507話 オークションの朝
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起きてからすぐに畑仕事を終えた俺は、ホームに戻って、炬燵でステータスウィンドウを開いていた。
「今日はオークションだ! 頑張るぞ!」
「あい!」
俺の膝の上では、マモリがウィンドウを覗き込んでいる。興味があるらしい。
俺が見ているのは、オークションのページである。色々な品物が並んでおり、見ているだけでワクワクしてくる。マモリが楽しそうなのも分かるのだ。
昨日は色々と金策に走った結果、所持金は2000万を超えている。まさかこんな大金をゲットできるとは思っていなかったぜ。
まあ、その内1800万はアリッサさんからの支払いだけど。かなり無理をしてくれたらしいんだけど、大丈夫かな? アリッサさんの目が死んでいたのだ。
でも、早耳猫は大手クランなのだし、きっと平気なのだろう。
そこに自分で稼いだ200万を加えて、2000万である。1800万に比べるとしょぼく感じるが、個人で200万稼いだだけでも凄くないか?
依頼をこなしたり、無人販売所にアイテムを補充しまくったり、頑張ったのである。最近はプレイヤーたちも所持金が増えてきたのか、高額設定にしても意外と売れるのだ。
ただ、皆がお金持ちということは、オークションでのライバルたちが手強いってことでもあるからね。俺も気合を入れねば。
欲しいアイテムはチェックしてある。いくつものサーバーで同時にオークションが行われるため、目当ての品物の出品時間が被っていたら、どちらかにしか行けない。
俺は特に欲しい物の出品時間を書き出して、タイムテーブルを作成していた。こういうのを考えるのも楽しいのだ。
「でも、まずはネトオクをチェックだ」
「あい!」
会場で行われる競売は13時からだが、1日かけて入札が行われるネトオクはすでに始まっている。
これはゲーム内のどこからでも入札可能なので、競売に向かう前に目ぼしい物をチェックしておきたかった。
「ふんふん。前よりもかなり出品数が増えたな」
「あい?」
「ポーションとか、ヤバいぞ。低品質の奴も多いし」
スキルのレベリングで作ったいらないアイテムを、ダメもとで出品する人も多いんだろう。あとは第二陣の中でも、まだレベルが低い生産職の人たちかな?
ポーションを全て表示してみたら、出品数が8000個を超えていた。ソート機能がなかったら、欲しい商品を探すだけでも一苦労であっただろう。
俺が欲しいのは、素材と作物。あとはモンスターの卵だ。ネトオクは安い品物ばかりなので、ここに出品されているモンスの卵に期待できないけど。
作物も、できれば未知の物で、なおかつ株分け可能なプレイヤーメイドのものが欲しかった。ただ、こちらもネトオクでは望み薄だろう。
いい物は競売に出品されているのだ。
それでも、掘り出し物を求めて多くのプレイヤーたちがネトオクをチェックするだろう。俺がネトオクをチェックしてるのと同じように。
まあ、こういう宝探し的な感じ、みんな好きだよね。当日出品のアイテムはネトオクに回されるらしいから、本当にお宝が眠っている可能性もあるしな。
俺はそのあと二時間ほどアイテムを探し、入札を行ったのであった。
プレイヤーが練習で書いた風景画とか、意外と気に入ってしまったのだ。安かったし、落札できたらホームに飾ろう。
「それじゃ、そろそろいくか」
オークション会場の仕様は、毎回少しずつ変わっている。プレイヤーの意見を聞き取って、細かいアップデートを繰り返しているのだろう。
今回、プレイヤーたちはマスコットや従魔などを連れていくことはできなくなっていた。その分、少しでも処理速度を上げているようだ。
あと、今回から目玉商品という特殊な出品が追加されていた。アプデ前の告知では、こんな情報なかったんだが……。運営のサプライズなのだろう。
特殊な条件を満たしたアイテムは目玉商品という扱いになり、全てのオークションが終了した後に特別オークションが行われるそうだ。
この目玉商品、日中はネトオクのようにどこからでも入札が可能になっている。そこで各商品上位300名に入る値段を付けたプレイヤーだけが、競売形式の特別オークションに招待されるらしい。
しかも、自分が事前入札したアイテムのオークションにしか参加できない仕組みである。まあ、会場の様子は外部へと中継されるようなので、見学は問題ないらしいが。
驚きなのは、うちから出品したアイテムが全て目玉商品扱いになっているということだった。朝、運営からメールが届いていて、しばらく放心してしまった。特殊な条件って、何だったんだろうな?
アイテムの品質やレア度で言えば、同じようなものはあるだろうし、モンスが作ったアイテムだって今や珍しくはない。
本当に理由が分からなかった。運営からのメールにもその辺の条件は書かれていなかったし。
それに、メリットもデメリットも不明である。そもそも、目玉商品枠が設けられたのが今回が初めてなので、出品者側も落札者側も、どんな感じになるのか手探り状態なのだ。
「まあ、最悪売れ残ってもアイテムが消滅するわけじゃないから、構わないけどさ。それよりも、今は競売に集中しよう。あとは任せたぞ」
「あいー」
「トリリー」
マモリとオレアのちびっ子管理者コンビに後を頼み、俺は目的の会場を選んで転移するのであった。
マモリが俺の後ろでカチカチ打ち鳴らしているのは、火打ち石か? 古風だな! さすが座敷童!
オークション開催期間、会場へはステータスウィンドウから無制限に転移可能なのだ。まあ、目当ての会場が満員でなければ、だが。
「うん。第13番会場。間違いないな」
ほぼ満員に見えるが、なんとか入場できたらしい。知り合いがいないかキョロキョロしていたら、オークション開催時間になっていた。
「では、オークションを開始いたします!」
初回に参加した時よりも、オークショニアの声が平坦な気がする。それに、品物が運ばれてくるような演出もなくなっていた。
手元のウィンドウに、商品の姿とデータが表示されている。全体的に簡素化し、サーバーの負荷を軽減しているからだろう。
まあ、入札さえスムーズにできるんなら、文句はないのだ。
「俺が狙っているのは、4つ目だな」
気持ちがかなり上向いてきました。予定通り、次回からは通常更新に戻そうと思います。
たくさんの励まし、ありがとうございました。
また、明後日に頂いたキャラクター一覧を投稿いたしますが、本編の次回更新は4/8です。