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63話 テイマーとして

 マナポーションの元となる魔力草を植えているオルトを見て、ふと思いついた。


 今日は既にジュースをあげたけど、もう一杯あげられないのか? テイムモンスには1日1回食事をさせないといけないが、2回以上あげてはいけないとは書かれていなかったはずだ。


 何度も。それこそ1時間に1回とか食事をあげたら、ずっと倍速で仕事をし続けてくれるのだろうか?


「あげてみるか。オルト、ほれ」

「ム?」

「おう。飲んでいいぞ」

「ムム!」


 俺がジュースを勧めると、オルトは嬉しそうにゴキュゴキュとジュースを飲み干した。やっぱり何度でも食事を与えられるみたいだな。これは大発見だ。


「クマ」

「キュ」

「お、お前らそんな目で見るなよ。も、勿論忘れてないぞ。ほら、ちゃんとあるから」

「クマー!」

「キュッキュー!」


 あぶねー、完璧に忘れてた。


「ムムム~!」

「ど、どうしたオルト?」


 なんというか、雄叫び? その場で拳を握りこんで声を上げ始めた。しかもその体が僅かに光っている。


 今にも「クリリンの事かー!」って叫び出しそうだな。


「ムムー……ムッ!」

「おわ! 何だ!」


 オルトがいきなり右腕を天に向かってバッと突き出した。一層強い光が、右の手の平から発せられる。そして、光がそのままオルトの手の平に集まっていく。


「ま、まじで何か発射しそうなんだけど!」


 直後、強い閃光がビカリと発せられる。その後、まるで光が結晶化したかのような、美しい宝石がオルトの手に握られていた。


「な、なな、何だったんだいったい?」

「ム」


 驚いて腰を抜かしている俺に、オルトが手に持っていた宝石を手渡してくれた。


「くれるのか?」

「ムー」


名称:従魔の心・オルト

レア度:1 品質:★10

効果:従魔の心が結晶化した物。売却・譲渡不可


 ほう。これは何だ? 聞いたことが無いアイテムなんだが。品質が★10っていうのも凄いし。売却も譲渡も不可能という事は、自分で使うのかね。なんか意味深な名前だよな。


「うーん、レシピを確認してみようかな」


 すると、錬金レシピの中に、従魔の心を使う物を発見した。


「素材は、従魔の心に宝石か……」


 従魔の心は譲渡不可。つまりソーヤ君に渡して、代わりに作ってもらうことが出来ないってことだ。


「宝石なんて持ってたかな?」


 結晶は宝石ではなく、魔石というカテゴリーだった。どこかで買うしかないか? 


「いや、待てよ。確か1つだけ……」


 思い出してインベントリの中を覗いてみた。すると、1つだけ宝石カテゴリーのアイテムを発見する。


名称:ビー玉

レア度:2 品質:★1

効果:素材。観賞用。


 レッサー・ゴーストのドロップである。奴らが落したのは魂粉という使い道の分からない素材と、このビー玉であったのだ。


「よし。宝石と従魔の心が揃ったぞ。これで錬金を――あれ?」


 何故だ? 素材が揃っているのに、作成物の????が白くならないし、オート作成で選択も出来ないぞ。


 初期錬金セットじゃダメなのか? いや、孵卵器の時も設備レベルが足りなかったけど、名前の部分は錬金可能という証である白文字に変化していたはずだ。


 他に何か条件が解放されていないってことだろうか。


 今日はアリッサさんの露店もないしな……。


「他に情報を聞けそうな場所はないかね?」


 ソーヤ君、タゴサック、アカリ、他のテイマー。あとは獣魔ギルドか。とりあえずギルドで話を聞いてみて、進展が無かったらログアウトして掲示板を調べよう。


 ということで、俺は獣魔ギルドへ向かった。今日もバーバラさんがニコニコと受付をしている。


「どうも」

「いらっしゃいませ。本日のご用件は?」

「これを見てもらいたいんですけど」

「まあ、従魔の心ではないですか」


 やはりバーバラさんなら知っているらしい。


「これについて聞きたいんですけど、教えてもらえます?」

「そうですね。では、まずはこちらのクエストをお受けになられては?」


 ピロン。


特殊クエスト

内容:従魔の心をバーバラに見せる

報酬:2000G、宝石をランダムで1つ

期限:なし


「こんなクエストがあったのか。勿論受けます」

「はい。ではクエストを達成されましたので、こちらが報酬です」


 もうすでにバーバラさんに渡してあるからな、即行で達成だ。


『報酬2000Gと、緑翡翠を入手しました』


名称:緑翡翠

レア度:4 品質:★5

効果:素材。観賞用。


 レア度4か、かなり良い物貰っちゃったぞ! これならオルトから貰った従魔の心のレシピに使うに相応しいだろう。


「それで、この従魔の心の使い道なんですけど」

「すいません。詳しくはお教えすることはできません」


 えー、ここまで来てそりゃないよ! まあ、そこそこ重要そうなアイテムだしな~。


「ですが、1つヒントを」

「え、まじですか?」

「獣魔ギルドのランクを7まで上げてみてください」

「……それだけですか?」

「はい」


 うーん。具体的なことは教えてもらえないか。だが、これだけハッキリとランクを上げろと言われたんだし、いっちょ頑張ってみますか。


 ランクを上げるにはクエストをこなさないといけない訳だが……。今すぐこなせる依頼はそう多くない。普通に考えたら、常設クエストをこなすのが一番いいんだろうな。


 常設クエストというのは、貢献度が1しかもらえない代わりに、何回でも受けられるクエストの事だ。勿論、毎回貢献度が貰える。通常のクエストは、一度クリアすると消滅するか、次からは貢献度が貰えなくなるのだ。


 テイマー用の常設クエストは、特定のモンスターをテイムして、ギルドに納品するという物だった。


 掲示板ではテイムモンスを売るこのクエストをやり過ぎたら、何かマイナスがあるのではないか? という疑問が語られていた。


 テイムモンスを蔑ろにする行為になるのでは? 自分のモンス達の好感度が下がらないのか? とか色々な意見があるようだ。


 ただ、俺的には大丈夫なのではないかと思う。そもそも、他のジョブの常設クエストは、どう考えてもマイナスが無い物が多い。特定のアイテムの採集とか、そんな物ばかりだ。そんな中で、テイマーの常設クエストにだけ致命的なマイナス要素など入れたら、ゲームバランスが明らかに変だし。


 また、テイマーの代名詞とも言えるテイムスキル。このスキルのレベルを上げるには当然このスキルを使いまくらなければいけない訳だが、その過程でテイムしたモンスが増えすぎてしまうというテイマーが多く居た。そうなると、いざちゃんとテイムしたいモンスが出現した時に、テイム枠が残っておらず、泣く泣く倒さなくてはならないなどという事態もあり得る。


 言い方は悪いが、必要のない無駄なモンスターをギルドで売却するのは、テイマーの基本スタンスと言えた。売る度に自分のモンスターの好感度が下がっていたら、誰もテイムスキルのレベリングなんかできないだろう。


 まあ、テイム不可能なボスなどにテイムを無駄撃ちするという方法もあるらしいが、普通はそんな真似できないからな。


 テイム枠が一杯の時なら絶対にテイムが失敗するので、MPの続く限りテイムを使い続けられるが、どうも入手できる熟練度が半減してしまうらしい。


「俺も未だにテイムスキルが低レベルなままだし。ここは常設クエストをこなしまくるか」


 貢献度獲得にテイムスキルのレベリング。さらにはモンスを売って資金も稼げる一石三鳥のクエストだからな。


 問題はクエスト自体の報酬が少なめなくらいだろう。


「さて、今日の捕獲対象は……ラッキー! 灰色リスだ!」


 初期は勝つことのできない超強敵であったが、今の俺なら問題ない。


「よし! 今日はリス狩りじゃー!」


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