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60話 一日ぶりの畑と孵卵器

 俺はランクアップクエストの達成のため、獣魔ギルドを訪れていた。


「あら、ユートさん。いらっしゃい」

「ども。クエストの報告に来ました」

 

 リックをバーバラさんに見てもらう。


「クエストの報告ですね。はい、確認しました」

『ランクアップクエストを達成しました。ギルドランクが5に上がりました』


 これでようやく新たな孵卵器が買えるな。長かったぜ。何故かフィールドボスと戦ったりしたからな。


 購入可能な孵卵器のリストを改めて確認すると、以前言われた通り新しい孵卵器が3種類増えていた。


 能力上昇孵卵器が15000G。戦闘技能孵卵器、生産技能孵卵器は20000Gだ。


 能力上昇孵卵器は、初期ステータスがランダムで+8される。モンスターの地力を上げるにはもってこいの孵卵器だ。どんなモンスが生まれてくるか分からない場合は、無難と言えば無難と言えるだろう。


 戦闘技能孵卵器では初期ステータス+3に加えて所持スキルに戦闘系スキルが追加。生産技能孵卵器では初期ステータス+3され、生産スキルがランダムで追加されるのだ。


「うーん、孵卵器を使うのはオルトとサクラの卵だからな」


 人型の可能性が高い。ノームが生まれるのか、樹精が生まれるのか、他のモンスターが生まれるのか。


 ただ、ノームが生まれた場合、戦闘技能孵卵器がどうなるのか分からないんだよね。無事に戦闘技能を獲得して、戦うノームになれるのか? それとも戦闘能力なしの特徴が優先されてステータスアップ効果しか発揮されないのか?


 気にはなるが、さすがにこの卵で実験する勇気はないな。


 大人しく生産技能孵卵器を買っておこう。



 孵卵器を無事購入した俺は、半日ぶりに畑に戻ってきた。さっさと収穫を済ませて明日分の種まきをしないとな。


 だが、畑の前にいたプレイヤーたちに呼び止められてしまった。


「な、なあ! あ、あんたがここの畑の持ち主さん?」

「この無人販売所の責任者の方ですか?」

「ハーブティーの茶葉はいつから再販します?」

「ハーブティーを売ってください!」

「すっごい美味しいんですよね?」


 足を止めたら、凄い勢いで囲まれた。


「え? え?」


 彼らの話を詳しく聞くと、無人販売所で売っていたハーブティーの茶葉が欲しいという事だった。


「いや、買ったら?」

「もうないんです」

「ええ? 売り切れてるのか?」

「そうなんだよ」

「だから補充を! お願いします!」


 俺は慌てて無人販売所を確認してみた。すると、確かに全ての商品が売り切れになっており、売り上げ8700Gを受け取ることができた。


 アシハナが言っていた通りになったな。もしかして、本当に噂が広まってるのか?


 まあ、欲しいって言ってるし、売れるんだったらとりあえず商品の補充をしちゃうか。とはいえ、今は手持ちにそこまで沢山はないし、作らないとな。


「えーと、補充するので、30分くらい待ってもらえます?」

「分かりました!」

「おお、ありがとうございます」

「待ちます!」


 そう言ってプレイヤーたちが無人販売所の前に列を作った。大人しく待ってくれるのは良いんだけど、プレッシャー凄いな。


 まずは早速収穫からだ。オルト達にはハーブから採取するようにお願いする。


 俺は先に納屋の中に孵卵器を設置だな。


「いや、待てよ……。その前に一応錬金のレシピを確認しておくかな? 孵卵器が手元にあるんだし。何かレシピが解放されていてもおかしくはない」


 確か錬金で孵卵器が作れるはずだ。少しでも性能アップできたらラッキー。そう思って錬金のレシピのリストを確認したんだが……。


「これは……どうしよう?」


 確かに孵卵器を使うレシピがあった。しかも4つ。だが、その素材が問題だったのだ。


 それぞれに、生産技能孵卵器+アイアンインゴット。そこに火結晶、水結晶、土結晶、風結晶が必要だった。アリッサさんが、1つ3万Gで買い取ると言っていた、あのアイテムだ。


 3万だぞ? 超大金だ。かなり貴重らしいアイアンインゴットも必要だし、どうしよう。効果も分からないからなー。


 だが、4つもあるし、1つ使ってもいいかな? オルトとサクラの子供がより強化されるんだったら……。


よし、使っちゃおう! オルトとサクラの卵だ。出来るだけのことはしたい。


 ただ、これは時間かかりそうだし、先にハーブティーの茶葉を補充しちゃおう。


 レシピを見ている間に、オルトたちがハーブを採取してくれていたようだ。インベントリにハーブが増えている。


 俺はハーブをせっせと取り出し、乾燥で茶葉にしていった。ある程度作ったら、それぞれを調合していく。


 内容は前と同じで良いかな? いや、待てよ。ワイルドストロベリーはクッキーにも使いたいから、そこは違うハーブで代用しておこう。


 納屋の中で調合を続けて、50個程のハーブティーの茶葉を作った。時間も約束した30分目前だし、とりあえず補充に行くか。


「お待たせ――ええ?」

「あ、白銀さんこんちわーっす」

「え? あれが白銀さんなの?」

「そうだよ。ノーム連れてただろ?」

「そうだったのか!」


 俺の正体が即行でばれたのはもう良い。この展開には慣れた。俺が驚いているのは並んでいる人数だった。


 さっきまで5人だったのに、僅かな間に8人に増えている。もしかして俺が思っている以上に大事なのか? ま、まさかな。あれだ、行列に何となく並んじゃう日本人特有の群集心理だろ? ついつい釣られて並んじゃったんだろ? そう思っておこう。


「えーと、じゃあ補充しますね。お1人5つまでなんで。よろしくおねがいします」

「「はーい」」


 みなさん良いお返事ですね。これはあっという間に売り切れそうだ。


 というか、俺の分のハーブティーが少ししか残ってない! 由々しき事態だ。増産を考えるべきか?


「よし、孵卵器のレシピを試したら、その後は畑を買いに行こう」


 先に錬金だけどね。改めてレシピを見る。孵卵器にアイアンインゴット。そこに結晶なわけだが……。


 どの結晶を使おうか? 普通に考えたら、生まれてくる子供にその属性が付加されたりとか、その属性のスキルを覚えたりっていう事だと思う。


 今足りてないとすると、風と火だな。


「うーん。ここは火結晶にしとこう。風よりはまだ畑仕事に使えそうだ」


 焼き畑農業とか、温室とかね。


 新しい孵卵器になったら、生産技能は覚えられなくなるだろうが……。これだけ良いアイテムを使うんだから、錬金で作った孵卵器の方が上位の孵卵器のはずだ。だったら、そっちに賭けてみるのも良い。


「最高の孵卵器を作ってやるからな。待ってろ!」

「ム?」

「――?」


 という事で、錬金だ。そう思ったんだが……。


『設備のレベルが不足しています』


 なんだと? 簡易錬金セットじゃダメってことか? 新しい錬金セットを買えと? まあ、初心者用の錬金セットだしなー。


 仕方ないか。俺の錬金もそれなりに育ってきたし、次の段階に進めってことだろう。ついでに調合セットや料理セットも新調しちゃおうかな?


「あとでちょっとアリッサさんの所に行ってみるか」


 卵を孵卵器にセットするには、1週間猶予があるし。場合によっては腕のいい錬金術師を紹介してもらえるかもしれんからな。


 畑も買いたいし、早速出かけるか。まずは近い農業ギルドに向かう。


 所持金は約56000G。問題はない。どうせなら5面くらい買っちゃおうかな? だが、俺の野望はあっさりと打ち砕かれることとなる。


「お前さんのギルドランクだと全体で40面。1つの町で最大20面までしか所有できないぜ?」


 なんと、畑は無限に所有できるわけじゃなかった。ランク4の時には、全体で20面。1つの町で最大20面までしか所有できなかったのが、ランク5に上がったことで全体での最大所有数が倍になったらしい。


「次に増えるのはランク10になってからだ」


 ランク10に上がると、最大で60面。1つの町で30面まで所有可能になるようだ。今、畑は18面。結局2つしか買えなかったな。


 雑草用の畑はこれで9面になった。普通の畑を潰してまで雑草を育てたくはない。ポーションや野菜も使い道があるからね。


「うーん、とりあえずこれでやりくりするしかないのか」


 これは、次の町を目指す時が来たってことか? 大きな町同士だと、お金を払えば転移できるらしいし。離れた町で畑を買っても、同時に面倒を見ることは不可能ではない。


「なら、装備をきっちりそろえないとな。錬金セットも新調しなきゃならんし、お店を回ってみよう。まずはアリッサさんのところかな」


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