歳してるので、奥義の取得自体を祝福してくれてる感じ?


「それじゃあ、大地母神の息吹でお願いします!」

『わかりました』


 女神様の声が聞こえた直後、俺の全身と女神像が光り輝く。自分が光ってても、やっぱ眩しいな!


『その力を使い、貴方が何を成すのか。楽しみにしていますよ』

「は、はい!」


 それを最後に女神像の光は消え、触れても反応しなくなった。


「これで、奥義が身に付いたのか?」

「ム?」

「ちょっと確認するから、まってくれなー」

「ムー!」


 脚に抱き着いてくるオルトの頭を撫でつつ、ステータスを確認する。すると奥義という項目が追加され、そこに『職人術・大地母神の息吹』と表示されていた。


 確認すると、ここでは使用できないとなっている。まあ、畑用の奥義だしな。


 しかも、さらに重要なことに気付いてしまった。


「え? まじ? いつの間にか流派クエストを達成してるんだけど!」


 いつだ? いつ達成した? 正直、狙って達成するのは面倒なので、頭の中からすっぽりと抜け落ちていたのだ。


 一昨日は未達成だったと思うんだが……。


「と、とりあえず畑に戻ろうか」

「ムム!」

「トリ!」

「分かったから! 急ぐから引っ張るなって!」

「ムッムー!」

「トーリリー!」


 俺が大地母神の息吹を覚えたことがよほど嬉しいのかオルトたちが俺をグイグイと引っ張る。というか、担がれた! そんなワッショイワッショイするほど嬉しかったの?


 よ、酔う! 上下にグワングワンされたら、酔っちゃうから!


 モンスたちの勢いのままに、洞窟を駆け抜ける。すると村長に呼び止められた。


「無事、お力を授けていただいたようじゃね?」

「調理場を貸していただき、ありがとうございました」

「お主ならいつでも大歓迎じゃ。またきなさい」

「はい!」


 なんて話をしている間にも、オルトたちがグイグイと引っ張る。やめなさい! 村長さんに失礼でしょうが!


 それだけ、奥義を使いたいってことなのか? これは、やっぱりサジータのところに先に寄りたいなんて言えんな。


 さっさと畑に戻ろう。


 俺は村長に挨拶すると、ボガートと動物たちを蹴散らしながら出口を目指す。牧場のさらに奥や、洞窟とは反対側の探検をしたいんだけど、それも明日以降になりそうだった。


「ムーム! ムーム!」

「トーリ! トーリ!」

「いや、もういいだろ! さすがに恥ずかしいから!」


 大地母神の試練から脱出し、水臨大樹の渦の前に戻ってきたんだが……。オルトたちのテンションが全然下がらない。


 左右から俺を持ち上げて、神輿のようにワッショイワッショイだ。俺がウスノロで畑に戻るのが遅いから、強制移動させようってことなのか?


 それ自体は別にいいんだけど、他のプレイヤーさんたちにめっちゃ見られてるんだよな~。これはちょっと恥ずかしいのだ。


 だが、オルトたちは少しでも早く畑に戻りたいのか、俺を担ぎ続けた。いつの間にか仰向け状態で、オルトが肩甲骨あたり、オレアが膝裏辺りを頭上高々と持ち上げて、完全に大荷物の担ぎ上げられ方である。


 まあ、移動速度はメッチャ速いけどさ。結局、その状態で畑まで運ばれてしまった。


「ムー!」

「トリー!」

「――♪」


 畑の番人たちが俺を囲み、ワクワク待機中だ。完全に「まだかなまだかな?」的な顔で、俺を見つめている。


 ちょっと休ませてくれる気はなさそうだった。仕方ない。


「それじゃあ、奥義を使うか! えーっと、職人術・大地母神の息吹、発動!」


 そう叫んだ瞬間、俺の全身がペカーッと輝いた。強い光が収まると、俺の体を緑の光が包んだ状態になっている。


 効果は10分。光っている最中は農耕などのスキルにボーナスがあり、畑仕事が何でも得意になっているようだ。しかも、変異やレア度がアップする効果もある。


「よし! 色々試そう! まずは株分けだ! オルト! 何か作物を!」

「ムム!」


 オルトが手渡してくれたのは、中薬草だった。解ってるね! 検証には、こういう汎用性の高い普通の植物の方が向いているからね!


 その後、水やりや種蒔きなどを一通り試し終えた俺を、オルトたちが畑の一角へと引っ張っていく。そこは、水臨樹の前であった。


「――♪」


 サクラが、そっと如雨露を手渡してくる。これで水を撒けってことらしい。俺は言われるがままに、水臨樹の世話を行った。


 モンスたちにここまでさせるってことは、何らかのいい影響があるんだろう。その後、神聖樹などの特殊な樹木などを同様にお世話し、効果時間が終了する。


「いやー、忙しかったけど、この後の変化が楽しみだな!」

「ム!」


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― 新着の感想 ―
ああ、如雨露ってじょうろ⋯今読めました⋯ 自分の国語力のなさが⋯
[良い点] うみゃーさん逃げて!超逃げて!
[一言] 農作物の出来とかも気になるけど、水臨樹に何が起こるかが大変気になりますな。
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