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52話 新たな卵

 アシハナが養蜂箱を作ると言って帰った後。


 品種改良をゲットするため、農業スキルを鍛えようと思ったんだが……。


 水まきを始めて2分くらいで、あっさりとレベルアップのアナウンスが流れていた。どうもレベルアップ直前まで熟練度が溜まっていたらしいな。


 だがこれで品種改良を覚えたぞ!


「ふっふっふ。ついに来たな……実験だー!」


 まず狙う新種作物は決まっている。以前に露店で見かけたキュアニンジンだ。品種改良スキルで作ったって言ってたしな。スキルの仕様が変わっても、作れる作物自体に大きな変更はないだろう。多分。


 回復効果を持った野菜は色々使えそうだし、ぜひ欲しかった。サラダを作ったら、HPMPを両方回復できるアイテムができるかもしれない。


「素材は――まあ、ニンジンは確定だよな」


 青ニンジンを取り出す。これに回復効果を足すわけだ。となると薬草か? どっちも在庫はあるし、とりあえず試してみよう。


「えーと、アーツが確かに追加されてるな。じゃあ――品種改良!」


 ニンジンと薬草が光に包まれ、そのまま渦を巻くように混ざり合っていく。これはもしかして成功か――?


 なんて、いきなり上手く行くわけなかった。


 光が次第に黒く染まっていき、最後にはボフンと煙を上げて、後には黒い炭のようなゴミだけが残されていた。失敗か。いや、直ぐに成功するわけもない。


 お次はニンジンとポーションかな。だが、これも上手く行かなかった。その後、傷薬、傷薬草などの回復効果のある素材を思いつく限り混ぜてみたんだが、成功しない。


 仕方ない、これは掲示板案件だな……。ちょっと調べるとしよう。


 そして、自分の間違いを知る。なんとキュアニンジンは第3エリアのNPCショップで売っているキュアポーションというアイテムとニンジンを混ぜることで生み出せるらしいのだ。


「うーん、今は作れないな」


 材料を無駄にしたぜ。まあ、面白かったからいいけどさ。


 ニンジンは諦めて、他の組み合わせを色々試そう。


 俺は手持ちにある木の実や雑草なども混ぜ合わせてみた。しかし、全く成功しない。30パターン程を試して成功ゼロである。


 ただ、最後の最後にダメ元で試した組み合わせが、奇跡的に成功してしまった。ホレン草と雑草水の組み合わせである。


 混ざり合う光が消えた後、そこには謎の種というアイテムが残されていた。正直全く期待できない組み合わせだが、初めて成功した品種改良だからな。大事に育てるとしよう。


 さて、興も乗ったままだし、この勢いで実験を続けようか。今度は料理の実験である。まあ、昨日水に晒しておいた青どんぐりがどうなってるか試すだけだが。



 桶に入れておいた青どんぐりを取り出してみる。鑑定の結果は特に変わらないな。


 これを材料に、幾つかクッキーを作ってみた。期待通り品質が1つ上がっている。正直、味はあまり変わってないけどね。いや、俺の舌が鈍いだけかもしれんけど。水に晒して品質が上昇したっていうのが重要だ。


 他の木の実にも色々試せそうだし。水も浄化水なんかに変えてみようかね?


 とりあえず、青どんぐりと胡桃を浄化水に晒しておくことにする。明日、この木の実がどうなってるか楽しみだぜ。


 さて、実験はこれで一段落だし、ログイン限界まではもう少し時間がある。農作業を手伝ってから、探索に出かけるか。


 そう考えて納屋から外に出たんだが……。


「これ、何だ?」


 納屋の真ん前に謎の物体が鎮座していた。


 楕円形のその形は、パッと見ラグビーボールにも見えるな。色は薄緑で、テカテカと輝きを放っている。


「も、もしかして卵か?」


 クママが生まれた卵とは大分色味が違うが、形は似ていた。慌てて鑑定してみる。


従魔の卵:親:オルト、サクラ


「おお! オルトとサクラの卵か!」


 卵の誕生は、相性の良いモンス同士を同じ牧場や同じホームで育てていると、その魔力が混ざり合い、ごくまれに産まれることがあるという設定だ。子供向けに生々しさを出来るだけ排除したのだろう。生殖的な表現がなかったのが逆に印象的だった。


 オルトとサクラは人型で、どちらも精霊っぽい種族だ。確かに相性は良さそうだな。あと、モンスは生涯で1度しか配魂ができない。なので、オルトとサクラは今後配魂ができない。


 その分、サモナーの独自システムである従魔合成よりも効果が高いという話だが……。どんな子供が生まれるかね? 今から楽しみだ。ノームが生まれたら、畑を一気に拡張しても良いな。樹精だったら、パーティー戦闘がより安定する。どちらでも良いな。


 新種になる可能性もあるが、どうだろうか。人型になる可能性は高そうだけど。


「畑はみんなに任せて、獣魔ギルドに行くか」


 孵卵器を入手しないといけないからね。


「いらっしゃいませ~」


 今日はバーバラさんが受付か。当たりの日だな。それにしても今日は人が多いな。なんと俺以外に5人もプレイヤーがいるぞ。


 いつもは俺しかいないからね。たった5人でも十分多いのだ。5人中4人が女性というのも、テイマーやサモナーの特徴が出ているね。モフモフは正義っていう事なんだろう。


 見覚えのある籠を背負っているプレイヤーがいるな。初心者さんなのかね? 大変だろうけどゴミ拾い頑張ってください。


「どうされました?」

「あ、いえ、何でもないです」

「そうですか。では、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「実はモンスが卵を産みまして」

「まあ、おめでとうございます。では、孵卵器のご利用ですか?」

「そうなんです。個人用孵卵器を見せてもらえますか?」

「その前にクエストをご報告されては?」

「え?」


 バーバラさんが依頼の一覧を俺に見せてくる。すると、達成可能なクエストが2つもあった。



特殊クエスト

内容:自分の従魔が生んだ卵をバーバラに見せる

報酬:3000G

期限:なし


特殊クエスト

内容:両親がユニークモンスターの卵をバーバラに見せる

報酬:30000G

期限:なし


 2つ目のクエストの報酬が凄いんだけど! かなり達成が難しいってことだろうな。ユニークモンスを2体揃えるのも難しいのに、卵を産んでもらわなきゃならないし。


「いやー珍しい卵、素敵でしたー」


 卵でさえ愛でる対象とは。モンスターマニア恐るべし。美女がでかい卵に頬ずりしている姿は凄まじくシュールだね。


 お、クエスト経験値でリックとクママのレベルが上がったな。


「これで、ユート様はランクアップに必要なギルド貢献度が溜まりました。ランクアップのクエストを受けられますか?」


 このためにバーバラさんはクエストを先に達成しろって言ったのか。


「あの、孵卵器が欲しいんですけど。これって何か関係あります?」

「大ありですよ。ギルドランクが5に上昇しますと、購入可能な孵卵器が増えますから」

「え、まじですか?」

「はい」


 買う事は出来なくても、情報は教えてもらう事が出来た。ランクが上がることで購入可能になる孵卵器は3つもあるらしい。


 すでに購入可能な通常孵卵器、成長促進孵卵器に加えて、能力上昇孵卵器、戦闘技能孵卵器、生産技能孵卵器が買えるようになるらしい。


「うーん。お高いな」


 増える3つはどれも成長促進孵卵器の倍以上している。能力上昇孵卵器が15000G。戦闘技能、生産技能に至ってはなんと20000Gもするのだ。ただ、その効果は破格だ。


 能力上昇孵卵器は、初期ステータスがランダムで+8。戦闘技能孵卵器では初期ステータス+3に加えて所持スキルに戦闘系スキルが追加される。そして、生産技能孵卵器では初期ステータス+3と、その名の通り生産スキルが追加されるらしい。


 ランダムなのでスキルは選べないらしいが、生まれてくるモンスが全く利用できない死にスキルは追加されないということだった。


「これは、絶対にこっちがいいじゃないか」


 卵は1週間保管しておける。その間にランクを上げればいい。ランクアップクエストの達成条件は、Lv10以上のモンスターを3匹連れてくることだ。


 今のところ、オルト、サクラは10を超えているが、リックはLv7、クママはLv6である。


「よしレベル上げだ!」

 


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