567話 許可証発行
「も、もしかして、早耳猫が売り出した?」
「お、もう知ってたか」
「勿論ですよ! 新フィールドですから!」
「え? まじ? あれかよ!」
どうも早耳猫はその存在を周知することで、もっと詳しい情報が集まってくるようにする作戦を取ったらしい。
その目論見通り、ホットな情報として各所で話題になっているそうだ。特に騎乗モンスが欲しいプレイヤーは、その場所を血眼になって探しているらしい。
「こ、これが爆弾ってやつなんですね」
「絶対、俺の本体鳥肌立ってるわー」
思った以上の反応だ。トッププレイヤーたちであっても、騎乗可能モンスが手に入る新フィールドは驚きらしい。
「やっぱり白銀さんでしたか……」
「かもしれないって言われてたけど、まじか」
何故かジト目で見られた。情報を秘匿してたわけじゃないんだよ? このホームにきてから、話す機会がなかっただけなのだ。
「ともかく、一緒にフィールドに転移できるかどうか試そう」
「ぜひ!」
「お願いしまーす!」
コクテンたちとチームを組んで転移陣へと向かったが、彼らと一緒だと転移できなかった。畑に戻ってモンスたちを減らして、パーティでも試したが同じである。
何らかの条件を満たさなければ、見習い騎士の森には立ち入れないらしい。やはり、通行証が必要なんだろう。
「残念です。未知のボスと戦えるかと思ったのですが……」
コクテンたちは残念そうだが、俺はまだ諦めてはいなかった。通行証が必要なら、発行してもらえばいいのだ。
そのことを説明すると、コクテンたちが驚きの表情を浮かべている。
「えええ? チェーンクエストではなく、それ以外で見習い騎士の森に入る方法を発見したってことですか?」
「す、すげー! さすが白銀さん!」
まあ、この情報は、俺でもかなり凄いって分かってるからね。アリッサさんのとこに持ち込んだら、絶対に「うみゃー」確定だろう。
ふふふ、コクテンたちもいい顔で驚いてくれるぜ。
俺はコクテンたちを連れて、第5エリアのお屋敷へと向かった。もう会ってもらえないかとも思ったけど、問題なく屋敷に入れてもらうことができたのだ。
応接間で、老人とシュバールに歓迎されつつ出迎えられる。シュバールを救出してその願いを叶えたことで、好感度が高いんだろう。
非常にいい雰囲気だった。これは、お願いしやすいんじゃないか?
俺は老人に、見習い騎士の森への立ち入り許可証を仲間にももらえないか頼んでみることにした。ダメだったら、許可証のゲット方法を聞いてみようと思っていたんだが――。
「うむ。よいぞ」
「え? いいんですか?」
あっさりとコクテンたちの分を貰うことができていた。
「お主には孫を助けてもらったからのう。お主の仲間ならば、信用していいだろう。際限なく発行はできんが、5人程度までならよかろう」
「あ、ありがとうございます!」
5人分――つまり、パーティメンバー分は発行してもらえるってことなのだろう。精霊様の祭壇へ行く際の鍵と同じだ。
当たり前だが、コクテンたちが誰かを連れてきても、許可証は発行してもらえないらしい。
「あの、貴重な許可証を我々なんかが頂いてしまっていいのでしょうか?」
「そりゃあ、ボスと戦うためにはコクテンたちの力が必要だし、当然だろ」
「いやいや! 俺たちが得し過ぎてるから!」
「そんなことないと思うけど……」
「あるある! お皿までもらえるんですから!」
自分では倒せないボスを、代わりに倒してくれって頼んでいるのだ。こっちでそこまで行く方法を用意するのは当然である。
その後相談した結果、今後ここ以外でもボス戦に挑む場合、コクテンたちが何度か手助けしてくれるということになっていた。いやー、心強い戦力をゲットしてしまったな。
しかし、コクテンたちには不安があるようだ。
「今回のボスの強さがどれくらいなのか知りたいんですよねぇ」
「あー、どれくらいって言われてもなぁ」
分かるのは、俺たちじゃ手も足も出ず、すぐに蹴散らされたということだけだ。事前に準備していけばもう少しどうにかなっただろうが、最終的には死に戻って終わるだろう。
それでも、少しは参考になればと、分かっている情報を全て語った。その結果、コクテンとセキショウだけでは戦力不足だろうということだった。
「うちのメンバーは今日は無理だと思うので、他に当てがあればいいのですが」
「うーん、そうだなぁ」
なんて話をしながら、歩いている最中だった。
「おや、そこにいるのはユート殿ではござらぬか?」
「お、ムラカゲ!」
「お久しぶりでござるな! 部長殿もご一緒で!」
「どうも、ムラカゲさん」
全身黒ずくめの怪しい人物に声をかけられる。だが、不審者などではなく、知人であった。いや、不審者ではあるんだけどさ。
第5エリアで素材集めの最中だったらしい。忍者らしく、毒などの調合を自分でやっているそうだ。
「今日はアヤカゲはどうしたんだ?」
「クランのおなごたちとレベル上げ中でござる。本人曰く、女子会だそうで」
まあ、夫婦仲もクランも上手く行っているのならいいさ。それよりも、戦力1人確保なんじゃないか?
俺はそっとコクテンを見た。すると、彼もにこりと笑いながら、深く頷いている。誘えということなんだろう。
「ムラカゲ、この後暇じゃないか?」
「ふむ? 暇と言われれば暇でござるが……。拙者に何か御用で?」
「実は――」
俺は詳しいことはぼかしつつ、俺だけじゃ勝てないボスと戦うための戦力を求めていると説明した。もし一緒に戦ってくれるなら、未発見のフィールドに連れていくとも。
「拙者でいいのでござるか?」
「ああ、斥候役は欲しいし、ムラカゲならレベルも十分だろ? 個人的にも信用できるしさ」
「そこまで言われては、手を貸さぬわけにはいきませぬな! ご恩をお返しするチャンス! ユート殿からの信頼に、是非応えてみせましょう!」
ということで、メンバー1人ゲットである。コクテンたちとムラカゲか……。濃いけど、頼もしい仲間だな。




