714話 釣れる?
カラクリゴーレムの倒し方も分かり、俺たちは下水道をさらに進んでいった。
今は、セーフティゾーンで一息ついているところだ。
「ドロップ品は、ガラクタみたいなもんが多いな」
錆びたネジや欠けたボルトは相変わらずで、他には曲がったパイプとか、割れた小歯車など、カラクリゴーレムの部品っぽい素材が大量だった。
これ、上手く組み合わせたらカラクリが作れるのか? それとも、コアとなるようなパーツが必要?
宝箱から手に入れたクロスボウが修理できないかと思ったが、それも無理だった。鍛冶スキルだけじゃ、クロスボウを弄ることができないらしい。
「ペン?」
「うん? どうしたペルカ?」
「ペペーン!」
ペルカが急に走り出したかと思うと、水路の側で急停止した。そのまま、緑色の水面を見つめ始める。
何を見ているのかと思って近づくと、そこには釣りポイントがあった。
こんな下水の毒水路で釣りなんかできると思っていなかったから、全く気付かなかったぜ。
「もしかして、道中にも釣りポイントがあったか?」
「ペペン」
俺の質問に、ペルカが首を横に振る。どうやら、釣りが可能なのはここだけらしい。にしても、こんな場所で何が釣れる?
「まあ、釣ってみりゃわかるか」
「ペーン!」
水路脇に腰を下ろして、刺激臭がする水路に釣り糸を垂らす。ドブ川とか言うレベルじゃなくて、ヤバい薬品が垂れ流しにされている感じの場所だ。
生き物が釣れたとしても、食えそうもないんだが……。毒系のクリーチャーしか棲めないだろ。
そのままジッと待つ。すると、釣り糸がクンクンと引かれる感覚があった。
「きたー! どりゃぁぁ!」
「ペーン! ペン……?」
「……随分と古典的な」
釣りあげられたのは、破れたヤカンだった。以前も木の枝とか釣れたことはあるけど、1発目からこれか……。
「もうちょっと釣ってみるか」
「ペン」
それから15分ほど釣りを続けてみたが、上がるのは錆びたネジなどガラクタばかりだった。
「……次がラストな?」
「ペン……」
そう言って最後の釣りを開始したが、中々アタリがこない。3分くらいで焦れ始め、5分を過ぎて不安になり始めた。これだけ釣れないことは珍しいのだ。
それでも耐えてさらに待つが、やはり反応はなかった。
もしかして、釣れる数に限界があって、もう全部引き切ってしまったのだろうか?
とりあえず10分までは待ってみようと、もう飽きて欠伸までし始めたペルカと釣り糸を見つめる。他の子たちはお昼寝したり、追いかけっこをしたりしているね。
「ペルカ、お前が最初に――きた!」
「ペン?」
「どーせガラクタだろって顔すんな!」
「ペーン」
勢いよく、釣り糸を引き上げる。その先には、金属の何かがくっついていた。
「……ガラクタだな」
「ペペン」
「慰めんな!」
ペルカが俺の足をペンペンと叩いてくれる。
「いや、待てよ」
ガラクタはガラクタだが、初見のアイテムだぞ? なんか、サッカーボールみたいな形状だけど、中は空洞だ。
「古びた魔石回路?」
もしかして、魔道具の重要部品だろうか? 使い方は分からんが、レア度は7と高いし、ここまでドロップもしていない。
「ペルカ、これは結構いいものかもしれんぞ」
「ペン?」
「帰ったら、少し研究してみよう」
もっと釣りをすればレアなパーツが手に入るのかもしれないが、俺もモンスたちも飽きてきた。魔力も少し回復したし、今はここまでにしておこう。
本当に必要になれば、またこられるしな。
「みんなー、出発するぞー」
「ニュー!」
「トリー!」
頭の上にメルムを乗せたオレアが、小躍りしながら近づいてくる。十分なリフレッシュになったらしい。
セーフティゾーンから出発すること、1分。次の部屋に踏み込んだ瞬間だった。妙に天井が高い部屋だなーとか暢気に考えていたら、クママの背後に鉄の扉が降りてきた。
ガシャコン!
超高速で通路を塞いだ鉄の門扉は、慌ててクママが押してもビクともしない。
「え? 閉じ込められた?」
「クマ!」
もしかして、セーフティゾーンはボス部屋前の休息地点てことだった?
「ゴゴオオオォォォォ!」
デッカイゴーレムきたぁぁ!
カラクリゴーレムに似ているが、その身長は倍の4メートル近くある。しかも、全体のパーツは太く大きいし、手が4本あった。
蒸気を噴き出すパイプが背中だけではなく、腕や足にもついていて、明らかに強そうだ。手に持っている鉄の棒の内部にも歯車やパイプなどの機構が見えており、ただの金属の棒でないことは間違いない。
「カ、カラクリゴーレム戦と同じ戦い方で行くぞ! ペルカ! 頼む!」
「ペペン!」
「みんな! きばっていくぞ!」
「クマー!」
「モグモー!」
あああぁぁ! まだ全然心の準備できてないんだけどぉぉ!




