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491話 早耳猫移転

 タゴサックたちと別れた俺は、その足でアリッサさんの下へと向かった。


 最後に起きたイベントに関して、聞きにいくためだ。ノームの長の登場は、他でも確認できているのか? 他の試練では? その辺が知りたい。


 あとは称号の情報である。


 ああ、売る情報は、土精霊の加護の情報じゃないよ?


称号:土精霊の加護

効果:ボーナスポイント2点獲得。土属性モンスターとの戦闘の際に与ダメージ上昇、被ダメージ減少


 土霊の試練を出たところでゲットできたのだ。だが、こっちはもう広く知られているらしい。そもそも、以前アリッサさんに教えてもらった称号だからな。


 これではなく、もう1つ称号をゲットしてしまったのだ。


『おめでとうございます。全プレイヤー中、最速で所持称号が20種類を達成しました。『最速の称号コレクターⅡ』の称号が授与されます』


称号:最速の称号コレクターⅡ

効果:賞金30万G獲得。ボーナスポイント4点獲得。ランダムスキルスクロール1つ授与。敏捷+3。


 以前もゲットした、最速の称号コレクターの上位互換であった。多分、これは俺しかゲットしてないはずだから、売れるだろう。


 ランダムスキルスクロールは、後で使うつもりだ。今は、情報が欲しい。


 そう考えて、早耳猫に急いできたんだが……。


「あれ? ここじゃなかったっけ?」

「ムー?」


 以前、早耳猫の店舗があった場所は、閑散とした空き店舗に変わっていた。中をのぞくと、インテリアが全て取り払われている。


 看板も取り下げられ、完全に引き払われてしまっていた。


 場所を間違えた? 道を一本間違えたとか?


 だが、周囲を歩き回ってみても、早耳猫の店を発見することができなかった。


 周りには見覚えがあるのに、ここだけが違う。


 多分、どっかに移転したんだろう。でも、そんなこと一言も知らされていない。いや、その他大勢の一顧客に、わざわざ知らせるようなことでもないのかもしれんが……。


 結構仲良くしてると思ってたんだけどな。そう思ってたのは俺だけだったってこと? アリッサさんにとっては、移転を知らせるまでもない相手ってことか……。


 やばい、心が痛い! ていうか、常連面してた今までの自分の行動が痛い!


「うごおぉぉ――お?」


 俺が頭を抱えた直後であった。フレンドメールの着信音が聞こえる。


「ア、アリッサさんからだ!」


 メールには、『早耳猫・始まりの町支店の移転につきまして』とあった。


 今日、新しいホームを入手して、店の場所を移動したらしい。よかった! お知らせ来たってことは、常連的な扱いをしてくれてるってことだよね? つまり、過去の俺のちょっと馴れ馴れしい感じの行動も、ギリ許されるってことだよね? ね?


「ふー、セーフだぜ」


 どうも、旧店舗を閉鎖して、早耳猫のメンバーが新しい拠点に移動するためにここを離れた直後に俺がやってきたらしい。


 タイミングが悪かったな。


 メールに添付してある新店舗へと向かってみよう。


 そこは、大通りの中でも中央区画に近い、一等地であった。元の店舗から5分くらいしか離れていない。しかも以前の店舗よりも大分広かった。


「こんちわー」

「いらっしゃいませ。早耳猫にようこそ」

「え?」


 誰? 妙に迫力があるっていうか、不機嫌そうな女性が出迎えてくれたんだけど……。黒髪をアップにした、できる女風のクールビューティである。


 あ、NPCだわ。不機嫌そうなんじゃなくて、ちょっと話し方が平坦なだけだ。


「あら? ユート君?」

「アリッサさん。どーも」

「は、早いわね。メール送って5分くらいしか経ってないんだけど……」

「はは、ちょうど情報を買いに来たところだったんで」

「あー、そういうこと」

「それにしても、広くなりましたねぇ」

「でしょ? しかも、前の機能限定ホームと違って普通のホームと同じように使えるんだよ」


 そう言えば、前の店舗は機能が制限されているって言ってたな。こっちは、ホームとショップ、両方の機能が使えるらしい。


「NPC店員さんも、雇えるんですね」

「それも店舗型ホームの機能の一つね。ここだと、最大で4人まで雇えるの。うちは商人ギルドのランクも高いから、結構高レベルよ?」


 商売スキルなども持ち、普通のNPCよりも高性能なAIを積んでいるらしい。


「最近は人手不足だから、助かってるわ」

「人手不足なんですか?」

「解放されたフィールドも増えてきたし、うちの認知度も上がってるからねぇ。でも、新メンバーはなかなか増えないから……」


 売ってもらった情報については、確証を得るために早耳猫が自分たちで再検証を行うことが多い。しかし、フィールドが進めば進むほど、難易度が上昇して人員を多く振り分けねばならなくなる。


 すると、他の部署での人員が不足してしまうそうだ。その穴を埋めるために、積極的にNPCを雇っているという。


「ああ、ごめんごめん。こっちの話ばかりで」


 新店舗がよほどうれしいのだろう。アリッサさんが普段はあまり見せない、テヘヘって感じの仕草で謝ってくる。


「それで、買いたい情報って?」

「土霊の試練に関することなんですが」

「お、ついに攻略行っちゃう? 地図とかもあるよ? あとは、報酬に関しての情報もあるし。攻略して土精霊の加護の称号ゲットしちゃう? あそこは完全に丸裸状態だから、どんな情報でもあるよ」


 アリッサさんが情報のリストを提示してくれるが、俺にはもう必要ないのだ。


「いえ、攻略はもう終わったんです」

「え? それなのに、情報が欲しい?」

「はい。実は――」

「あ、ちょっと待って?」


 俺が口を開こうとすると、アリッサさんが掌を俺に突き出してそれを制した。そのまま、何度も深呼吸をしている。


「初期エリアの人員を減らした途端、第二エリアで新発見? いえいえ、さすがのユート君だって、あれだけ探索され尽くした場所で新発見だなんて……。でも、ユート君だし……。怖いけど、がんばるのよアリッサ。がんばれがんばれがーんばれ」


 なんだ? 何かブツブツと呟いている。誰かとフレンドトークか? 重要な相手から着信が来てしまったのかもしれない。たまにあるよね。まあ、早耳猫のサブマスだから、忙しいんだろうな。


 そのまま数秒待っていると、アリッサさんが再びこちらを向いた。


 妙に覚悟を決めた感じの顔である。あれだ、勇者が魔王に挑む直前的な?


「あの、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。それで、話を聞かせてもらえるかしら?」

「は、はい。実は、土霊の試練を攻略して、入り口に戻ってきたらノームの長に出迎えられまして」

「え? ノームの長が?」

「はい。それで、他に同じことがあったプレイヤーとかはいないかなーと思いまして」

「う――」

「アリッサさん?」


 あ、これは恒例のあれが来るかもしれないぞ。俺、これ結構好きなんだよね。


「うみゃー! やっぱこうなったぁぁ!」


 うむ。何度聞いてもいい猫獣人ロールですなぁ。


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― 新着の感想 ―
アリッサさん壊れちゃった。 これからも頑張れ
アリッサさん最初はお姉さんキャラで結構好きだったのに完全にキャラ変したな...まあ結構好きがむっちゃ好きに変わっただけですけども
[良い点] これけっこうすきなんだよね わかる、分かるぞユートうみゃーは至高よな [一言] がんばれがんばれがんばーれ
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