477話 レッドタウン
「さて、静電石も毒電石も手に入ったし、他の鉱石も大漁だな」
「ヒム!」
ヒムカの仕事が捗りそうだ。
それに、みんなのレベルも上がっている。
「うーん。ペルカは進化しないな」
今は送還してしまったのでパーティにはいないが、ペルカもレベルアップしていた。現在は27レベルである。
25レベルで進化するかと期待していたんだが、変化がなかった。
その後、26でも27でも反応無しだ。まあ、25で進化しなかった時点で、だろうとは思っていたけどさ。
30で進化するかもしれないが、望みは薄い気がする。
25で進化しなかった時点で少し調べてみたんだが、大抵のモンスは20レベルか25レベルで進化するらしい。
進化しない場合、それはすでに進化後の種族であることが多いそうだ。
特殊な卵から生まれたり、報酬でゲットした個体は、進化種族でありながらレベル1という場合があるらしい。
ペルカもそのタイプの可能性が高い。最初から二次種族だったのだ。
となると、進化は50レベルかね? まあ、先は長そうだ。
うちのモンスたちの中で次に進化するとしたら、今21レベルのリリスかな?
「とりあえずセーフティーゾーンに向かおう」
「キキュ」
「クマー」
そうして歩き出すと、メールの着信音があった。
「運営メールだ。なになに?」
アップデートのお知らせ? 修正と追加か。まあ、いつも通りなんだが、今回は俺にも関係ありそうだな。
各職業に色々な修正が入るのと、一部スキルにも修正があるようだ。
「テイマーの場合は……うーん? 下方修正が入ったか」
従魔の宝珠の弱体化――というか、使用制限と言った方がいいかな?
装備可能な従魔の宝珠は最大で12個までとなるらしい。
モンス自身の戦闘力はプレイヤーに劣るとはいえ、入れ替えれば瞬時にHP、MPを回復できるようなものだったからね。
ただ、最近はプレイヤーの回復アイテムも充実してきて、従魔の宝珠優遇と言われるほど有利ではなくなってきたと思うんだけどな……。
プレイヤーが死ねば即全滅っていうデメリットもあるしさ。
「ま、俺には今のところ影響薄いし、いいか」
オンラインゲームで、職業関係に修正が入るのは当たり前だしね。いちいち文句言ってたらキリがないのだ。
時には、強ジョブと言われていた職業にあり得ない修正が入って、最弱ジョブに転落なんてことも珍しくはない。それに比べたらこの程度の修正、可愛いもんだろう。
見てみれば、他の職業にも色々な修正が入っているし。
「で、スキルでチェックしておいたほうがよさそうなのは……察知系スキルの修正かな?」
敵の持つ察知系、隠密系スキルが弱体化されたっぽい。一方的に奇襲されるような状況が減るようだ。
あとは、一部スキルの吹き飛ばし効果の弱体化とか、火炎系のエフェクトの調整とか、俺には関係なさそうな修正ばかりだった。
それから10分後。
「ようやく町に着いたか……! いやー、マジでビビったな」
「モグー」
「フムー」
ボス戦後、第9エリアに足を踏み入れた俺たちなんだが、思ったよりも町までの道のりが長かった。そのせいで、何度か雑魚敵にエンカウントしてしまったのだ。
火炎獣という、物理攻撃のほとんど効かない敵が特に強く、折角ボスを倒したのに死に戻りしてしまうところだった。
ドリモなんて2回も全身炎上して、マジでヤバい絵面だったね。
ボス戦で水魔術が50レベルに達したことで覚えた新魔術、アクアカノンがなければ俺たちも危なかっただろう。
水が弱点の敵に、単体への大ダメージ水魔術である。そりゃあもう、気持ちがいいくらいの効果であった。マナポーションを使い切ったけどね。
「見えた! 町だ!」
「ヒム!」
「フマ!」
初の第9エリアだ。きっと、色々と面白い物が売っているに違いない。レッドタウンという名前の通り、門からして赤かった。
まるで、扉の付いた巨大な鳥居のようにも見える。
ワクワクしながら皆で入り口の門をくぐると、そこには今まで見たことがない光景が広がっていた。
「ほほー、純和風の町は初めてだな!」
「ヒム!」
「転移陣を登録したら、町をぶらついてみるかな」
入り口が鳥居に似ていると思ったが、似ているというかそのものだったらしい。まるで江戸時代のような街並みが広がっていた。
違うのは色合いだろう。柱や窓枠、暖簾などに真紅の塗料が塗られ、それ以外の場所も赤系統の色を基調としている。壁が白い分、それ以外の部分の赤色が非常に映えていた。
街路樹の葉まで赤いのだ。赤く色付いた楓や紅葉が街を彩っている。
町中を歩いている人々も、和風の服を着ていた。ちゃんとした着物というよりは、甚平や作務衣、浴衣などである。振袖の人もいるかな?
その中に西洋風の鎧やローブを着込んだプレイヤーがいるせいで、違和感が凄い。いや、俺もその違和感の一員なんだけどさ。
ホームで着る用のも併せて、何着か和装を持っていてもいいかもしれない。甚平を着て、縁側で一杯……悪くないね!
「アイネの織った布もあるし、それで作ってもらうのもありか」
「フマー!」
「よし、それじゃあ、和服を売ってそうな店を探すぞ!」
「フーマー!」