452話 海賊船長救出
俺を中心とした――そう、何故か俺が中心にいるプレイヤー集団は、白スケルトンと連携しながら、悪魔のいる岩山に向かって進んでいった。
アンモライトを使うのが俺だから、どうしても先頭にいなくちゃならないし、何となく俺が率いているみたいになっちゃってるんだよね。
「とりゃぁ!」
「キキュ!」
俺とリックでアンモライトを投げ付けながら、黒スケルトンを排除していく。
その威力は絶大で、アンモライトの放つ光に僅かでも触れれば、黒スケルトンは消滅してしまう。
光の届く範囲は直径5メートルほどなので、上手く使えば1発で10体以上の黒スケルトンを排除することが可能であった。
「よーし! もうすぐ岩山だぞ!」
「海賊船長がいたニャー!」
「よーし、救出だ!」
「分かったニャー!」
岩山の麓で黒スケルトン相手に孤軍奮闘していた海賊船長の姿が見えた。俺たち側にいてくれて助かった。岩山の反対側とかにいたら、陣形をさらに崩さないといけなかったのだ。
近づいても、こちらに攻撃してくる様子はない。むしろ、うちのモンスたちと連携して戦い始めた。
「結構ダメージを食らってるニャ!」
「回復させちゃうか?」
赤星とオイレンの男子高校生(推定)コンビが相談しているが、それって大丈夫なのか?
「な、なあ。スケルトンって、回復できんのか? ゲームによっちゃ、回復でダメージ食らうと思うんだけど」
「このゲームならば大丈夫です。ダメージは入りません。ただ、回復しませんが」
エリンギの言葉通りであった。オイレンのウンディーネが回復させようとするが、海賊船長のHPバーはうんともすんとも言わない。
「ネクロマンサーなら回復可能か?」
「うーん、どうでしょう。イベントのモンスターですから……」
「ともかく、ネクロマンサーがいるなら――」
「呼びましたぁ?」
「うぉわぁ!」
だから毎回距離感がおかしいんだよ! わざとやってるんじゃないだろうな? しかも、連れているアンデッドが前よりも怖くなってるし!
「ク、クリス。いたのか」
「海賊船長さんはぜひスクショしておかなきゃと思って、頑張ってここまで来たんです!」
「あー、そういうこと」
ウサミミ僕っ子ネクロマンサーのクリスは、アンデッド大好きっ子だ。特殊なスケルトンなんて、絶対に興味があるだろう。
「しかも、従魔の姿が変わってる?」
「そうなんですよ! 恐竜の骨とか肉で、強化したんです!」
イベント中に1度遭遇したときはオーガスケルトンとグールを連れていたが、今はオーガスケルトン改にグールリッパー。あとはゴーストと劣竜牙兵、ゴブリンマジシャンゾンビとなっていた。
「オーガスケルトンの牙と、グールリッパーの爪が、恐竜素材なのか?」
「それだけじゃないですよ。恐竜のお肉を使うだけで、筋力もアップしてます! 前よりもずっとずっと強くなったんですから!」
クリスはそう言ってうれしそうに笑う。彼にとって、実りの多いイベントであったらしい。
「白銀さん。今は……」
「あ、済まんエリンギ」
思わず雑談をしてしまった。それよりも、今は重要なことがあったな。
「クリス。この海賊船長を回復できないか?」
「ちょっと待ってください。ネクロヒール――うーん、ダメですねぇ。船長さんは対象に指定できません」
「イベント仕様で、ダメージは回復できないってことね」
となると、より海賊船長を護ることが重要になってきそうだ。
「任せてください! 船長さんは僕が守りますから!」
「そ、そうか? じゃあ、頼む」
「はい! 他のみんなも、船長さんを一緒に守りましょうね!」
「「「うおおお!」」」
クリスに声を掛けられたプレイヤーたちが、一斉に咆哮のような唸り声を上げた。美少女にお願いされて、興奮したのか?
いや、女性も同じ様に興奮しているか? 僕っ子属性だから? ということは、男たちもクリスが女の子じゃないって分かってる?
ま、まあ、その分協力してくれるならそれでいいか。
「船長さんはクリスたちに任せて、俺たちはビフロンスを攻撃しよう」
「そうですね。ですが、どうやって攻撃しますか? 相手は岩山の上空に浮いている状態ですが」
「え? た、確かに……」
とりあえず近づこうと思ってたから、そこまで考えてなかった!
ビフロンスは岩山からさらに10メートほど高い位置に浮いている。前衛じゃ、あれに攻撃できないよな……?
「と、届く奴らで攻撃しよう。ここまで近づけば、魔術や弓なら当たるだろ? それと、アンモライトも投げれば届くんじゃないか?」
「そうですね。よし! 後衛は攻撃! 前衛はアンモライトを投げるんだ!」
「「「おお!」」」
皆から悪魔に向かって一斉に攻撃が飛ぶ。魔術に矢。投石やボーラのような物まで見えた。アンモライトも十数個飛んで行ったかな?
『ぐごおおおぉぉ!』
よしよし、効いているな。さっきと同じようなうめき声が聞こえ、黒スケルトンたちの動きが止まった。
遠距離攻撃に参加していなかった人たちが、そこに攻撃を加えて排除していく。
「一斉にアンモライトを使うのは勿体ないかもしれませんね」
「確かにな。タイミングをずらして使い続ければ、嵌められるかもしれない」
「ですね」
ということで、俺たちはアンモライトで悪魔ビフロンスと黒スケルトンの動きを封じつつ、攻撃を加えていった。
飛行系の従魔たちにタコ殴りにされ、遠距離攻撃が次々と直撃し、ビフロンスのHPバーがグングンと減っていくのが見えた。
ただ、このまま最後までうまくいくことはあり得ない。俺たちにもそれは分かっている。
『ぬああああ! 許さぬ! 許さぬぞぉぉぉ!』
HPが2割ほど減ったところで、ビフロンスがしわがれた声で怒り始めていた。