496話 オークション準備
ホームに戻ってオークションのことを調べると、俺は最大で4品目まで出品できるらしかった。
これはプレイヤーのレベルや、各ギルドのランク。生産スキルのレベルなどで、変動するらしい。今のところ、誰でも最低3つは出品でき、最も多い人は8個まで出せるそうだ。
「さて、オークションに自分の作ったものを出品したい人! 挙手!」
「ムムー!」
「ヒム!」
「フマ!」
「フム!」
「――♪」
俺がモンスたちを集めて尋ねると、皆が一斉に手を上げた。
「やっぱ、精霊組はみんな参加希望か」
何だかんだ騒ぐのが好きだし、こういうお祭りごとも好きなんだろう。
「うーむ、4つまでしか……。いや、待てよ。ギルドランクがもう1つ上がれば、出品できる数が1つ増えるんだよな」
狙うは農業ギルドのランクアップだろう。現在、貢献度は十分なんだが、俺のスキルレベルが足りていないのだ。
俺のスキルは農耕:Lv49。これをカンストさせて、農耕・上級を取得すれば、自動的にギルドランクがアップする。
「ということで、畑仕事じゃーい!」
「ムムー!」
雑草畑を1つ使い、無駄な水まきや収穫を繰り返す。第二陣のプレイヤーの露店に行き、安い薬草をたくさん買ってきては株分けをしまくったりもした。
その結果、1時間ほどで農耕スキルがレベルアップしてくれたのである。元々、レベルアップ間近だったんだろう。
「俺も1次スキルが段々とカンストし始めたよな」
水魔術や、今回の農耕。それ以外だと、ちょっと前に植物知識もレベル50に達していた。植物を鑑定したりしていれば勝手にレベルが上がるから、いつの間にかカンストしてたって感じだよね。
上位スキルに派生したりすることもないので、進化したりってことはなさそうだった。いや、植物学が上位スキルなんだろうし、もう取得済みってことか?
「ま、今は農耕スキルだな。派生スキルを1つ取得可能か……」
農耕をカンストさせると、育樹、水耕のどちらかをゲットすることができるらしい。サクラのお世話もはかどりそうだし、俺は育樹にしておいた。因みに、大抵のスキルのカンストは50レベルだ。ベータでは40だったらしいけど、製品版では50に修正されたようだ。
「で、さらにボーナスポイントを10消費して、農耕・上級を取得だ!」
これで、農業ギルドに行けば、ランクが上昇するはずである。
俺は改めてモンスたちを集めると、出品するためのアイテム作りをお願いした。
「俺はちょいと出かけてくるが、参加希望の5人は出品するアイテムを1つ作ってくれ! あ、オルトは作物でいいってことだよな?」
「ムー!」
オルトが自信満々に頷くと、何やらリックを呼び寄せて、相談し始める。リックの助けがいるってことだろう。
何をするつもりなんだ?
他の子たちは一斉に散らばっていった。素材の吟味や、試作を開始するらしい。いや、ルフレだけが俺の前に残ったな。
「フムー」
「どうしたルフレ?」
「フムム!」
何やら訴えかけている。どうも、素材が足りないと言いたいらしい。ルフレが出品するとなると料理だろうし、食材をたくさん使うのだろう。
いいね。普段は作れないような超贅沢料理を、ぜひ作ってもらいたいものだ。
「何が欲しいんだ?」
「フム!」
「釣りのジェスチャー。つまり魚介類か?」
「フムー!」
正解だった。いくつか魚介類が欲しいらしい。
「よし、それじゃあ、農業ギルドの次は釣りだな!」
オークションに参加しない子たちを連れて、素材ゲットに走り回るのもいいだろう。ヒムカやアイネも、欲しい素材があるっぽいしね。
連れて行くのはリック、クママ、ドリモ、ファウ、ペルカ、リリスだ。リックがオルトに協力するのは今すぐでなくていいらしいので、参加可能であった。
5時間後。
俺たちはレッドタウンで休憩していた。
「指定された素材はほぼゲットしたな。いやー、大変だった」
「デビー……」
「そういえば、リリスはガルーダと戦うの初めてだったか」
「デビ」
ガルーダの卵をゲットするために、ボスに4回も挑まなくてはならなかったのだ。戦力的には余裕を持って勝利できるんだが、ボスと連続で戦うだけで気疲れしてしまうのである。
ガルーダと激しい空中戦を演じたリリスも、かなりお疲れの様子だった。
「あとはここで蕎麦とかを手に入れるだけだな」
「クマー!」
「おっと。待ちたまえクママ君」
「クマー?」
「どうせここまで来たんなら、最高の蕎麦を手に入れたいだろう?」
クママは、前回蕎麦を買った店に向かおうとしたらしい。ただ、今回はルフレのためにも最高の蕎麦をゲットしたいのだ。
「まずはレッドタウンの店を巡るぞ!」
NPCショップでも品質が違う場合も多い。上手くいけば、品質の高い蕎麦などを売っている店もあるかもしれない。
とりあえず、掲示板などで紹介されている蕎麦屋や雑貨屋、食材屋を回ってみるとしよう。
そうしてレッドタウンを歩き回っていると、俺はある人物と再会を果たしていた。農業ギルドから出てきたその人物が、こちらに気づいて声をかけてくる。
「あれー、君は……ユート君じゃないか」
「トーラウス?」
「久しぶりだね」
そこにいたのは、木材屋ピスコの息子で、植物学者のトーラウスであった。
前回のあとがきで更新延期をお伝えするのを忘れておりました。
ご心配をおかけして、申し訳ありません。
次回からは、いつも通りの更新に戻せると思います。
レビューをいただきました。ありがとうございます。
白銀さんの珍冒険www
的確過ぎて、笑ってしまいました。
何度も読み返していただいているということで、とても嬉しいです。
これからも当作品をよろしくお願いいたします。