表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
623/872

622話 鍾乳石

 目の前のサーベラスライオンを狙って、唐辛子爆弾を投げつける。まあ、爆弾とついているが、爆竹だな。


「てい!」


 だが、放物線を描いた爆竹は、予想を大きく外れた軌道で飛んでいく。形が変則的なせいなのか、思ったよりも外れた。


「やっちまった!」


 サーベラスライオンの脇を通り抜けた爆竹が、天井付近で爆発を起こす。


 赤い唐辛子の粉がサーベラスライオンに降りかかるのが見えた。


「こ、これは……!」


 ワンチャンあるんじゃないか? そう思ったが、何も起こらない。元から意味がないのか、罠や状態異常が効かないようになっているからなのか。そう都合よくはいきませんよねぇ!


 ただ、爆竹によって起きた変化は、唐辛子の粉だけではなかった。


 天井から、メキメキという重低音が聞こえてきたのだ。俺たちだけではなく、サーベラスライオンも上を見上げているな。


 そして、大きな鍾乳石の根元にひびが入り、そのまま勢いよく落下した。その真下にいたのは――。


「グオオオォォッォォォ!」

「うわ、痛そっ!」


 メキャッという音とともに、鍾乳石がサーベラスライオンの頭部に直撃していた。漫画チックな星のエフェクトが飛び、僅かにダメージが入る。


 だが、その真価は状態の方にあるだろう。何と、サーベラスライオンが気絶状態になり、周囲にまき散らしていた炎が弱まったのだ。


「チャ、チャンスだ! みんな、やれ!」

「そ、そうでした!」

「いきます!」


 コクテンが慌ててサーベラスライオンに駆け寄るのを見て、フィルマやアカリが後を追う。皆、突然のことに驚きすぎて、一瞬固まってしまったらしい。


「う、うちも行くぞ! 大チャンス過ぎる! ファウ! ここでもうぶっ放しちまえ! 地魂覚醒だ!」

「ヤー!」


 ファウの姿が光に包まれると、大きく成長した姿へと変貌を遂げる。


「ヤヤ! ヤー!」


 まあ、中身は一緒だけどね。ファウが両手を突き出すと、虚空に2つの魔法陣が描き出され、そこから巨大な岩石が打ち出される。


「ガオオォォォ!」

「回避された!」


 サーベラスライオンの気絶が回復するのが、一瞬早かったらしい。右の1発は回避されてしまった。だが、残った左の岩塊はサーベラスライオンの腹に直撃し、その体を大きくノックバックさせていた。


 以前、プレデターはひっくり返すことができていたんだが、こちらはその場でのけぞるだけか! まあ、レイドボスだし仕方ないけど。


 さらに、リキューの爆弾が炸裂して、サーベラスライオンに悲鳴を上げさせる。


「グオオォッ!」

「また鍾乳石が!」


 なんと、先程よりも小ぶりではあるが、再び鍾乳石が落下していた。まあ、当たりはしなかったが。


 他の鍾乳石には影響がないのに、あれだけが落ちたのか? ランダム? それとも、サーベラスライオンの近くにある場合だけ?


 首を捻る俺の横で、違いに気づいたのはソーヤ君である。ふーかも頷いていた。


「どうやら、白い鍾乳石は、衝撃を受けると落ちるみたいです」

「少し前にリキューが爆弾使った時には、白い鍾乳石がなかったってことですか」


 さ、さすがトップ生産職たち! 観察眼が違うね!


 つまり、爆弾とかで鍾乳石を落下させて上手くサーベラスライオンに当てたら、ダメージプラス気絶で、チャンスになるってこと?


 よし! 試してみるか!


「ファウ!この爆竹をあの白い鍾乳石に巻き付けること、できるか? 衝撃に弱いから、慎重にだ」

「ヤー!」


 俺から爆竹を受け取ると、ファウがビシッと敬礼をして、鍾乳石へと飛んでいった。あとは、ボスの誘導だな。


「ペルカ、回り込んで、これをサーベラスライオンに当てられるか? で、こっちに引き寄せてほしいんだが」

「ペペン!」


 これで、最後の香水だ。考えたら、かなり役立ってくれたな。


「ヒムカ! あの鍾乳石の下で、ボスを受け止めたい! お前が頼りだ」

「ヒム!」


 炎熱耐性もあるし、カウンタースキルの逆襲者は、相手の突進を受け止めるには最適なのだ。俺たちが準備をしていると、ふーかとソーヤ君、他のプレイヤーたちが近寄ってくる。


「僕たちも手伝います!」

「あいつ受け止めるのは、私も一緒にやります! 炎耐性あるんで!」

「頼む!」


 俺たちが移動する中、移動を終えたペルカがペンギンハイウェイで飛んだ。


「ペーペペーン!」


 すれ違いざま、サーベラスライオンの顔面に香水瓶をぶつけ、ターゲットを取った状態で俺たちがいる方へと飛んでくる。自分のお尻をペンペン叩く挑発もおまけだ。


 それの効果があったのかどうかは分からないが、サーベラスライオンがペルカを猛然と追いかけ始めていた。


「よーし! よくやったぞ!」

「ペペン!」


 ペルカを受け止めて、褒める。ペルカはヒレをパタパタさせてドヤ顔だ。そこに、ふーかとソーヤ君のツッコミが入る。


「白銀さん! ペンギンさんといちゃつくのはあとにして!」

「きますよ!」

「ヒムー!」


 ヒムカ、そんな呆れた目で見ないで!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お尻ペンペンしてるペルカがかわいい [気になる点] これで出てきたギミックで使われてないのは鍾乳石によるスネアトラップだけかな? もう一度ペルカに引っ張り回らせて、転んだところに最後の集中…
[良い点] 鍾乳石にも落下するしないの違いがあるのは良いところですね。 ランダム性が発生しそうですし。 ペンギンハイウェイは場所移動なので確かにヒット&アウェイにもってこいですね。今回は挑発にのって…
[気になる点] 投稿者: ヒマジーン様 問1 鍾乳石が落ちて頭に当たったっていうが3つ頭があるんだから1つに当たっても他の2つが無傷だから気絶せず体は動かせると思うのだが? 推測 痛みは共有して…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ