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71話 シノビ


 色々あったが、蟻酸を入手して戻ってきた俺は、早速納品しに行くことにした。


 獣魔ギルドでクエストを報告する。


「おめでとうございます。ギルドランクが6になりました」

「お、もう上がったのか」


レアドロップの納品は貢献度がかなり高いみたいだな。バーバラさんに示唆されたランク7まであと1ランクだ。また常設クエストを繰り返そうかね。


「とは言え、もう夜か」


 獣魔ギルドを出ると、完全に日が落ちていた。でも、常設クエストは明日も簡単にテイムできるモンスターか分からないんだよな。


 だとすると、今日の内にできるだけ常設クエストをこなしておきたい。夜はモンスターが強い上に多くなって危険だが、その分テイムの機会も増えるということだ。


「みんな、夜の狩りとしゃれこもうぜ!」

「ムー!」

「――♪」

「キュー!」

「クマッ!」


 俺が右手を突き上げると、うちの子達も同じように右手を突き上げてくれる。みんなまだまだやる気マンマンだな。日付が変わるまで夜狩りと行くか。



 俺たちはそのまま西の森の入り口に向かい、リス狩りを続けた。


 戦闘での被ダメージがかなり増えたが、テイムのペースも上がっている。計算通りだ。あと1時間ほどで日付が変わるが、既に2回も常設クエストをこなせている。


「あと1回行けるかな?」


 そろそろMPが減ってきた。理想は常設クエストをあと1回こなし、もう一度受けておくことなんだよな。そうすれば、クエストを達成するのは明日でも構わないのだ。


「キュ!」

「お、モンスターを見つけたかリック?」


 リックが戻ってきて、俺のローブの裾を一所懸命引っ張っている。


「キュキュ!」


 どうやら違うらしい。リックが小さい頭をブンブン横に振る。一緒に尻尾もフサフサ揺れてとてもプリチー。


 しかし何を訴えてるんだ? とりあえず俺たちはリックの後についていってみた。それにしても結構進むな。採集で思ったよりも俺から離れて動いているらしい。


「キュッキュー!」

「あれは――プレイヤーか。でも、何やってるんだ?」


 リックが案内した先には、1人のプレイヤーがいた。ただ、樹の下に体育座りで蹲り、微動だにしない。体格からして男だろう。大の男が樹の下で体育座りする姿とか、ちょっと不気味だな。


 何をやっているんだ? よく見るとHPがレッドゾーンである。どうやら瀕死らしい。


「キュ!」


 リックが立ち止まった俺の肩に飛び乗り、プレイヤーを指差していた。どうやらリックはあのプレイヤーを発見したことを俺に教えてくれていたようだ。


「おーい、大丈夫か?」

「む、某でしょうか?」

「え? あ、そう、某」


 そ、それがし? そういえば全身黒ずくめだし、顔もマスクで隠して、これが忍者プレイって奴なのか? す、すごいな、ここまでロールプレイに拘っているプレイヤー、初めてかもしれない。ドワーフのルインはロールプレイっていうよりも、あれが素な気がするし。


「キュ!」

「おお、リス殿! 本当に助けを呼んできてくださったのですな!」

「キュイキュイ!」

「有り難い」


 リックが忍者に褒められてスゲーふんぞり返っている。


「という事は、やっぱりピンチなのか?」

「某、ここまでで回復アイテムを使い果たしてしまいましてな。敵から隠蔽スキルで隠れている最中にリス殿に出会ったのです」


 マーカーの色で従魔だという事は分かったので、ダメもとで助けを呼んできてほしいとお願いしたんだとか。


 友人に救助要請を送ったらしいのだが、その人物が来るまでにあと1時間はかかるらしい。その間、体育座りをし続けるのはきつかったから、ぜひ助けてほしいという事だった。


「隠蔽って、体育座りをしなきゃ発動しないのか?」

「いえ、微動だにしなければ構わないのですが、某はこの体勢が最も動かずにいられるというだけでござる。座禅を組む者や胡坐をかくものが多いですな」


 隠蔽って地味に辛そうなスキルだな。だが、動かない限り、最初の発動で使ったMP消費だけで延々発動し続けるらしい。僅かでも動いたら解けるシビアさらしいが。


「えーと、とりあえずテイマーのユートだ。これ、とりあえず飲んどけ」


 せっかくリックが俺を呼んできたわけだし、ここはリックに免じて助けてやろう。


「おお、忝い! 某は忍びのムラカゲと申す」

「シノビなんて職業あったか?」

「……現在、肩書はシーフとなっておりますが、いつかシノビとなるのでござる!」


 おおう。ロールプレイ命プレイヤーは熱量が違うな。ただ、正直嫌いじゃない。ゲームを全力で楽しんでる感があって、羨ましいくらいだ。


「対価はいか程で?」

「たしか店売りが1000Gだったかな。それでいいぞ」

「では、こちらをお受け取り下され」

「500G多いんだけど」

「いえ、このような場所でお譲り頂く場合、色を付けるのが礼儀かと。命の対価としてはやすい物です。お納めくだされ」


 まあいいか。ここで問答しても時間をくいそうだし。貰っとこう。


「しかし、夜の森に1人で入ってるのか?」

「ええ、実はとあるクエストをこなすために、仕方なく」

「クエスト?」

「盗賊ギルドのランクアップクエストです。ギルドランクを5に上げるために、光胡桃をソロで3つ集めなくてはならぬのです。しかも一晩で」


 そういえば前に聞いたことがあったな。ということは、ムラカゲはまだランク4なのか? 結構強そうなのに。


 そう思ったら、刀を入手するために戦士ギルドのランクを先に上げていたんだとか。そして、改めて盗賊ギルドのランクを上げているらしい。


「ですが、これが中々難しく、難儀しておるのです」


 光胡桃はかなりレアな採取物だし、それを一晩で3つはかなり難しい。しかも、ソロでだ。実際、獣魔ギルドなどのランクアップクエストに比べたら、難易度が高いと思うんだよな。


「いえ、昼間の内に胡桃の木の位置を確認しておき、その場所を効率的に回れば、不可能ではないのです」


 下準備が必要ってことなのか。


「じゃあ、シノビのムラカゲは、どうして死にかけていたんだ?」

「話せば長くなるのですが――」

「ああ、だったら別に――」

「運悪くプレデターに遭遇してしまい、死にかけていたのです!」


 こいつ、シノビって言う割にはお喋りだよな。もっとこう、寡黙で忍ぶものじゃないのか?


「まあ、いいや。町までは戻れるか?」

「は! この度は真に助かりました。この御恩はいつか必ず返させていただきます故!」

「まあ、その内な」

「では、某はこれにて」


 何かすっごく疲れた。時間も微妙だし、今日中にあと3匹は無理だろう。とりあえず畑にもどろうかな。




今週は体調不良により執筆がほとんど進んでいません。

次回更新は4日後とさせていただきます。申し訳ありません。

また、感想等のチェックもほぼできていません。

体調が治り次第、確認させていただきます。

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