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702話 樹精をテイムせよ!


 水臨大樹の試練に突入すると、最初の部屋に出現したモンスターが前回とは違っていた。


 茶色の髪の毛の、パッと見はプレイヤーっぽくも見える少女である。その服装はサクラの初期装備に似ていて、非常に可愛らしい。


 鑑定結果は、その少女が樹精であると示していた。


「し、しし、白銀さん! あ、あれぇぇ!」

「だから落ち着けって。ほら、深呼吸してー」

「すーはー……すーはー……お、落ち着きました」


 とりあえず、あの樹精をどうするかだが――


「テイム! テイムさせてください! お願いしまっす!」

「だからジャンピング土下座すんなって!」


 メチャクチャ高いジャンピング土下座を決めやがった。膝にダメージ入ってないか? そう心配してしまうくらいの高いジャンプからの、綺麗な土下座だった。


「わかったから! テイムしていいから!」

「あざーっす!」


 リスから樹精になってはしまったが、速攻で削ってテイムすることに違いはない。俺たちは陣形を組むと、一気に部屋へとなだれ込んだ。


「――!」

「か、可愛いですね!」

「言ってる場合か! 攻撃しろ!」

「は、はい!」


 カルロたちも攻撃を開始するが、事前に用意してきた戦い方は難しくなったな。


 俺なんて、主力が水魔術と樹魔術だ。どちらも樹精に対しては効果が半減してしまうのである。状態異常に対して高い耐性もあり、カルロの従魔の麻痺攻撃も効かない。


 樹精のHPを半減させるのに、かなり苦戦させられた。この段階でポーション使う羽目になるとは思わなかったぜ。


 この樹精は鞭でも鎌でもなく、ダーツのような投擲武器を投げてくるタイプだった。どうやら、刃のように鋭い葉っぱを、無数に生み出せるらしい。


 できればヘイトを溜めたくないんだが、最後にギリギリまでHPを削るためには、最後は俺が攻撃しないといけない。


 他の奴らが運悪くクリティカルでも出したら、倒してしまうかもしれないからな。


「これ以上は事故が起こるかもしれん! 後は俺がやる!」

「頼みます!」


 そこからはさらに苦戦させられた。手加減スキルを使って魔術を放つが、少ししか削れないのである。しかも、ヘイトが溜まるからめっちゃ狙われるし。


「――!」

「くっそ! 樹魔術か!」

「白銀さん! 逃げて!」

「無理ー!」


 樹魔術によって生み出された根っこが足に絡みつき、俺の動きが封じられていた。そこに葉っぱダーツがビシバシと襲い掛かってくる。


 サクラが盾で防いでくれているんだが山なりでも飛ばせるダーツは完全に防ぐことは難しかった。しかも、さらに樹魔術が襲い掛かってくる。


 周辺に黄色い花が咲き、そこから花粉が撒き散らされた。これは、範囲内の敵を確率で麻痺させる樹魔術である。


「くっ……」

「白銀さん!」


 ヤバイ! 麻痺った! 死ぬ!


 だが、樹精が俺に向かってさらなる攻撃を仕掛けようとした直後、その姿がポリゴンと化して砕け散っていた。


「た、助かった……」

「大丈夫ですか?」

「ああ。間一髪だったな」

「うう……」


 え? カルロ泣いてんの? そ、そこまで樹精が欲しかったとは……。


「つ、付き合うから! 樹精テイムできるまで!」

「ほ、ほんとうですか?」

「おう! 任せておけ!」


 次に樹精が出現した時には、さらに気を付けて削ろう。あと、相手のHPを削り切る前に、どんどんテイムを試してもらえばいい。


 アイテムガンガン使って、消耗とか気にせずにテイムを狙うのだ。


「それじゃあ、先へ進もうぜ。樹精を目指してレッツゴーだ!」

「はい!」


 なーんて勢い込んで歩を進めたんだが――。


「全然出ないな……」

「ですね……」


 樹精は疎か、樹霊リスも出現しなかったのである。出るのは、オリーブトレントや、樹海リスなどの通常マップで確認されているエネミーばかりだ。


 もう1時間で10戦はしているだろう。


「樹精も樹霊リスも、レアモンスターだったんだなぁ」

「それが2連続で最初の部屋に出るとか……さすが白銀さん」


 そもそも、最初の部屋だけにしか登場しないとかだったら、2度と出現しない可能性もあるんだが……。


 試練自体の攻略は順調で、周囲の構造があきらかに変化していた。今までは小部屋を通路が繋ぐような形状だったのが、通路が入り組んだ迷路のような形状に変わっている。


 第2エリアに突入したってことだろう。


 すると、カルロが急に立ち止まった。


「どうした――」

「しっ! 静かに!」


 カルロが小声で怒鳴るという器用なことをしながら、通路からそっと顔を出す。ファウやリリスも、真似しているな。この光景覚えがあるぞ。


 俺もカルロたちの後ろから必死に首を伸ばして、向こうを覗き込んだ。


「樹精か!」

「はい!」


 通路の先に居たのは、つい先ほど俺を殺しかけた茶髪美少女であった。顔立ちもほとんど同じである。間違いなく、樹精だろう。


「今度こそ、テイムするぞ」

「頑張ります!」


 次も失敗したらカルロのメンタルが心配だからな! 絶対にテイムしてやるぜ!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] カルロは公開しないから撮影させてください。って言っていたけど、独占とか、秘匿とか言われても大丈夫?(水臨樹の方を向きながら) 早耳猫としては、自分達の都合で付いていって、撮影させても…
[一言] カルロのMP無くなるまでテイム試すも失敗して、白銀さんが試したらゲットできたとかなったら可愛そうだけど笑ってしまうな
[良い点] 今から掲示板回が楽しみでならない! 樹精ちゃん情報で阿鼻叫喚の祭だね! 白銀さんの畑でお祈り&ダンジョンで樹精ちゃんゲット祭だ!
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