574話 ジークフリードと一緒に早耳猫
ジークフリードとムラカゲの馬が強化された直後、俺にも影響がもたらされていた。
許可証から、ジークフリードとムラカゲの名前が消えたのだ。そして、お爺さんから2人に、直接許可証が手渡される。
「お主らにも、これを渡しておこう」
「おお! 忝い! これで、ユート殿と同じように、仲間を連れてこれるのでござろうか?」
「その通りだ」
「それなら、この森に入れるメンバーをさらに増やせるね。まずはコクテン君たちの仲間かな?」
「いいんですかジークフリードさん。私たちとしては非常に助かりますが」
「そういう約束だったし、構わないよ」
「ありがてー!」
大喜びの皆と一緒に屋敷を出たところで、アリッサさんからフレンドメールが届いていたことに気づく。どうやら、今しがたログインしたらしい。俺はコールをしてみることにした。
『はいはーい』
「どうも。メール読みました」
『お! じゃあ、どう? 気になる?』
「そりゃあ気になりますよ。何ですか耳寄りな情報って」
『ふふーん。ユート君、泡沫の紋章持ってたわよね? まだ持ってる?』
「インベントリにしまったままですね」
『ならよかった。あれの使い方で、面白い情報があるんだけど、買わない? 絶対に損はさせないわよ』
「へー、アリッサさんがそこまで言うんだから、期待しちゃうな。ぜひその情報、売ってください。今からでも大丈夫です?」
『勿論!』
「俺も売りたい情報あるんで、ちょうどよかったです。紋章関係の情報がありまして」
『……』
「アリッサさん?」
『……な、なんでもないの。そう、紋章の情報なの……』
「そうです。期待しててください。じゃ、今から行きますね。始まりの町でいいですか?」
『ま、待ってるわ。でも、あ、明日とかでも大丈夫だけど?』
「俺がアリッサさんの情報早く知りたいんで。ちょっパヤでいきますね」
『わ、わかったわ。わ、私は準備があるから、切るわねっ。じゃあ、またあとで!』
ということで、俺はコクテンたちと情報の取り扱いに関して相談することにした。新情報の半分くらいは、みんなとの合同パーティでゲットしたものだからね。
コクテンたちがしばらく秘匿したいというのであれば、紋章を手に入れる方法とかだけ売ることになるだろう。
ただ、コクテンたちは特に隠す気はなかった。むしろ広がれば、騎乗モンスが増えて攻略が進むだろうし、ぜひ売りたいという。
さすが攻略トップパーティ。自分たちの利益よりも、全体の利益を優先するなんて。
結局、俺とジークフリードで情報を売りに行き、あとで情報料を4パーティで分け合うということになったのであった。
アリッサさんには面倒をかけるけど、個別に情報代を算出してもらえばいいだろう。
「じゃあ、いくか」
「そうだね」
俺はジークフリードと連れ立って、早耳猫へと向かった。
「ジークフリードは、早耳猫使ったことあるのか?」
「それなりに利用してるよ。売る方でも買う方でもね」
馬関連や騎乗スキルに関する情報を、よく売り買いしているそうだ。あと、NPCとも親しいため、細かいお遣いクエストの情報を多く持っているらしい。
それを何度も早耳猫に売っているという。
「ただ、今回はいつもよりも凄い情報だからね。アリッサ君も驚いてくれるのではないかな?」
「騎獣をゲットできる特殊フィールドへの入り方に、ボス情報に地図。特殊な騎獣の探し方に、紋章のゲットの情報。それに加えて、紋章を使った進化情報だしなぁ」
「今からアリッサ君がどんな反応を見せてくれるか、楽しみだよ」
なんて話をしていたら、もう早耳猫だ。中に入ると、アリッサさんがカウンターの向こうで仁王立ちしていた。
足を肩幅に開き、腕を組んで微妙に胸を張っている。ガン〇スターの出撃ポーズだ。
「よく来たわね! 待ってたわっ!」
テンション高っ。なんか威嚇されているような気がするけど、気のせいだよな?
「どんな情報であっても、私は逃げない! 受けて立つっ!」
ああ、今日は熱血戦士系ロールプレイってことか。この前の司令風もよかったけど、この感じも嫌いじゃないぞ。ならば、俺も受けて立とうじゃないか!
「ふふふ。今日の情報は、凄いですよ? 腰を抜かさなければいいですがね?」
こっちは嫌味な悪の組織の幹部風のセリフでお返しだ!
「うえぇ? ユ、ユート君がそこまで言うだなんて……! どど、どんな凄い情報が!」
あれ? なんか急に普通に戻っちゃたんだけど。もしかして、ロールプレイでも何でもなく、少しテンション高めだっただけ?
ちょ、そりゃぁないっすよアリッサさん! これじゃあ、俺が間抜けじゃないのよ! やばい、恥ずかし過ぎて何言ったらいいのか分からん!
「……」
「……」
妙な空気が流れて、俺とアリッサさんがお見合いをする。ど、どうしてくれるんだ数秒前の俺!
「ふふふ。2人とも、じゃれ合いはそれくらいでいいかな?」
「はっ! わ、分かったわ」
「お、おう」
ジークフリード、助かったぞ!
「そ、それにしても、あなたたち2人が一緒に情報持ってくるだなんて、どんなとんでもない爆弾なのかしら? 聞く前から震えちゃうわね」
「期待してくれて構わないよ」
「へ、へぇ?」
アリッサさんがクイッと片眉を上げた。俺たちがハードルを上げ過ぎて、本当かどうか疑ってるのかもしれない。
だが、大丈夫だ。今回は本当の本当に自信があるからな!
「さて、まずは宿屋の情報からですかね?」
「へ、平然とまずはって言うわね……。き、聞かせてもらおうじゃない」
今月の28日に「出遅れテイマーのその日暮らし」の書籍版8巻が発売されます。
各所で情報が出ておりますので、よろしくお願いいたします。