511話 特別オークション開始
「ここが特別オークションの会場か……」
会場は扇の形をしており、客席は後ろに行くほど高くなっている。舞台を見下ろす、大学の講堂と同じような造りだった。
内装は超豪華だ。宮殿風っていうの? 天井には西洋風のファンタジックな絵が描かれ、柱などには金銀の装飾が施されている。
このゲームにしては珍しく流されているBGMも、オーケストラ調の音楽だった。
周囲のプレイヤーたちは、ほとんどが真っ黒である。黒いスキンが被された、探偵アニメの犯人風の外見だ。
そう言えば、俺ずっと顔出しのままだったな。今回は顔隠しにしてみるか? いや、もうここまできたらこれでいいか。別にそれで不利益があるわけじゃないし。
あと、気になったのが、舞台の目の前に作られた特設席みたいなところに座っているNPCさんたち。執事やメイドさんに囲まれた中央の人はめっちゃ煌びやかな服装で、まるでお貴族様のようだった。
このゲーム内で、貴族や王族はまだ確認されていないはずである。一番偉いNPCで町長だったかな?
もしかして、この人たちのお披露目的な意味があるのだろうか?
それと、この貴族たちのせいで1つ不安が。この人ら、競りに参加したりせんよな? どう考えても、財力でお貴族様に勝てる気がしないんだけど……。
他のプレイヤーたちと同じようにNPCを観察していたら、舞台の上に人が現れた。目元だけを隠すような仮面を装着した、道化のような衣装の男性だ。
「お集りの紳士淑女の皆さま! お待たせいたしました! 目玉商品ばかりを集めた、特別オークション! ただ今より開催いたします!」
NPC貴族様たちが拍手を始めたので、プレイヤーたちもつられて拍手を始める。こういうサクラ要員でもあるらしい。
プレイヤーたちに戸惑った様子が残る中、最初の品物が運ばれてきた。
NPCが出品したアイテムで、かなり強力な剣である。デーモンバスターという名前で、魔法攻撃力も高かった。
名称:デーモンバスター
レア度:7 品質:★10 耐久:720
効果:攻撃力+275、魔法力+153
物理無効貫通、必殺技反動軽減(中)、悪魔特効(中)
重量:12
レア度7って、現状最高レアかな? しかも品質10で、能力も凄い。
物理無効貫通は、ゴーストなどに対してダメージを与えられるようになる効果だ。それだけでも強いのに、必殺技の持つデメリットを和らげる効果があるらしかった。さらに、悪魔に対する特効能力だ。
まあ、現状で必殺技は数人しか取得してないらしいから、使用できる人間は限られるだろう。もしくは、必殺技取得を見越して、手に入れるのもありかな?
今は数人でも、そのうち取得条件が出回って、皆が必殺技をゲットするようになるだろうしね。
「最初は320万Gから!」
やっぱ、目玉商品は高いな!
十分高額なのに、グングンと値段が上がっていく。
400、500、600――そして700万を超えた、その時であった。
「910万」
「おーっと、910万出ました! これで、次の入札からは1000万Gの大台に突入だぁぁ!」
仮面のオークショニアの言葉とともに、会場からどよめきが上がる。だが、それも無理はなかった。
なんと、910万Gを宣言したのは、NPCだったのだ。一番中央に座るお貴族様の横にいる、執事っぽい人だ。
どう考えても、横の貴族の代理だろう。
ここまで動かなかったので、みんなノーマークだったのである。
その後、誰も入札者は現れない。驚きで手が止まってしまっているのもあるだろうが、NPCの貴族の手持ちがどうなのか分からず、様子を見ているのだ。
それに、入札時、前の金額から1割以上上乗せした金額を提示しなくてはならない。オークショニアが言う通り、最低でも1001万以上を宣言せねばならないのだ。
「では、こちらは910万Gにて落札となります!」
もしかして、目玉商品全部、貴族さんに持ってかれるように設定されてる? だったら、普通の競売に参加したかったんだけど!
プレイヤーたちが未だにザワザワとしていると、2品目が運ばれてきた。プレイヤーメイドのアイテムである。
俺のじゃないよ? なんと、マッツンさんが作り上げた、超高級タバコである。味もさることながら、その効果が凄まじかった。
なんとこのタバコを吸うと、一定時間、自動蘇生状態になるのだ。その名の通り、死んでも自動で蘇生されるという効果である。
ソロでは使用不可能な蘇生薬と違い、これなら1人でも死に戻りを避けられる。メチャクチャ素晴らしいアイテムなんだが、タバコっていうのがね。
俺はタバコを吸わないので、ちょっと敬遠してしまうのだ。ソーヤ君が普通に自動蘇生アイテムを開発しているらしいから、それを売ってもらえばいいだろう。
だが、タバコ好きや、自動蘇生が喉から手が出るほど欲しい人々からは、熱いまなざしが送られている。
「その名も『パインマークの蘇生タバコ10本入り』! 200万Gから!」
1本20万の計算で入札した奴がいたらしい。メチャクチャ高いが、タバコ好きや、マッツンさんのファンが入札しているのだろう。
そして、再びNPCが動いた。
「455万」
一気に455万である。これで、次は500万以上は確実になった。誰も動かないでいると、これで確定してしまった。
「では、455万Gで落札です!」
うーむ、貴族はやっぱり動くか。これは、落札するのはかなり難しくなってしまったかもしれないな。