499話 肥料と栄養剤
魔化肥料の効果は気になったが、とりあえず納品用の物を作ってしまおう。特別栄養剤も作らなきゃいけないしな。
こっちも、色々と実験してみたが、基本は肥料と同じだった。
単純に錬金するだけだと多目的栄養剤だが、錬金の液化アーツを使うと魔化栄養剤に変化するのだ。
名称:魔化栄養剤
レア度:5 品質:★2
効果:畑に撒くと、栽培効果を増加させる。効果は5日間続く。魔化肥料と合わせることで、一部の作物に特殊な進化を促す。
魔化肥料とほぼ同じだ。両者を併せることで、特殊な効果が発生するらしい。
しかも、凄いことを発見してしまった。
名称:水化栄養剤
レア度:6 品質:★1
効果:畑に撒くと、栽培効果を増加させる。効果は5日間続く。水化肥料と合わせることで、一部の作物に特殊な進化を促す。
作成時、素材を全て水属性で固めてみたら、こんなものができ上ってしまったのだ。水は元々水属性だし、他の素材も水属性の魔獣から得た物ばかりを使った結果だった。まあ、本当に偶然なんだけどね。
何故か水化栄養剤ができてしまい、慌てて原因を調べたのである。
他の物でも色々と試してみると、土水火風はすべて作れてしまった。
5つの素材中、4つがその属性であれば作成可能であるらしい。5つ全てを属性素材で作った時に比べ、明らかに品質が下がるけどね。
他に、聖化栄養剤というものも作れたのだが、聖化肥料が作成不可能だった。聖属性の素材が不足していたのだ。
聖化栄養剤の素材は、聖水に神聖樹の葉、神聖樹の枝、イベントの時の守護獣のインゴットの4種だ。
実は、イベント村で依頼をこなすと普通に守護獣のインゴットが手に入るようになるらしく、市場にそれなりの数が出回っていた。
それを知らずに、以前に露店で発見した時に貴重な品だと思って購入してしまったのである。まあ、思わず買ったけど、うちでは使い道がなくてずっと死蔵していたアイテムだった。
第二陣の中には、守護獣シリーズの愛用者も結構いるそうだ。序盤でも簡単に手に入るので、鋼鉄製装備に乗り換えるまでの繋ぎで使っている人が多いらしい。
聖属性の作物なんてメチャクチャ気になるし、肥料作成用の素材をぜひ入手したいところだ。プレイヤーズショップを覗くか、オークションで狙ってみるのもいいかもしれないな。
「忙しくなってきやがった! まずは魔化を完璧に作って、その後に各属性だな!」
そうやってテンションアゲアゲで肥料と栄養剤を作りまくっていると、いつの間にかオルトがそばに近寄ってきていた。
「ム?」
「お、ちょうどいいところに。今作り終わったとこなんだよ。それ、魔化肥料ってやつなんだが、使い道分かるか?」
「ムー!」
「おー! さすがオルト! 畑の申し子! 頼りになるー!」
「ムム!」
オルトが胸を反らして分かりやすく調子に乗るが、今は許そう。
「それで、どこで使える?」
「ムムー」
「そっちだと、薬草畑か」
「ム!」
オルトが小走りで向かった先は、やはり薬草を植えた畑だった。未だに薬草を大量生産して、日々ポーションを作ってはギルドで売っているからね。
大金が手に入るわけじゃないけど、塵も積もれば山となるのだ。我が家の大事な収入源&俺のレベリング道具である。
「薬草が、何か他の物に変化するってことか?」
「ム」
「オルトが言うなら間違いないだろうし、ここの一角で試してみるか」
「ムー!」
オルトに魔化肥料と魔化栄養剤を渡すと、早速撒き始めた。オルトが両者を畑に使用し終えた直後、その一角が一瞬だけ青白く光る。
魔化セット1つでは、畑1面分にも足りていないらしい。光ったのは4分の1くらいだった。
「カプリに納品する分を確保しても、あと4セットあるんだがどこに使う? ああ、四属性のも揃ってるけど」
「ム!」
四属性の肥料と栄養剤は、低品質の物を合成して品質を上昇させたりしていたら、結局★4のものが3セットでき上がっていた。
「ここは微炎草が植わってるけど……」
「ムー」
「火化肥料と栄養剤か。もしかして、属性が増すってことか?」
「ムー!」
その後、オルトは風耕畑に風化肥料と栄養剤を、水草の植わっている水耕畑に水化肥料と栄養剤を撒いていた。やはり、属性を強化してくれるようだ。
最後、土属性セットは赤テング茸の原木にぶっかけていたので驚いたが、これで問題ないようだ。
その後にオルトが向かったのは果樹園である。
「果樹の場合は1本に1セットか」
「ム!」
「緑桃だけでいいのか?」
「ム」
いいらしい。結局、魔化1セットと、属性4つを緑桃に使用していた。変化するのを楽しみにしておこう。
「ムーム!」
「お? どうした?」
肥料と栄養剤を果樹に撒き終えると、オルトが俺の手を引っ張り始めた。どこかに連れていきたいらしい。
そのままオルトと一緒に畑を歩いていくと、果樹園の中を通り抜け、すぐに足を止める。そこは、ある小さい樹木の前であった。
「トリ?」
オレアの本体である、オリーブトレントだ。何故かオレアがその前で待っていた。
「ムー」
「キュ……?」
オルトが、オリーブトレントの根元で昼寝をしていたリックを揺すって起こす。ヘソ天で寝る姿は、野生の欠片もないね。
元々、ここでオレアとリックと待ち合わせをしていたらしい。何をするつもりだ?
そして、3人で俺の前にやってくると、再び何かを訴え始めた。リックが両手を前に突き出し、尻尾がピーンと伸びている。
この姿、見覚えがあった。
「もしかして、樹呪術の儀式を行いたいのか?」
「ムー!」
「キキュ!」
「トリ!」
そう、それは樹呪術のおねだりであった。
「樹呪術をオレアに使うのか?」
「ム」
「魔化肥料と魔化栄養剤は?」
「ムム!」
樹呪術と一緒に、魔化栄養剤も使うようだ。何が起きるのだろうか?