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64話 さらばリッスー

 常設クエストの捕獲対象であるリスをテイムする為、俺は西の森にやってきていた。


 南の森にも灰色リスは出現するが、あっちは浅い層からでもワイルドドッグやスネークが出現するからね。


 その点、西の森の入り口付近は、牙ネズミと灰色リスばかりで、極まれにワイルドドッグが出現するだけだからな。


 ただ、灰色リスがあまり出現しない。これが噂の物欲センサーってやつなのだろうか。


 ここまで4匹出現したんだが、1匹目は加減を失敗して殺してしまい、2匹目は初撃がクリティカルになってやはり倒してしまった。3、4匹目は手加減攻撃でHPを減らしたのだが、テイムが成功する前に逃走されてしまった。


「やばいな。1匹もテイムできてないのに、もうMPが半減しちまったぞ」


 テイムのレベルは3つ上がったが、そろそろ1匹くらいはテイムしたいところだ。


 ピッポーン。


「お、このアナウンスは――集計データか」


 1/13日の12時ちょうどだからな。


 データの中を確認してみる。


 総プレイヤー数が4万8千人を超えているな。初回出荷分は5万本のはずだから、稼働率96%以上ってことか。


 俺的には僅か数%でも、プレイしていない人間がいることに驚きだけどな。まあ、色々な事情があるんだろう。あとは転売目的で入手しただけのクズ野郎とか、アカBANされたバカ野郎とかもいるし。


 自分に関係するデータとしては、やっぱり称号関係だな。へえ、結構増えたんじゃないか? 称号を1つ獲得している人間が58人もいるぞ。


 2つ以上は相変わらず俺だけだけどね。これで、俺が称号4つ持ちだってバレたな。


 あと植物知識の所持者も少し増えたな。全体で7人となっている。


「あとはテイマー関係はどうだろう」


 最大テイム数が10を超えているプレイヤーが10人以上いる。凄いな。普通に考えたら、使役と従魔術のレベルが20を超えているってことだし。まあ、俺は半分ファーマーみたいなものだから仕方ないけどね。


 俺はとりあえずリスを求めて西の森の入り口をうろつき続けた。本当はもっと奥に行きたいんだけど、効率を考えるとそれが中々難しいのだ。


 俺のテイム枠は残り1つしか空いてないからね。リスをテイムできたら、直ぐに町に戻ってそのリスを売らないと、次のリスをテイムできないのだ。


 3匹のリスをギルドに納品するには、3回往復せねばならない。西の森の奥にまで行ってしまうと、非常に面倒だった。


 そうしてリスを探していると、ようやく現れてくれた。しかも3匹も。


「お、出たな灰色リス! リック、クママは倒せ! サクラは拘束だ!」

「キュ!」

「クマ!」

「――!」


 3匹出現したので、オルトには俺を守ってもらいつつ、残りの3体に1匹ずつ相手をしてもらう。


 しばらく見守っていると、サクラの鞭が灰色リスを見事に拘束した。リスは小さくて速いので失敗することも多いのだが、今回は上手く捕まえたな。


「よーし、サクラは逃がさないように注意しててくれ! 手加減! アクアボール!」

「キュウゥ!」

「ふっふっふ、もう逃がさんぞぉ」

「キ、キキュウ……」

「そんな顔しても無駄だ! テイム!」


 どうしても悪役っぽくなっちゃうな。そもそも、皆でリスちゃんを囲んで縛って、虐めてる構図にしか見えんし。


「テイム! テイム! テイム! おっしゃ、成功だ!」

「キキュウ!」

「キュウ!」


 早速リックとリスがじゃれ合っている。これは間違いなくテイムできているな。


 さて、クママと同じように名前が未定だから名前を付けないといけないんだが……。手放すことが決定しているモンスだからな。


「えーと……じゃあ、リッスーにしとこう」


 リッスーは初期からレベルが4だった。奇しくもリックをテイムした時と同じレベルだ。普通の灰色リスとユニーク個体の能力差がよく分かるな。


名前:リッスー 種族:灰色リス 基礎Lv4

契約者:ユート

HP:15/15 MP:9/9 

腕力3 体力5 敏捷12 

器用5 知力4 精神4

スキル:警戒、採集、跳躍、登攀、頬袋、前歯撃

装備:なし


名前:リック 種族:灰色リス 基礎Lv4

契約者:ユート

HP:18/18 MP:10/10 

腕力4 体力6 敏捷14 

器用6 知力5 精神6

スキル:警戒、採集、剪定、跳躍、登攀、頬袋、前歯撃

装備:なし


 てな感じだ。


 やっぱりユニーク個体は強いんだな。初期ステータスの総計が8も高いし、HPとMPもリックの方が高かった。剪定もリックしか持ってない。


 まあ、とりあえず獣魔ギルドに戻ろう。


「どうも、クエストの報告で」

「はい。灰色リス3匹の捕獲ですね。では、2匹の納入でよろしいですか?」

「2匹?」


 おっと、リックも対象だと思われたのか。


「――いえ、こっちの子だけで」


 悩んでないよ! 貴重なユニーク個体なんだし! 余程の事が無ければバイバイしないよ! いや、まじで。


「そうですか。では、1匹を受け取りました。のこりは2匹です」


 結構あっさりと済んだな。ちょっと気まずくなってうちの子たちをチラッと見てみたが、特に変わった反応もない。一瞬考えてしまったこともリックにばれてないみたいだ。


 リッスーも、去り際にこっちを見上げたり、涙を流すとかいう演出もなかった。


 昔あったモンスターを狩るゲームで、お供のネコを解雇する時に切ない演出が付いていたせいで結局一匹も解雇できなかったことを思い出したぜ。本当にこっちは普通で良かった。正直潤んだ目で見つめるとかされたら「やっぱやめます!」って言っちゃってたかもしれない。


「さて、問題もなさそうだし、2匹目の捕獲に向かいますか」



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