513話 9300万G
特別オークションは進み、すでに16品が消化された。お貴族様に搔っ攫われたのは最初の2つだけで、他のアイテムは全てプレイヤーが落札している。
うちから出品したアイテムも、既に全部落札されていた。
ヒムカの食器セットが1970万Gでも驚いたのに、他の4種も高額で落札されている。
ルフレの天麩羅もり蕎麦膳セットが1200万G、アイネの巨大なウサグルミが1840万G、オルトの精霊の実が2030万G。そして、サクラの炬燵にいたっては2260万Gで落札されていた。
いやいや、ヤバくない?
正直言って、炬燵と精霊の実が2000万を超えるとは思ってもいなかった。だって、レア度で言えば6だよ?
NPCが出品していたレア度7の武器よりも高額になるなんて、誰が思うよ?
精霊の実は、育てたら樹精が生まれるかもしれないと考えたプレイヤーが俺の想像する以上に多かったらしい。だが、確実に手に入るわけではないのに……。
まあ、値段が上がってくれる分にはありがたいんだけどさ。
炬燵は、見覚えのあるプレイヤーが落札していた。名前は覚えていないんだけど、うちの畑の前によくいる人なのだ。無人販売所で買い物をする姿をよく見かける。
サクラに向かって手を振ったりしていることが多いので、サクラファンなのだろうとは思っていたんだけど……。
有用な効果はあるが、それだけで2000万は超えないだろう。これが、ファン心理ってやつなのか? だとしたら、うちの子たちの人気を舐めていた。俺の想定を大幅に超える、超熱心なファンがいたらしい。
さすがうちの子たちだ! みんなには、あとでご褒美を上げないとね。
そして、いよいよ俺が狙っている孵卵器の登場である。
「お次は、覚醒孵卵器! 500万Gからのスタートです!」
おお、どうやら俺の入札が一番高かったらしい。所持金は1030万G程度だが、落札できるかね?
まさか、1000万を超えてくるとは思わなかったから、気軽に考えていた。
うちから出した目玉商品のお金が先に貰えたら確実に落とせるんだけどなぁ。まあ、入金はオークション終了時って明記されてるから、仕方ないけどさ。
俺は550万Gで入札された直後に、610万Gで入札し返す。すると、他のプレイヤーたちが入札を止めていた。
どうやら、俺以外で孵卵器を狙っていたプレイヤーは、もう所持金が限界であるらしい。これは、このまま俺が落札できるのか?
そう思ったけど、お貴族様は見逃してはくれませんでした。
「730万G入りました! さあ、どうされますか!」
ここまでは想定内だ。あとは、他のプレイヤーがどう動くかである。ラストの一撃で落とすことを狙っている人がいるかもしれないのだ。
そこで、俺は所持金をほぼ突っ込んでしまうことにした。
「1030万!」
ここで少しでも多めの金額で入札することで、他のプレイヤーを牽制するのだ。うちの商品の落札価格を見るに、全く安心できないが……。
「1030万! さあ、他に入札される方はいらっしゃいませんか?」
会場が、静寂に包まれる。皆が固唾をのんで、見守っているのだ。
恐ろしく長い20秒が経過し、オークショニアが声を張り上げた。
「では、こちらの覚醒孵卵器は、1030万で落札です!」
「「「おお~」」」
低いどよめきが会場を揺らす。他のプレイヤーたちも額の汗を拭っているな。なぜだ?
しかも拍手が起きたし。他の人の落札では、ヒューイ以外で拍手なんかなかったけど……。あ、顔出しだからか? でも、サクラの炬燵を落札した人なんかには拍手なかったよな?
ま、祝福されている分にはいいか。
所持金はほぼゼロだが、終われば9300万Gも手に入るし、大丈夫だろう。むしろ、それでさらにホームを充実させられるのだ。
第10エリアに到達するために、色々と買い込むこともできる。多少高めのアイテムでもバンバン使えるぞ。
生産職が第8、9のボスを突破するために、爆弾などを大量に使用する戦い方も編み出されている。9300万もあれば、お金でぶん殴るようなその戦法も問題ないのだ。
「お次はこちら! 英国館風ホーム、庭園付き! 400万Gから!」
お、これも来たか。孵卵器とこっちで少し迷っていたのだ。英国風の庭園も素晴らしいし、白亜の館も非常に美しかった。
本当に、お貴族様の住んでいる屋敷って感じなのだ。
それに、日本家屋でダンゴやナッツのようなマスコットが解放されたように、こちらでも新しいマスコットが手に入るかもしれない。
そう考えると非常に魅力的だった。
しかし、俺はすでに日本家屋を持っているし、あっちに愛着もある。
今回は見送って、孵卵器にかけることにしたのだ。
その庭付き館に、次々と入札が入る。普通にホームを買った方が安いと思うが、そこは色々と思惑があるのだろう。それに、特別なホームっていうのはロマンでもあるからね!
結局、コクテンが800万Gで落札していた。見覚えのあるプレイヤーがいて驚いたよ。今度、遊びに行かせてもらおう。
その後、サモナー用の合成魔石などが落札され、全ての出品が終了したのだった。
ただ、まだ終わりではないらしい。
「これにて、特別オークションは終了いたします! お集まりいただきありがとうございました! 最後に、主催者であるコレクター様よりご挨拶いただきます!」
明日か明後日に、キャラクター表を更新させていただきます。