604話 シマウマおじさん
獣人村へと戻った俺たちは、再び冒険者ギルドにいた。
「この辺の魚の納品は、確実にあの池で釣れってことだよな」
「この貝とか海老もそうなんじゃないですか? 淡水に生息する種類もいますよね?」
「素潜りでもゲットできそうだよな。ルフレ、ペルカ、頼むぞ?」
「フム!」
「ペペン!」
コクテンと分かれた後、一度ホームに戻ってパーティメンバーを入れ替えている。今はルフレ、ペルカ、オルト、アイネ、ドリモというメンバーだ。
水辺と洞窟内での、採取力重視の面子だな。あとはここに、召喚した河童が加わる予定である。どんな活躍をしてくれるかね?
池でこなせそうな依頼をいくつか選んで、池へと向かう。すると、道中で釣り竿を担ぐ獣人に出会った。
草食獣の耳っぽいことは分かるが、外見では正確な種族が分からない。身に着けている服はゼブラ柄だけど、まさかシマウマの獣人じゃないよな?
そう思いながら鑑定すると、まさかのシマウマの獣人だった。運営よ……。そりゃあ、見た目で分かりやすいのはいいことだけどさぁ。安直すぎんか?
「フムー?」
「おや? ウンディーネだねぇ。君の従魔かな?」
「ああ、すみません。釣り竿に興味があるみたいで。ほら、ルフレ! 人のものを勝手に触っちゃダメだろ!」
「フムー……」
俺たちが声をかける前に、ルフレが男性に突撃してしまっていた。彼が担いでいる釣り竿に、興味を持ったらしい。タタタッと駆け寄ると、男性の釣り竿に手を伸ばそうとしたのだ。
「大丈夫ですよ。自作したものなので、大した竿じゃないですからね」
「ありがとうございます」
「フムー」
俺と一緒にルフレも頭を下げる。いやー、穏やかな相手でよかった。NPCの中には、失礼な態度のプレイヤーに対して、塩対応をしてくるタイプもいるって話だからね。
このシマウマおじさんは優しいタイプだったらしく、わざわざ釣り竿をルフレに渡してくれている。
「どうぞ」
「フムー」
「ペン」
「お、そこが気になるのかい? その握りは、結構作るのに苦労したんだ」
「フム!」
「そうそう。掌にフィットするように、糸を巻いて少し膨らませるのがキモでね」
「ペン?」
「ああ、木製じゃないんだよ」
「フムー!」
「ペペン!」
いつの間にかペルカも輪に加わり、何やら釣り竿談議が始まった。マニア同士、通じるものがあったらしい。
シマウマおじさんの釣り竿は、何の変哲もない普通の竿だ。釣り竿と聞いて誰もが想像する形で、妙な仕掛けや構造はしていない。
だが、俺には分からない様々な工夫が凝らされているようだった。
まあ、釣りスキルを持っているし、俺だってこの手の話には興味があるけどさ。でも、今はアカリも一緒なのだ。あまり無駄に時間をかけていられなかった。
「色々話を聞きたいけど、もう行かないと」
「フムー」
「ペペン……」
「君たちは、池に行くのかい? だったら、行先は一緒だし、歩きながら話そうか。ああ、敬語じゃなくていいよ? なんかむず痒いしね。ははは」
そういや、釣り竿なんて持っているんだし、目的地は同じか。そのまま歩きながら、俺たちは色々な話を聞くことができた。
「じゃあ、その竿の素材は、前は村で購入できたのか?」
「そうだよ。洞窟の奥に出てくる鍾乳蜘蛛の糸を使ってるんだ」
「奥……。あのデカいライオンの先か」
「僕らも困っていてねぇ」
シマウマおじさん――ポリックさんが言うには、あの三つ首のライオンはプレイヤーが現れるちょっと前にあそこに居座り、洞窟を塞いでしまったそうだ。
そのせいであの先にも行けなくなり、様々な素材が手に入らなくなってしまったらしい。
「それに、洞窟の向こうとの交流が途絶えてしまったせいで、最近は食糧事情が少し悪くなっててさ」
「ポリックさん! 洞窟の向こうに、人が住んでるんですか?」
「ああ、大きな町があってね」
アカリの質問に、あっさりと頷くポリックさん。特に隠された話ではなかったらしい。
やはりあのライオンが、第11エリア解放ボスだったか。いやー、俺には荷が重いなぁ。でも、もう参加するって言っちゃったし、できる限りのことはせねば。
「あのライオンの弱点とか分かってないのか?」
「僕たちもあそこを突破できないか色々試したんだけど、無理だったね」
囮を使って引き付けて、通り抜けようとしたり、罠を仕掛けたりもしたらしい。だが、全て失敗したみたいだった。
そもそも、ボス部屋は素通りできないしね。NPCにとっては、ボスの力で結界が生み出され、部屋に閉じ込められるという認識であるそうだ。
それで死ななかったのかと思ったら、レイドボスからも逃げ出すためのアイテムがあるらしい。ただ、貴重品だから旅人には貸せないという。
ストーリー上必要な、NPC専用アイテムなんだろう。
「分かったのは、奴を倒さないと通り抜けは無理ってことと、肉よりも魚が好きってことかなぁ?」
罠に仕掛けた魚への食いつきがよかったんだろう。
「フムムー!」
「ペペーン!」
「あ、こら! 引っ張るなよ!」
「はははは、お話に飽きてしまったみたいだねぇ」
難しい話に飽きたのか、池が見えてテンションが上がったのか。ルフレとペルカが俺の両腕を引っ張って走り始めた。
もう! ポリックさんが優しい人じゃなかったら、怒られてるかもしれないんだからな!
「フムム!」
「ペーン!」
「え? ちょ、この勢いじゃ――」
テンションが上がり過ぎて、ブレーキが壊れたのか? なんと、ルフレたちが俺を引っ張ったまま、池に向かってジャンプしやがった!
「なんか濁ってて、飛び込むのちょっとやなんだけどぉぉぉ!」
「フームムー!」
「ペーペペーン!」
レビューを2つもいただいちゃいました! ありがとうございます。
レビュータイトルも文面もまるで歌詞のようで、思わず笑ってしまいました。
あと、主人公の名前、忘れている人は多そうですね。
作中のプレイヤーたちも忘れてますしwww
掲示板が好きという人、結構多いのですよね。
私も書いていて楽しいんですけど、書くのが結構大変なので頻繁には出せません。
次いつ掲示板回がくるか、楽しみにお待ちください。
 




