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69話 蟻酸を求めて

 サクラの作った木工製品が無人販売所で売れる理由が、畑で採れた雑草を染色に利用しているからだと確認した俺は、獣魔ギルドへやってきていた。今日も常設依頼をこなすためだ。


 朝から色々とあったが、気分を切りかえてサクサク依頼をこなしちゃおう。


「えーっと、今日は……。あれ? 今日もリスなのか?」


 今日の常設依頼も灰色リス3匹の納入だった。何で変わらないのかと思ったら、始まりの町周辺に出る6種類からランダムで毎日決められるらしい。なので、同じ種類が2日間続くこともあるのだとか。


 今日は効率重視で、灰色リスの出現率が最も高い西の森に行くつもりだ。今日の目標は最低3回以上、常設依頼をこなすことである。


 そんなこんなで森と獣魔ギルドを往復すること半日。


 常設依頼を4回こなし、様々なレベルも大幅に上昇していた。


 テイムだけじゃなくて、従魔術や使役のスキルレベルが上昇し、皆の基礎レベルも上がったな。


 途中で牙ネズミのユニーク個体が出現した時にはテイムしようと思ったのだが、結局 MP切れで倒すしかなくなってしまった。MPが少なくなっている時に出くわしてしまったのも運が悪かった。結局、テイムを5回使ったらMPが無くなっちゃったからな。


 惜しい事をしたぜ。牙ネズミのレアドロップである大牙は手に入ったけど、やはりユニーク個体を手に入れたかった。


 いや、最弱魔獣だとしても、ユニーク個体なら面白いスキルを持ってそうだったし。残念だ。


 まあ、ユニーク個体を倒したおかげで1つ依頼を達成できたんだけどね。牙ネズミの大牙を4つ納品するクエストだ。


 実は納品クエストにはレアドロップを納品する依頼もあるのだが、狙って納品するのは無理そうなので最初から諦めていたのだ。だってレアドロップなんてそんなにポンポン出る物じゃないだろうし。


 俺は牙ネズミ、灰色リスとばかり闘っている上、オルトの幸運もあるおかげか、牙ネズミの大牙が納品できる数、偶然揃ってくれたのだ。


「売っても、鍛冶師に持ち込んでも良いんだろうけど……。今は貢献度の方が重要だしな」


 そして、他のレアドロップの数を確認して気づいた。ロックアントのレアドロップ、蟻酸が今3つあるのだ。これは狙い目じゃなかろうか?


 サクラの木工用に渡してもいいんだけど、ここは納品を狙ってみようか。


「今日は常設依頼は4回もこなしたし。蟻酸の入手を最優先にするか」


 という事で、目指すのは地下道だ。あそこはロックアントしか出現しないからね。時間はもう夜だし、地下道にも目立たず入れる。


 早速地下道に向かう。だが、地下道への入り口のある橋の上に、複数のプレイヤーが行き来していた。


 人が消えるのを待つ。


「オルト大丈夫か?」

「ム!」


 橋の右側にいるオルトが誰も来ないことを確認して右手をサッと上げる。オルトは夜目があるから夜の道でも見渡せているんだろう。


「リックはどうだ?」

「キュキュッ!」


 橋の左を任せているリックも、小さい右手をめいっぱい伸ばしている。右手なら大丈夫、左手なら少し待てという合図なのだ。リックは夜目はないけど警戒を持っているからな、こちらも十分信用できる。


「よし、いくぞ。オルト達も戻ってこい」

「ムム」

「キュー」


 扉を開けて階段を下る。モンス達は祭壇に物を捧げることはできないが、代わりに鍵の登録云々は関係ないらしい。問題なく皆で入ることが出来た。


 一応祭壇にも行ってみたが、今日は木の日じゃないから当然精霊様はいない。ただ、初めて来たオルトとクママは興味深げに祭壇を観察しているな。


 おいおい、罰が当たるかもしれないからあまり触るなって。


「おーい、もう地下行くぞ」


 今日のメインは地下道なのだ。俺は皆を引率して地下道へ向かう。


「ここからはモンスターが出るからな。皆頼むぞ」

「ムー!」

「キュー!」

「クマー!」

「――!」


 オルトがやる気マンマンで右手を突き上げると、他の子たちも一斉に同じポーズで手を突き上げる。だからどこでそんなこと覚えてくるんだよ? まあ、可愛いからいいけど。


 うちの子達の可愛さにホッコリしていたら、さっそくモンスターのお出ましだ。


 相変わらずロックアントばかりだな。ただ、レベルも上がってきたおかげか、クママたちの攻撃でもロックアントにダメージを通せるようになってきた。おかげでMP消費もかなり抑えられそうだな。


「クックマー!」

「――!」

「キュー!」


 クママのアッパーカットでひっくり返った蟻を、サクラの鞭が拘束する。そこにリックが飛びかかり追撃を加えていた。あとはみんなでタコ殴りだ。相手が1体だけなら、もうノーダメージで勝てるな。まあ、複数体が相手でも、オルトの護衛のおかげで俺はほとんどノーダメだけどな。


 普段は可愛いオルトが俺を守るときはキリッとした表情をしていて、それがまた可愛いのだ。ギャップ萌えっていうやつ? まったく、次から次へと新たな魅力が発見できるんだから、本当にうちの子達は可愛すぎるな!



 地下道でロックアントを相手取ること30分。


「お、もう蟻酸が出たぞ。ラッキー」


 意外と早く入手できてしまった。今日中に納品できそうだぞ。まだMPは半分残っているし、もうちょっと探索していくか? そんな風に浮かれていた俺たちは想像外の相手に遭遇してしまっていた。


「げ、レッサーゴースト? ここにまで出現するようになったのかよ」


 あの半透明の体は忘れようもない。何せ死にかけた相手だ。


 ここまで遭遇しなかったことからも、出現率は低いのだろうが……。後は帰るだけで本当に良かった。こいつらを相手にしながらロックアント探しとか、本当につらい。


 数が少ないこともあり今回は結構簡単に勝利したが、早く帰ろう。MP切れの状態で遭遇したらマジで危険だ。本当はオルトの幸運をあてにして赤テング茸の白変種を探してみようと思ってたんだがな。仕方ない。


 余裕があるうちに戻ろうと、来た道を引き返し始めたんだが……。


「あれってプレイヤーか?」


 もうすぐで出口というところで、俺以外のプレイヤーたちがレッサーゴーストと戦っていた。


「くそっ! なんで攻撃が全然当たらないんだよ!」

「幽霊だからだろ!」

「あー! 魔術をとっておくんだった!」


 2人組の少年たちが、剣と槍を振り回しながら1匹のレッサーゴーストと激闘を繰り広げている。いや、レッサーゴーストに一方的に攻撃されていた。


 どうやら魔術も覚えておらず、武器も属性武器ではないようだ。装備を見ると一部はまだ初期装備を付けていて、ゲームを始めたばかりの初心者であると推察できた。


「うーん、このままじゃ死に戻りしちゃいそうだし。助けておくか」


 いつもは人に助けられるばかりだし、もしかして初の人助けか?


 えーっと、確かまずは救助申請を送るんだったか? やべ、初めてだからやり方が今一わからん。


「くそー!」

「大丈夫か!」


 は、早くしないと! 少年たちがピンチだ!


昨日の夕方、書きかけの70話を間違えて投稿してしまい焦りました。

直ぐに削除したんですが、混乱させてしまっていたら申し訳ありません。

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