514話 オークション後のメール
主催者? そんな奴がいたんだな。ウィンドウが起動しないと思ったら、このイベントを見せるためだったらしい。
プレイヤーたちが席に座り直して舞台を見つめていると、豪華な服を着たNPCが、壇上へと上がるところであった。
黒と金を基調とした服とマントに、赤系のアクセサリーを身に着けた、40過ぎの伊達男だ。モノクルがキラリと光っている。金髪を撫でつけてオールバックにし、鋭い目でプレイヤーたちを睥睨している。
女性プレイヤーから黄色い悲鳴が上がっていた。イケオジですからなぁ。
高額入札連発のお貴族様よりも、さらに豪華な服装である。より高位の貴族なのか?
「我が名はコレクター。この大陸を治めるガーディアス家の人間だ」
メッチャいい声! 聞き覚えがあるぞ。俺が小さいころから第一線で活躍する、有名声優さんが声を当てているらしい。こりゃあ、一部のプレイヤーから熱狂的な人気が出そうなキャラクターだな。
俺も嫌いじゃない。
しかも、結構重要な情報が語られたんじゃないか? 王家的な人間がいるという話はまだ聞いていないし、そもそも国という単位が確認されていない。
プレイヤーは、町がそれぞれ独立していると考えていたのだ。だが、そうでもないらしい。王家とは名乗らなかったが、上位者が存在しているようだった。
「今後、私は四つの都市、赤都、青都、黄都、緑都にて、貴重品、珍品、骨董品、生産品などの買取所を開設する」
コレクターの言った四つの都市は、第10エリアに存在している大きな町だ。そこで、買取所を開設する?
店で売るよりも、お得なのか? まあ、普通の品物は買取をしてはくれないっぽいけど。俺が手持ちで売れるものがあるか考えている中、コレクターの説明が続く。
単純に言えば、通常では売買不可のアイテムの一部や、貴重品なのに店売り値段が安いアイテムなどを、それなりの値段で買い取るお店であるらしい。
「また、アイテムを売るごとに、金銭とは別にポイントが加算される。そのポイントを消費することで、特殊なアイテムとの交換も可能だ」
買取所に集められたアイテムを、ポイント交換で他のプレイヤーがゲットする。そういうシステムであるらしい。
なんと、今回お貴族様が落札したデーモンバスターとマッツンさんの煙草も、ポイント交換可能なアイテムの中にラインナップされるようだ。楽しそうなお店である。
「ただ、まずは第10エリアに到達するところからなんだよなぁ」
とりあえずホームに戻ってから計画を立てるか。今後のことを考えながら転移すると、その直後にメールが届いていた。
新規メールが2つだ。片方はプレイヤー全員へのお知らせであるらしい。
通常メールを開いてみると、コレクターショップの仕様について、改めて説明した内容だった。使い方が分かりやすく書かれている。
最後に「このショップで売り買いをしていれば、NPCから注目されるかもしれませんよ?」的なことが書かれているが……。
注目ね。何か意味があるのだろうか? まあ、使っていれば分かるか。
ただ、もう1つが問題だ。
「重要メール? なんか怖いな」
恐る恐る開いてみると、まずは特別オークションへの出品のお礼と、労いの言葉から始まっていた。
お叱りとかの、悪い内容ではないらしい。
メールを読み進めていくと、どちらかというと運営からのお願いであった。
今回プレイヤーが出品したアイテムの一部を、NPCが取り扱うことを許諾してほしいという内容だったのだ。
俺以外にも数人のプレイヤーに同じ内容が送られているらしい。
NPCが取り扱うと言っても普通の雑貨屋などに置かれるわけではなく、先程発表された交換所の景品として扱われるようだ。
それに、全く同じアイテムではなく、能力や見た目、素材をグレードダウンした、低品質品となるらしい。
うちの場合だと、天麩羅蕎麦、食器、ヌイグルミ、炬燵が対象だった。
精霊の実は加工品でないなどの様々な理由から、対象外であるらしい。
添付されていた性能を確認してみると、確かにグレードダウンしている。
例えばルフレの天麩羅蕎麦膳は、出品した物なら食後1時間、戦闘中全ステータス上昇。ただし、死亡した場合はデスペナルティー倍増という効果だった。
それが、膳ではなく天麩羅蕎麦のみ、しかも天麩羅の種類も減っている。味ももしかしたら低下しているかもしれない。
効果も、食後15分間だけ戦闘中全ステータス上昇。死亡した場合はデスペナルティー倍増となっていた。かなりクオリティが低い。
ヒムカの食器はナイフとフォーク、スプーンの3点セット。さらに、装飾は簡素で、毒消し効果も弱くなっている。
アイネのヌイグルミは小型化され、効果が減少。
サクラの炬燵は天板の彫刻はなく、ごく普通の炬燵に見えた。しかも、使用回数に制限有りである。
「うーん、拒否もできるみたいだけど、別にいいかな?」
これなら、落札してくれた人たちも怒らないでいてくれるだろう。出品したアイテムにはプレミア感が残るし、あっちはうちの子たちの手作りだしね。
それに、いくつか欲しい商品もある。筆頭は、マッツンさんの蘇生タバコだ。多少効果は落ちるだろうが、自動蘇生は魅力的だ。
ソーヤ君の自動蘇生薬が完成するまでの繋ぎとして、ぜひ欲しい。それに、使用方法が違えば、使い分けができるかもしれないのだ。
それ以外の目玉商品にも、釣り竿やサーフボードなど、愉快な商品が出品されていた。あれが入手可能なら嬉しいものである。
「お金もくれるっていうしな」
さらに、このグレードダウン版をNPCが扱うようになったからといって、俺が商売を制限されるわけではないらしい。
そもそも、大量生産して売るつもりもないから、デメリットはほとんどないだろう。
天麩羅蕎麦が、250万G、カトラリーセットが100万G、ヌイグルミが200万G、炬燵が300万G。計850万Gか。
お、この契約料を合わせると、手持ちが1億超えるな! よしよし! これはもう、許諾するしかないだろう。
キャラクター表に、KTKやイベントNPCの情報などを追加しました。
magullot様、またまたありがとうございます。
5月中旬に、1週間ほどお休みを貰おうと思っています。