表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
580/865

579話 河童戦終了

 河童との戦闘が始まり10分ほど。


 互いにダメージは与えず、ただひたすら俺たちが逃げる展開が続いていた。


「グゲゲェェ!」

「ブヒッヒーン!」

「いいぞハイヨー! その調子だ!」


 まあ、俺たちというか、ジークフリードとハイヨーがって感じだけどね。


 河童の攻撃手段は、口と皿から放つ水と、両手の鉤爪。あとは岩を投げるくらいだ。その代わり移動が非常に速く、気を抜くとすぐに接近されそうになる。


 ハイヨーでなくては、今ごろ何発かは攻撃を食らう羽目になっていただろう。


 それに、時々思い出したかのように俺たちにも攻撃をしてくるので、気を抜くことはできなかった。


「グゲッゲェェ!」

「うわ! ばっちぃ!」

「グゲー!」


 大きく開いた河童の口から吐き出される、ちょっと泥っぽい水。見た目がメチャクチャ汚く見えるのだ。


 身を屈めて、何とか回避する。


「キャロ! 逃げてくれ!」

「ヒヒン!」


 キャロは川底を力強く蹴って、ジグザグに逃走する。その脇を1発2発と泥水が飛び去って行った。


「いいぞ、キャロ!」

「ヒヒーン!」


 本当は透明化が使えればいいんだが、3分しか持たないからな。


 それにしても、キャロがいてくれてよかった。俺だけだったら、絶対に被弾しているのだ。


 俺たちへの攻撃を外した河童が、怒った様子で凄まじい勢いで跳躍した。そのままドームを突き抜けると、外へと出て行ってしまう。


 これは、数分に1度行う、溜め攻撃の前兆であった。


 ドーム外で大きく水を吸い込む動作を見せると、今まで以上に大きく口を開く河童。そして、無数の水球を連続で吐き出すのであった。


 ドームの外であるため、こちらから邪魔することもできない。まあ、できたとしても、攻撃はしないけどさ!


 迫りくる水球をなんとか回避していたんだが、やはり難易度が高すぎた。


「このまま――げぇぇ!」

「ヒン?」


 ドボン!


 一発食らってしまった! だって、避けたと思ったら微妙にカーブしてくるからさぁ! 後衛職には無理だって!


「やっちまったぁ!」

「デビー!」

「ペペーン!」


 残念だが、仕方ない。そもそも、リリスやペルカもダメージを受けているしな。やはりあの弾幕を完全回避するだなんて、初見では無理である。


 その攻撃も終わると、ついに河童が今までと違う行動を見せた。


「ゲゲゲゲゲェェェ!」

「赤いオーラ! 情報通りだ! くるぞ! キャロ、あとちょっと頑張ってくれ!」

「ヒヒーン!」


 河童が怒りの形相を浮かべて、その体から赤い光を放つ。この赤い光が、特殊行動の合図なのだ。


 河童が気合を入れるように両腕を眼前でクロスさせると、甲高い雄叫びと共に思い切り振り下ろす。すると、その全身から閃光が放たれていた。


「ターゲットは……ジークフリードとリックと俺か? いやキャロかもしれん! ともかく逃げろ!」

「ヒヒン!」

「キキュー!」


 この攻撃の対象は、ヘイトを稼いでいたパーティメンバーが1~3人ほど選ばれる。今回は3人だった。


 効果は、ホーミング性能を持った赤い球体を飛ばすというものである。


 それほど速くはないんだが、追尾能力が結構高い。ゆらゆらとした軌道で追い続けてくる赤い玉は、まるで墓場に現れる火の玉のようだった。


 しかもこの攻撃の恐ろしいところは、即死攻撃であるということだ。当たったら、確殺されてしまうのである。


 アリッサさんは、尻子玉を抜く的な攻撃なのだろうと推測していたのだ。


 キャロの透明化の能力を使ってみたが、球の追尾は終わらなかった。一度ターゲットにされてしまうと、意味がなかったらしい。


「すごいぞキャロ! その調子だ!」

「ヒヒヒーン!」


 30秒近いホーミングを何とか振り切ると、赤い玉は溶けるように消えていく。


「ふー、なんとか生き残ったか」

「ヒーン」

「キキュー」


 キャロが安堵したように軽く息を吐き、リックは俺の肩で額の汗を拭うポーズをしている。モンスたちも即死攻撃のターゲットにされて、かなり緊張していたんだろう。


「グゴガガガ……」

「よし、赤いオーラが消えた!」


 聞いていた通りだった。


 河童は力を失ったように項垂れ、フィールドの中央で立ち尽くしている。本来なら攻撃のチャンスなんだろうが、俺たちはその姿をジッと見つめ続けた。


 そして、河童の様子に変化が表れる。


 顔から険が取れ、穏やかな表情になったのだ。


 ピッポーン。


『河童との戦闘が終了しました』

「ふいー、終わったか」


 特殊な条件が達成され、戦闘終了のアナウンスが流れる。これこそ、俺が狙っていた終わりであった。


「ユート君、お疲れ様」

「いやいや、そっちの方がお疲れ様だろ。俺たちはチョロチョロと適当に逃げ回ってただけだからな」

「なら、ハイヨーを労ってあげてくれたまえ」

「そうだな。今回のMVPはハイヨーだもんな」

「ブヒン」

「後でニンジンをやるよ」

「ブヒヒーン!」


 ハイヨーを撫でてやると、その愛嬌のある顔を擦りつけてくる。こういう時は、むしろこの顔が可愛いのだ。


「グゲ」

「うぉ!」

「グゲー」


 河童がいつの間にか近づいてきていた。急に横にいたから、驚いちゃったよ。河童は嘴をカパカパと動かしながら、軽く手を挙げている。その態度は非常に友好的に見えた。


「ユート君。ほら、あれを」

「おっと、そうだった! これどうぞ」

「グゲゲー!」


 俺が渡した赤キュウリを天高く掲げ、「獲ったどー!」とでも言っているかのようだ。確実に喜んでくれているだろう。


『河童と友誼が結ばれました。一部のスキルが開放されます』

「よし、上手く行ったぞ」


 図鑑にも、河童が登録された。


「お、僕もスキルが開放されたみたいだね。『魂抜き』と『河童相撲』か。僕はあまり使わないかもね」

「まあ、騎士が即死技と相撲ってのもあれだしなぁ」


 魂抜きは、小ダメージと低確率での即死。河童相撲が、そのまま相撲ベースの格闘スキルである。どちらも、水中でボーナスが付くらしいが、使いどころは難しいだろう。


 ただ、今回の主目的は妖怪と出会うこと自体だし、それは大成功と言えた。河童戦でダメージを与えては、このイベントは発生しないらしい。


 俺たちはダメージを食らってしまったが、与ダメージ被ダメージが完全にゼロだと、特殊報酬がもらえるそうだ。でも、俺には無理そうだよな。


 浜風とか、よく検証したもんだ。さすが、浜風、妖怪の専門家だぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 妖怪との邂逅がユニークで面白いw [一言] 某人魚「水中ボーナスのスキルと聞いて!」 某フォロワー「あ、なんだか誉められてる気がする!」
[一言] 妖怪との縁がまたつながったけれど、カッパでいくつになったかな。 妖怪に浜風ありと言われてることは耳にしてたのね。 自分のことはエゴサしないからか、どういう評判なのか分かってないみたいだけど…
[一言] よっ!さすハマ!妖怪の専門家だ!w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ