485話 恐竜素材の新装備
土霊の試練へと向かう最中、隊列などを話し合う。
「ユートは、それ新しい装備か?」
「そうだ。メッチャ強いぞ。土霊の試練の序盤なら俺たちだけでも問題ないくらいだ」
「恐竜の素材使ってるんだろ?」
「ああ。ルインの自信作だ」
実は、タゴサックたちに合流する前に、ルインの店で受け取ってきたのである。
ログイン直後。
俺は皆と合流する前にルインの店にやってきていた。
「どもー。装備できてる?」
「キキュー?」
俺がルインに声をかけると、肩の上のリックが真似してヨッて感じで手を挙げる。
「うむ、できておるぞ」
ルインが顔をピクピクさせながら対応してくれる。多分、リックの可愛さにニヤケそうになるのを堪えているのだろう。
ふふ、ルインはリックがお気に入りだってことは分かっているんだぜ? まあ、だからといって、何かある訳じゃないけどね。
「どれどれ」
「キキュ」
リックと一緒に、ルインが表示させたウィンドウを覗き込む。そこには、依頼していた杖、布防具、インナーの情報が映し出されていた。
まずは杖からだ。
「レア度6か! すごいな!」
「お前の持ち込んだ素材が良かったからな。上手く要望されていた能力も付与できたし、かなりの自信作だぞ」
映し出されているのは白地に、幾何学模様の青い線が幾つも走る神秘的な外見の杖だった。長さは俺の背より少し短いくらいで、先端はリング状になっている。
古代文明の遺跡の出土品的な雰囲気というのだろうか? メッチャかっこいい!
名称:ホーリーウッド・ロッド
レア度:6 品質:★7 耐久:580
効果:攻撃力+39、魔法力+99、水系魔術威力上昇(中)、水系魔術消費軽減(小)、樹系魔術威力上昇(中)、樹系魔術消費軽減(小)
装備条件:知力20、2次職以上
重量:4
「魔法力も100近く上昇するぞ。しかも、水魔術と樹魔術の威力上昇と消費軽減、どっちも付いてるのか!」
「そこは一番苦労したからな!」
魔法攻撃力が倍以上になったと言ってもいいだろう。驚きの性能だ。
恐竜素材や神聖樹の枝、それ以外にも俺の持つ素材を大量に渡していたのだが、その甲斐があったな。
重量は多少重くなったが、レベルが上がって腕力も少し増えている。問題ないだろう。
「いやー、これは他のも楽しみだな。次はローブだ」
「こっちもいいできだぞ。かなり素材を使っちまったがな」
「ほう? 期待しちゃうぞ」
「ふははは! しろしろ!」
名称:ダイナソウルの軽衣
レア度:6 品質:★9 耐久:590
効果:防御力+128、魔法耐性(小)、状態異常耐性(小)、吹き飛ばし耐性(小)、統率能力上昇(大)、スキル(ダイナソウル)付与
装備条件:腕力10以上、精神、知力20以上
重量:7
「うおー! これはスゲー!」
防御力+128? 前のローブの3倍近い数値なんですけど! しかも、効果もかなり高い。装備条件が厳しいけど、それもギリギリクリアできている。
統率能力上昇は、指揮系スキルや、味方への支援能力がアップするという効果だったはずだ。テイマーにとってはかなり有用な効果だろう。しかも大。これは有り難い。
ただ、初見の効果もあった。
「この、ダイナソウルってスキルは?」
スキル付与というのは、装備するだけでそのスキルが使用可能になるという意味だ。
ダイナソウル。恐竜の魂って意味だろうか?
「儂も初めて見た。恐竜素材を色々と使用したからだろう。恐竜全種類を使った防具など、そうそうないからなぁ。ああ、効果は分かっておるぞ?」
なんと、恐竜と戦う際に、ステータスと様々な耐性が上昇するというスキルであるらしい。今後、恐竜と戦うかどうかは分からないが、その際には大分有利になるだろう。
基本は白と青、黄色を基調とした、ややゆったり目のシルエットの服だ。そう、ローブではない。上半身はパーカータイプで、下半身は少しダボッとしたズボンである。
所々に銀色のアクセントが付いていて、それがお洒落だ。
今まで以上にカジュアルだが、非常に動きやすくなったと言えよう。むしろ、俺にはこっちの方が着易い。
「ああ、それとスキンを変更できるが、どうする?」
「スキン?」
「おう。お気に入りの装備があれば、装備の外見をそれに変更できるんだ。各装備品につき、1度までは無料で行える」
「その後、スキンを変更したくなったら?」
「課金案件だな。1つ500円だったかな?」
「あー、そういう感じか」
運営め、やりよるな。ただ、スキンの変更は喜ぶ人もいるだろう。
性能優先で、ちぐはぐな外見のプレイヤーも結構いるのだ。
最初から生産職に頼んで作ってもらった装備なら、外見を色々といじることが可能だ。ただ、ドロップ品やダンジョンの宝箱からゲットしたアイテムではそうもいかなかったのである。
それが、スキンを被せるだけで能力を下げずに外見変更できるなら、使いたい人は多いだろう。
「まあ、今はいいや。そのうち頼むかもしれないけど」
「おう。ああ、ただ最初からスキンとして作られた物は、変更できんから気を付けろ」
「どういうことだ?」
「お前さんのとこのマスコットたちが着てた浴衣とかだよ。あれは装備品扱いじゃないから、スキンの変更はできん」
「そういうことか」
そもそもスキン扱いだから、そこにさらにスキンを被せることはできないってことなんだろう。
「さて、お次はインナーだな。上下一体化タイプか」
「セット装備みたいなもんだ」
シャツと短パンのセットで、装備時は両方身に着けなくてはならないらしい。
名称:恐竜インナー+
レア度:5 品質:★8 耐久:470
効果:防御力+49、移動阻害耐性(中)、咆哮耐性(中)
装備条件:体力10以上
重量:1
性能は申し分ない。外見は、緑を基調としたややゆったりめのシルエットである。刺繍なんかも入っていて、ちょっとお貴族様感があるような気もするね。
性能も数倍に上がった。今までは、初期の頃に買ったインナーを装備していたから、能力が上昇するのは当然だけど。
恐竜素材様様である。
「それに加えて、こいつはサービスだ。大した性能じゃないが、今よりはマシだろ?」
名称:ダイナブーツ
レア度:5 品質:★6 耐久:420
効果:防御力+10、歩行補助(小)、水耐性(小)、熱耐性(小)
装備条件:体力10以上
重量:1
「いいのか? 凄い強いけど!」
「端材で作った間に合わせだ。持ってけ」
「サンキュー!」
ルインが渡してくれたのは、黒いブーツだ。一級品とは言えないかもしれないが、確かに俺にはこれくらいでちょうどいい。
「うんうん。俺の装備は文句なしだ。他のはどうなってる?」
「リックのとクママの装備ももちろん仕上がっているぞ。ほれ」
「ほほう」
「キキュー」
名称:牙鱗のスカーフ
レア度:5 品質:★7 耐久:470
効果:防御力+41、麻痺耐性(大)、恐怖耐性(大)、振動耐性(中)
重量:2
名称:投擲強化の腕輪+
レア度:5 品質:★6 耐久:430
効果:防御力+39、投擲強化(中)
重量:2
「リックの装備……外見は今まで通りで、性能だけ爆上がりだな!」
「キュー! キュッキュー!」
「お、嬉しいか?」
「キキュー!」
「うおおぉぁぁぁぉ? なんじゃリック! ふははっは! くすぐったいぞ! ちょ、髭が乱れるぅ!」
「キュキュキュー!」
今までの装備から大幅に強化されたことで、リックの喜びが爆発したらしい。
ルインに突進して、顔に自分の顔を擦りつけまくっている。
リックめ、どさくさに紛れて髭をモフモフしているな。まあ、ルインも困っているようで喜んでいるはずだから、Win-Winの関係だ。放置でいいだろう。
「で、こっちがクママね」
名称:逆鱗のポンチョ
レア度:5 品質:★5 耐久:410
効果:防御力+68、状態異常耐性(小)、吹き飛ばし耐性(中)
装備条件:腕力、体力20以上
重量:8
名称:魔耐性のベスト
レア度:6 品質:★5 耐久:530
効果:防御力+47、魔法耐性(中)
装備条件:知力7以上
重量:4
名称:琥珀のペンダント
レア度:6 品質:★5 耐久:540
効果:防御力+28、スキル威力上昇(小)
装備条件:精神10以上
重量:3
緑色のレインコート風ポンチョに、青のベスト。琥珀の埋め込まれたペンダントの3点セットだ。
以前のポンチョは可愛かったから、そのまま引き継ぎでうれしいね。多分、ルインも同じ気持ちだったのだろう。
「改めて、ペルカのスカーフと肩掛け鞄も頼めるか?」
「お、おう?」
「リック、いい加減離れろ。話ができん」
「キュー」
リックの襟首を持ち上げて、ルインから引き離す。途中から完全にルインで遊んでやがったな。
「で、ペルカの装備なんだが」
「任せておけ。支払い的にはまだ儂の方が得してるから、ペンギンの装備作ってトントンくらいだろうよ」
ペルカの分の装備はまだ頼んでいなかった。進化するかもしれなかったからね。サイズが変わったら、装備できなくなる可能性もあったのだ。
まあ、進化しなかったけど。
ルインへの支払いは、渡した素材で余った分をそのまま譲渡する形になっている。かなりのどんぶり勘定だが、そこはルインを信頼しているし、文句はない。
それに、これだけの装備を作ってもらったのだ。さらに金を請求されたとしても、文句を言わずに払っていただろう。
「じゃあ、いくよ。ありがとな」
「キキュー!」
「またこいよ!」
ルインの目が完全にリックしか見ていない気がするけど……。まあ、いいか。
「という感じで、ルイン特製の装備にバージョンアップしたからな! 今までの貧弱な俺たちじゃないんだぜ?」
「キキュ!」
「クマー!」
「それは有り難い。ボス戦の戦力に少し不安があったから、頼りにさせてもらうぜ?」




