589話 ポプリ作り
情報を買いに行ったはずなのに。なぜか、所持金が少し増えた。まあ、レシピ以外にもいくつか情報を買ったりもしたから、ほんの少しだけどね。
「そんでもって、残った霊草を何に加工しようかね」
ポプリかポーションか栞だが……。
「まあ、ポーションが無難か」
栞は俺には意味ないし、ポプリはあとで普通の花とかで試せばいいだろう。まずは、一般的なアイテムから試していかないとね。
劣化バフポーションは、霊草、★5以上の水、回復系の素材、中薬草の4種類が必要であるらしい。
「筋力強化の霊草、エリア10で採取してきた水、霊桃、中薬草。これでいいかな」
とりあえず、俺が用意できる素材の中でも一番いい奴を使ってみよう。あとはこれをスキルで混ぜるだけだ。
「調合っと――うーん。やっぱ劣化状態って言うか、品質が低いな」
いい素材を使っても、正式なレシピでなければ劣化状態は免れないらしい。
名称:劣化バフポーション
レア度:5 品質:★2
効果:1時間、筋力上昇・小。同種アイテムと効果は重複しない。クーリングタイム18分。
正直、微妙? 霊草の琥珀が600万。しかも貴重な素材を使ったことを考えると、完全に赤字だろう。
まあ、霊草の量産が成功すれば、いずれもっと効果の高いレシピを探せるだろう。とりあえずこれはインベントリにしまっておくか。
「次は……ポプリでも作ってみるかね」
ポプリの作り方は大雑把に言うと、ドライフラワーにエッセンシャルオイルを垂らして匂いをつけて、それを熟成させた後に袋に入れたものである。
リアルだともっと色々と手順があるようだが、ゲームの中ではかなり簡単に作れるようだ。
「ヤー!」
「フマ♪」
「お。2人も一緒にやるか? じゃあ、まずは花を摘みに行こう」
「ヤヤー!」
「フマ!」
大量に作っているわけじゃないが、今でもチューリップやヒマワリ、コスモスなどの雑草扱いの花も一定数栽培しているのだ。
ようやく日の目を見るな。
「じゃあ、取り尽くさない程度に、満遍なく採取していくぞー」
みんなで少しずつ花を摘んで、籠へと入れていく。10分もかからず、籠がいっぱいになっていた。
「ヤ!」
「おお、ファウ。持ちたいのか? 落とすなよ」
「ヤ」
ファウが自分の体よりも大きな籠を持ち上げて、納屋へと運んでいく。その横を飛ぶのは、白い髪の空飛ぶ幼女だ。しかも、周囲は色とりどりの花が咲く花畑。
「うーん。ファンタジーだねぇ」
「フマ?」
「なんでもない。今行くよ」
ポプリ作りは、納屋でも十分だろう。工房はヒムカとルフレが使ってるはずだしね。
「まずは花を乾燥させて、ドライフラワーを作る。これはファウに任せるぞ」
「ヤヤ!」
「で、アイネは布袋を用意してくれるか? 本当に小さい奴でいいし、効果もなしで構わんから」
「フマ!」
久しぶりにモンスの敬礼を見たな。ファウとアイネはキリッとした顔をしているけど、可愛さしかないね。
「で、俺はエッセンシャルオイルの抽出だな」
やり方は2つあり、1つが錬金のアーツである抽出。もう1つの方法が、粉砕してからの圧搾である。他にも方法はあるのだが、俺が気軽に試すことができるのは、上記の2つくらいだろう。
「とりあえず両方試してみるか」
そうして2つの方法でエッセンシャルオイルを作成してみると、あまり違いはなかった。特殊効果のないアイテムであるが故、差が出にくいんだろう。
これがあればアイテムに匂いを付けられそうだし、ポーションとかに混ぜてみようかな? まあ、今はポプリだな。
何種類かエッセンシャルオイルを作ってみたが、だいたいどの花からも作れたな。どの花からも、一定量のエッセンシャルオイルが抽出可能であった。
あと、リアルだと果物の皮から抽出することも可能らしいが、ゲーム内では皮はゴミになってしまって残らない。そこで、果物をそのまま使ってみたのだが、普通にジュースができてしまったので、今回は諦めておく。
「さて、楽しいのはここからだ。色々な組み合わせを試していくぞ」
「ヤヤ!」
「フマー!」
「まずはどれにしようかな」
俺はとりあえずコスモスのドライフラワーに、ユリのエッセンシャルオイルを垂らしてみた。まあまあの匂いかな?
「ヤ……! ヤー!」
「フマ」
「ヤヤ……」
「フマ♪」
おいおい。ファウが自分が作った匂いを嗅いで、すんごい顔をしているぞ? どうやら、酷い組み合わせを引いてしまったらしい。
逆に、アイネはそこら辺のセンスがあるようだな。風の精霊だから、匂い的な部分も司っているのかね? 嗅がせてもらうと、非常にいい匂いだった。
そうして他にも色々と組み合わせていくが、ここで致命的なことが判明する。
「俺、匂いのセンスがないな。ファウと同じか」
「ヤ!」
「うぉ! お、怒るなって!」
匂いのセンス無し扱いは、妖精のプライドを傷つけたらしい。プンプン顔で俺の前を飛び回っている。
「ヤヤー!」
「す、すまんすまん。だから怒るなって」
「ヤー」
「まあ、とりあえず全部袋に詰めていっちまおう。熟成させたら変化があるかもしれないし」
「フマ!」
あとは、この状態で数日熟成させるのだが、どうなるかね? 楽しみだ。
コミカライズの最新刊が発売されました。また、WEBでは最新話が公開されておりますので、本編ともどもよろしくお願いいたします。