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586話 アイネの染色

 俺たちが肥料と栄養剤の量産を終えた頃、サクラとヒムカの琥珀削りもラストスパートに入っていた。


 かなり慣れてきたのか、非常に思い切りよくノミを入れている。残念ながら削りカスは消えてしまうので、再利用したりはできないんだよね。


「――!」

「ヒム!」


 2人がほぼ同時に、最後の琥珀を削り終える。満足げに、草を握り締めているな。


「薬草と、毒草か」

「――♪」

「ヒムー!」


 サクラもヒムカも、額の汗を拭うポーズをしながら、満足げである。取り出した植物のレア度よりも、上手く取り出せたということが嬉しいらしい。


 テーブルの上には大量の草花が並べられていた。全部で85個も削ったわけだし、そりゃあこうなるだろう。


「普通の草ばかりか」


 薬草、毒草、麻痺草など、始まりの町の周辺で獲れるような植物が85個。つまり、琥珀・植物は全滅ということだった。


 前回、琥珀から霊草と浄化草が出たことが、奇跡だったんだろう。もしくは、店売りの琥珀からは激レア素材が出ない?


 自分で採取してきた奴じゃないとダメだとしたら、そうとう難しそうだ。


「まあ、琥珀・霊草の方からは問題なく取り出せたからいいけどさ」

「ヒム!」

「――♪」


 新しくゲットした霊草は3種類だ。


名称:魔力低下の霊草

レア度:6 品質:★1

効果:素材。


名称:体力強化の霊草

レア度:6 品質:★1

効果:素材。


名称:体力低下の霊草

レア度:6 品質:★1

効果:素材。


 この3つである。他の2つは、筋力強化、体力強化だった。体力強化が2個出たよ。


「さて、新しい霊草はオルトに渡してくるとして……。ダブった霊草はどうしようかな?」


 できれば薬か何かに加工したいが、レシピが分からない。一か八か、水で煮出すか、潰して混ぜてみる?


「なあ、ルフレ、ファウ。これを使ったレシピ、知ってるか?」

「フムー」

「ヤ……」


 うちのモンスたちも、霊草を使ったレシピは知らないらしい。だが、横から手を挙げる子がいた。


「フマ!」

「え? アイネはこれの使い方分かるの?」

「フマー」


 なんと、アイネが霊草をつかったレシピを知っていたらしい。でも、アイネは機織りや裁縫といった被服特化だぞ?


 さっきだって、布の小物入れとかぬいぐるみ作ってたし。


 でも、レシピもなしにポーションにしようとして失敗するより、少しでも結果がでるほうがいいだろう。


「よし、ここはアイネに任せるぞ!」

「フマー!」

「どっちを使う?」

「フマ……フマ!」


 俺が霊草をアイネの前に置くと、少し悩んでから体力強化の霊草を手に取るアイネ。彼女は霊草をそのままファウへと差し出した。


「フマ」

「ヤ?」

「フーマ」

「ヤー」


 何やらやり取りしていたかと思うと、ファウが霊草を受け取った。向かう先は、錬金台だ。どうやら、アイネが何か加工をお願いしたらしい。


 見守っていると、ファウが霊草を粉砕した。細かく砕けた霊草の粉末を見て、アイネは満足げだ。職人風な表情で粉の状態を確認しつつ、砕かれてもキラキラ光る霊草粉末を確認していた。


 そして、粉末を器ごと持ち上げると、設置してあった鍋にぶち込む。


「フマー」

「え? ここに水を入れるのか?」

「フマ!」


 しかも、鍋を火にかけて、コトコトとやりはじめたではないか。一見すると、ポーションを作っているようにしか見えん。


 だが、すぐにそうではないと分かった。アイネがどこかに消えたと思ったら、新たなアイテムを持ってきたのだ。


「布か?」

「フマ!」


名称:霊蚕の小布

レア度:5 品質:★7

効果:素材。


 アイネが持ってきたのは、最近作った中でも最高クラスの布であった。


 蚕は、食べさせる餌で採取できる糸が変化する。薬草などだと普通の糸。微炎草などの属性を持つ餌だと、その属性が反映されるのだ。


 そして、霊蚕の布を作るための霊糸は、精霊樹や霊樹の枝といった特殊な素材を食べさせることで作ることができる。


 一番小さい風呂敷サイズの小布であっても、作るために糸が5~10個くらい必要だったはずだ。使う糸の数で、作成難易度や品質が変化するらしい。


 その、作るまでに結構手間をかけている小布を、アイネはためらうことなく鍋に突っ込んだ。


「フマ!」

「おー? どういうことだ?」

「フマフマフマフマー!」


 アイネはちっちゃい手で布をざぶざぶと洗うように揉み込み、ある程度水に浸ると棒を使ってグルグルと混ぜ始めた。


 そうすること、10分。このゲームの生産にしては、結構時間がかかった方だ。アイネは布を鍋から取り出すと、風で乾かし始める。


 皆で見守っていると、段々と布に変化が表れていた。乾くにつれて薄緑色になり、霊草のような光を放ち始めたのだ。


 どうやら、Lv40で覚えた染色スキルを使ったらしい。霊草の色を霊布に移したってことなんだろう。


「フマー!」


名称:霊蚕の小布 ・染色済み

レア度:5 品質:★4

効果:素材。体力増強効果。


「おー、染色ってただ色を付けるだけじゃなかったのか!」

「フマ!」


 布地に特殊な効果をつけることが可能であるらしい。これで防具を作ったら、体力にボーナスが付くのかね? これはいいものだぞ!


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― 新着の感想 ―
[一言] これ絶対ヤバい情報だな。このゲームの装備仕様がわからないから可能性だけだけど、鎧とかの下に着るインナーとかにも染色による効果をのせられるならめちゃめちゃヤバいよね。服くらい布を使わないと駄目…
[一言] 特殊な草を錬金術で加工したうえで染色液にして布を染める。。。 これ、誰も気づかないだろー
[一言] また斜め上なやらかしを……
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