表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
642/873

637話 キャプテン


 第11エリアは、俺の想像以上の場所だった。まずは素材。今までのエリアに比べ、種類がかなり豊富である。


 管理がかなり難しくなりそうだが、生産の幅が広がるだろう。アリッサさんも言っていたが、第10エリアまでは初心者用のエリアで、ここからが中級者というか、本当のゲーム開始ってことであるらしい。エリア解放の速度も、一気に落ちるだろうな。


「品質にばらつきはあるけど、中薬草が大量だ」

「ムム!」

「おお、見たことない草だぞ!」

「ム!」


 オルトが見つけたのは、青い葉っぱの美しい草だった。形状は露草っぽいかな?


 潤い草というらしい。名前の通り、表面がしっとりとしている。明らかに水属性の素材だろう。


「これ、育てられるか?」

「ム!」

「おお! 久々の新作物だな!」

「トリ!」


 さすが新エリア。いきなり大発見だ。これで調子に乗った俺たちは、さらにズンズン遠くへと進んでいった。


 潤い草以外にも、乾き草や中毒消し草など、新作物が幾つも手に入った。もう、ウハウハだね! 笑いが止まらん!


「うはははは! もっと新しい作物を――」

「ムッムー!」

「トリリー!」


 オルトとオレアと一緒になって、高笑いしながら採取をしまくる。


「キュ!」


 だが、俺たちが笑っていられたのはそこまでであった。俺の頭の上にいたリックが緊迫感のある鳴き声を上げると、モンスたちが一斉に身構える。地面に華麗に降り立ったリックは、右手の方向を睨んだ。


「て、敵か?」

「キュー」


 頷いてほしくなかった! しかも、この様子では簡単な相手じゃないんだろう。待つこと数秒。相手が姿を現す。


「げぇぇ! 3匹も!」

「フォゴォォォォ!」


 相手自体は、すでに何度も戦っているハンマーピッグだ。しかし、3匹も同時に出たのは初めてだった。


「オ、オルト! メルム! 頼む!」

「ムムー!」


 オルトが皆を庇うように前に出る。だが、すぐに後衛へと後退させられていた。なんと、ハンマーピッグたちが連携して、連続攻撃を仕掛けてきたのだ。


 1匹目、2匹目の突進でオルトの体勢を崩し、3匹目のヒップアタックでボイーンと吹き飛ばされてしまった。


 ヒップアタックによるダメージは少ないが、タンクが後列に下がってしまうのはかなりマズいだろう。


 偶然、上手いタイミングで攻撃が集中したというわけではなく、明らかに計算された動きであった。


 そもそも、攻撃を仕掛けてくる前に、3匹を青いエフェクトが包んでいたし。ハンマーピッグが3匹集まると、特殊な連携攻撃を使うようになるらしい。


 ただ、連携攻撃後に、相手の動きが少し止まった。3匹全員だ。


「今のうちに攻撃だ! 尻に一発ぶち込んでやれ!」

「トリリー!」

「モグモー!」


 こちらに尻を向けたままの1匹に攻撃を集中させるが、倒しきることはできない。それどころか、3体のハンマーピッグたちが赤いオーラのような物を纏い始める。


 ボスでもないのに、狂化したらしい。しかも、1匹にしか攻撃していないのに、3匹が同時にだ。ズルくね?


「ニュニュー!」

「メルムー!」


 打撃に強いはずのメルムが、1発で瀕死だ!


 その後、何とかメルムやオルトを回復しつつ、ハンマーピッグを1匹倒す。すると、残り2匹を包んでいた赤い光は消え去り、戦闘力が大きく下がっていた。


 3匹集まると、特殊な技や効果を得るようになるらしい。ドロップにも変化がある。今までは鉄槌豚の肉とかだったのが、三連豚の肉に変化しているのだ。


 あれか? 3匹の子ブタ的なことなのだろうか? もしくは、三連星? ともかく、3匹の時は注意が必要そうだった。


 というか、さらに森を進んでいくと、3匹どころか4匹、5匹とヤバい数で群れている。この場合、三連豚+ハンマーピッグという扱いになるらしい。三連豚の崩し後に攻撃を仕掛けられるので、かなり危険だ。


 数度の逃走の末、俺は決断を下していた。


「このまま無理をしても、そのうち全滅するだろう。戻るぞ」

「ム……」


 結局、俺は敵が大量に出現する森の探索はそこそこで切り上げ、街道を歩くことにした。敵が出現しないわけではないが、俺たちでも対処できる数しか出ない。


 そんな中、待ちに待ったレベルアップの瞬間が訪れる。誰のって? 俺のだよ!


 世のトッププレイヤーたちがそろそろ4次職かと騒ぐ中、実はまだ2次職だったんだよね。レベル的にはもう転職可能なのだが、あえて転職をせずにおいたのだ。


 その理由がコマンダーテイマーLv40で習得するスキル、『器用な指』であった。所持しているだけで、戦闘時を除いて配下のテイムモンスターの器用に微ボーナスが付くというスキルである。


 普通ならそれほど欲しいスキルじゃない。器用が上昇すると言っても、本当に少しだけらしいし。だが、生産メインのうちの場合、かなり有用だった。


 アリッサさんから情報を仕入れて以来、ずっと取得を待ちわびていたのだ。


 結果、職業レベル30で転職可能なところ、40まで引っ張ってきたのである。


「よっしゃ! これで転職できる!」


 だが、ここで転職先のリストを眺めている余裕はない。いつモンスターが出現するか分らんし。そのため、俺は少々強行軍で最も近いセーフティエリアへと急いだ。


 焦るあまり、前に出過ぎて死にかけたのはすまんかった。オルトが助けてくれなかったらヤバかったね。でも、それくらい転職がしたかったのである。


 セーフティエリアに駆け込んだ俺は、即座にウィンドウを開いてリストを確認した。


「よしよし、キャプテンテイマーが出てるな」


 コマンダーテイマーの上位職、キャプテンテイマーがリストに表示されている。他の職業は、エレメンタルテイマーやビーストテイマーといった、見たことがある職業ばかりだ。


 やはり、ここはキャプテンであろう。盾を投げて自ら戦いそうな名前だが、相変わらず雑魚であるらしい。本人の成長度は低い代わりに、モンスに頑張ってもらう職業のままであるのだろう。


 だが、俺が弱いのなんか、今更だ。


「よし、転職するぞ!」

「ムムー!」

「ニュー!」

「キャプテンテイマーを選択!」


 当然ながら、外見的な変化はない。だが、目当てのスキルが無事入手できていた。


「編成従魔+2、ゲットだぜ!」

「モグモ!」

「トリ!」


 本人がクソ雑魚なのは変わらないが、さらに連れて歩ける従魔が増えたのだ。


「リリス召喚!」

「デービー!」


 成功だ。目の前に現れたリリスが、槍を突き上げてやる気アピールをしている。これで、俺が連れ歩けるモンスは7体。第11エリアの攻略も少しは捗るだろう。


「よし! もう1度森へ突入だ!」

「デビ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おおー、転職ってそういういいところが有るんだ! おめでとう~^^ [一言] 思わず、「サクラッ…!(片手を伸ばす)」のシーンを思い出して涙ぐんでしまった…^^;w
[一言] あ、昇進したw
[良い点] まだ二次職だったんかワレェ!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ