表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
601/866

600話 獣人の村の洞窟


 受付の鹿お姉さんの言葉に従い、獣人村の奥へと向かう。


 現れたのは、直径10メートルくらいの小さな池である。この場所は、歩き回った時に確認してあった。


 苔がびっしりと生えているせいか、水は透明度が低くて底が見えない。ただ、そのおかげで生き物がいそうな気配はあった。


 今回は受けなかったが、魚の納品依頼があったので何かがいることは間違いないだろう。落ち着いたら、ここで釣りでもしてみよう。


 ただ、今の目的地は、この先にあるという通路だ。


「えーっと……」

「ユートさん! ありましたよ!」

「おー、これは確かに近づかなきゃわからないな」


 村側から探しても、大きな岩が邪魔で通路が見えなかった。あると知っていて、池を回り込んでみないと中々見つけられないだろう。


「私が先頭でいいですか?」

「ああ。あとはリリス、一緒に先頭を頼むぞ」

「デビ!」


 探知能力の高いアカリと、暗闇でもよく見えるリリスは、洞窟内での行動に適しているいい組み合わせだろう。


 その後ろに俺とキャロとファウ。殿がサクラとクママだ。


「あとは……妖怪召喚、幽鬼!」

「ウウウ~」

「洞窟探索なんだけど、索敵を頼むぞ」

「ウウ!」


 幽鬼は暗闇でも問題なく行動できるし、物や人をすり抜けて移動できる。狭い場所でも、仲間の邪魔にならずに移動できるのだ。前後どちらから攻撃されても、即座に援護に向かえる中衛に適していた。


 使える技能は、絶叫と幽撃だ。絶叫は、叫び声を聞いた敵に状態異常を与える攻撃。幽撃は、すり抜けた時にダメージを与える、ゴーストなどが使う攻撃だ。


「洞窟だから、絶叫は使えないかね? めっちゃ響くかもしれんし。まず最初に試してみるか」

「ウウ?」


 耳元で金切り声を上げられたら、耳がいかれるかもしれん。確か、失聴や難聴という状態異常があったはずだ。


 今までそれに掛かったことはないので、大きな音を聞いたくらいじゃならないかもしれないが、警戒するに越したことはない。


 最初に実験しておく方がいいだろう。


 モンスターの奇襲に警戒しながら洞窟に足を踏み入れるが、そこは特に珍しいものがある場所ではなかった。このゲーム内であればどこにでもある、普通の洞窟だ。


 天井からは無数の鍾乳石が垂れ下がり、足元は湿っている。かなり歩きづらいが、戦闘不可能というほどではなく、横幅は3人が並べるくらいはあった。


 道中には採取、採掘ポイントが点在し、そこで様々なアイテムがゲットできる。まあ、物珍しい素材はないが。ただ、キノコや草類は大荒原で入手できる場所は少ないので、そこはお手軽でいいだろう。


「ヤヤー!」

「お、依頼品のキノコだな」


 俺のインベントリにはもうストックしてあるけど、それで即依頼達成にはしなかった。洞窟の場所を知りたかったし、依頼をこなしたら何か進展があるかもしれんからね。


 ファウが見つけた採取ポイントでキノコを採っていると、アカリが警戒の声を発した。


「モンスターです!」

「ついに出たかっ!」


 アカリの視線の先には、大きな蝙蝠と黒い鼠。そして、黒い闇のようなものをユラユラと立ち上らせた、バスケットボールサイズの球体が転がっていた。


 ブラックバットとダークラットは分かる。あの球体が、闇虫か?


「とりあえず2体倒して、最後の1体に絶叫を試そう」

「分かりました!」


 そうして戦い始めたんだが、洞窟の敵は結構強かった。大荒原よりも、レベルが高いんじゃないか?


「キキー!」

「うわっ! この!」


 ブラックバット、メッチャ速いな! しかも、掠っただけで2割くらい持っていかれたぞ!


「チュチュー!」

「――!」

「デビー!」


 ダークラットもかなり素早く、こちらの攻撃がクリーンヒットしないらしい。サクラの鞭を回避し、リリスの槍は前歯で受け止めている。


 そして、さらに厄介なのが闇虫である。


「うわっ! 壁も走れるのかよ!」

「ギギギギー!」

「ヤー!」

「ファウッ!」


 闇虫はダンゴムシ系のモンスターらしいのだが、高速回転しながら凄まじい速度で転がり、壁や天井も移動可能であった。体当たりはかなりの威力だし、闇魔術まで使ってくる。


 たった3体に、完全に翻弄されていた。


 アカリがいなかったら、結構危険だったかもしれない。


「てやぁぁぁ!」

「クマママー!」

「アクアボール!」


 さすが前線でも戦っているだけあり、危なげなく敵に攻撃を当てている。そうして敵の足を鈍らせてくれれば、俺たちの攻撃も当たるのだ。


「ふぅぅ。なんとか蝙蝠と闇虫は倒せたか」

「残りはダークラットだけですね! あれ、試しますか?」

「そうだな。この先、使えるかどうかは重要だし。幽鬼! 絶叫だ!」


 俺の言葉を聞いた幽鬼が少し嬉しそうにいそいそと前に出ると、口をカパッと開いた。


「アアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 うるさっ! メッチャうるさいんだけど! 俺の状態を確認すると、難聴状態に陥っている。ただ、数秒で解ける程度のものだ。


 耳を押さえていたアカリには、特に問題はおきていないし、聴力への影響はそれほど酷いものではないらしい。


「これなら、使っていけるかな?」

「そうですね。ダークラットにも麻痺が入ってますし」


 絶叫は複数の状態異常それぞれに判定があるので、相手に完全な耐性がなければどれかが入るだろう。格上が多いフィールドでも、使っていけるスキルだった。


「じゃあ、先に進みましょう!」

「そ、そうだな」


 正直、俺たちだけだったら逃げ帰るところだけど、アカリが一緒ならなんとかなるか。せいぜい、足手まといにならんように頑張ろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 嬉しそうにいそいそと前に出る幽鬼にほっこり( ´∀`) [気になる点] 白銀さんが難聴にかかってアカリが無事だったのは、リキューの爆弾で周りはフレンドリーファイアしないけど本人は爆死するの…
[良い点] 嬉しそうにいそいそと出てくるのが何故だか可愛く思える幽鬼さんw [気になる点] ここんとこ醸し出される白銀さんのヒモ感w
[一言] ヤバい! 幽鬼の登場で、 アリッサさんの、「ウニャーー」の存在感が薄れたかもしれない(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ