547話 錬金スキル進化
「そろそろ時間だな」
今からアリッサさんたちと合流して、ボス周回ツアーだ。
肥料の量産について考えるのは帰ってきてからだろう。必要素材を畑で育てられればいいんだが、どうにかなるか?
「今ある素材で、作れる肥料は作っちゃおうかな」
量産できるかどうかはともかく、明日以降、使う分を確保しておかねば。
そう思って魔化肥料と魔化栄養剤を作っていたら、終盤に錬金術がカンストにまで到達した。
「おお、錬金もついにレベル50か!」
これで、今まで以上に仕事がはかどるぞ!
生産系のスキルは、カンストすると上級に派生させることができる。俺はボーナスポイントを支払い錬金・上級をゲットした。
「で、問題は派生スキルの方だ」
農耕スキルが育樹や水耕に派生するように、錬金も派生スキルが存在する。カンストした際、その派生スキルの中から1つを選んで習得できるのも、生産スキルの特徴だった。
「即席錬金、錬金具、錬金薬、錬金物、戦闘錬金?」
即席錬金は、道具がなくても錬金が可能になるスキルだった。ただし、質や効果が下がるらしい。
簡単には帰還できない、ダンジョンやフィールドの奥地へと探索に赴く、前線パーティなら重宝するのかもしれない。その場でアイテムを補充できるからね。
フィールドで簡単に錬金できるのは便利だけど、俺にはあまり必要ないかな?
錬金具は道具作成、錬金薬は薬作成、錬金物は素材加工にボーナスが付く派生らしい。中には、これらがないと作れないアイテムも存在するようだった。
農耕で考えると、育樹や水耕と同系統の派生だろう。これは、どれも有用そうで悩む。どれを選んでも、ある程度便利だろうしな。
戦闘錬金は素材を消費し、戦闘中に特殊なアイテムを作れるスキルだ。薬や爆弾など、便利な道具がいくつもあった。ただ、質は低いし、素材、魔力の消費が多く、中々使いどころは難しい。
戦闘メインじゃない俺にとっては、一番いらない派生だろう。
「……よし、錬金薬にしておこう。一番使いそうだし」
派生スキルも重要だが、今はもっと重要なことがある。それは、錬金・上級で覚えた、水作成のスキルだ。
その名の通り水を作り出すだけのスキルなんだが、これがかなり使えるのである。なんと、ほとんどの素材を、水に変えてしまうのだ。元の素材によって、品質やレア度、属性に様々な変化が出るらしい。
これの良いところは、ただ液体化したわけではなく、水に変化するので、水素材として使用できるという点だ。今まであった液化のアーツは、あくまでも固体の形状を液体に変えるだけで、素材の種類までは変化しなかったのである。
「これで肥料と栄養剤作りがはかどるぞ!」
どっちも水が必要だからな。属性を持った水を作れれば、色々と活躍してくれるだろう。
今日の探索で素材もたくさん手に入るだろうし、戻ってきてからの錬金が楽しみだ。
「おっと、まじで時間ギリギリだな」
俺はモンスたちを連れて、北の緑都へと向かった。とりあえず、激レア素材がドロップするまでは、ひたすら北の第9エリアのボスである大嵐獣を狩り続ける予定なのだ。
「今日はキャロの実戦デビューだ。緊張してないか?」
「ヒン?」
大丈夫らしい。つぶらな瞳でこちらを見上げている。その「なーに?」って感じの仕草からは、強力なボスへの恐れなどは一切感じられないのだ。
まあ、AIだからって言っちゃえばそれまでだけど、やっぱ初ボス戦だからな。ちょっと心配になってしまうのである。
因みに、メンバーはルフレ、リック、オレア、ペルカ、リリス、キャロという面子だ。爆弾飽和戦法で戦うから、あまり強さとかは気にしなくていいからね。
ハイウッドやカルロからも、レベル上げを優先していいと言われているし、遠慮なくレベリングをさせてもらおう。
一応、回復役のルフレと、攻撃役のリックは連れてきているけどさ。
「おい、あれ――」
「あんな馬見たこと――」
「さすが――」
予想通り、めっちゃ見られている。騎乗可能モンスターは誰もが注目しているし、珍しい馬を連れていれば絶対に目立つのだ。
「キャロ、人気者だな」
「ヒン?」
「みんなお前を見て、可愛いって言ってるんだよ」
「ヒン!」
俺の腰のあたりにある頭を撫でてやると、キャロが嬉し気に鳴く。それを見たギャラリーが、微かに騒めくのが分かった。
キャロは可愛いから、仕方ないよな。背中にリックとペルカを乗せてるし。可愛いリスとペンギンを乗せた、黒いポニー。もうね、「これが可愛いというものか!」って感じ?
誰だって見ちゃうのだ。
「ふっふっふ。もっと見るがいい。うちの可愛いキャロを!」
「キキュ!」
「ペペン!」
「分かってる。お前らも可愛いぞー」
「キュー」
「ペン」
キャロばっか可愛がってたら、嫉妬されちゃったぜ。いやー、もてる主は辛いねー!
「フムー」
「デビー」
「トリー」
「お、お前らも?」
うむ、全員平等に愛でないとね。ルフレたちが突き出してきた頭を撫でてやる。すると、キャロたちが見上げてくるのだ。あ、こっちも撫でろと? はいはい、可愛いですねー。え? 次はこっち? 仕方ないなー。
なんてやってたら、遅刻しかけました。いやー、うちの子たちが可愛すぎるのが悪い!
「ヒン?」
「……なんでもない」
「キュ?」
「俺が調子に乗ってたのが悪いのは分かってるから!」
お願いだから、ピュアなケモノアイで見つめないで!
そんな風にワチャワチャしながら歩いていると、待ち合わせ場所に到着した。緑都の広場だ。そこには、すでに早耳猫の面々が待っていた。
「あ! アリッサさん! お待たせしました!」
「……」
「え? アリッサさん?」
「……」
あれ? 俺のこと見えてない?
アリッサさんに手を振ったんだが、何故か反応がなかった。そこそこ人出があるので、俺に気づいていない? 一応、真正面に立ってるんだけど……。
「アリッサさん! アリッサさーん!」
「……」
あれー? なんかプルプルしてる?




