445話 アメリアと狩り
「アメリア! 任せた!」
「オッケー! ウィンドカッター!」
「クケェェ!」
アメリアとの合同プテラ狩りは非常にうまくいっていた。
今も、俺たちが叩き落としたイベントプテラに、アメリアが止めを刺している。これで10匹目だ。
そもそも、プテラそのものは非常に弱い。ステータスだけ見れば、この古代の島で最弱の存在だろう。
翼竜なので空を飛んでいるが、俺の魔術でも1発当てれば落下してくるし、地上に引きずり落とせばノーダメージで狩ることが可能だ。
それでもプテラ狩りが難しいと言われる所以は、足場の狭い崖で戦わねばならないからだろう。
攻撃しづらいし、向こうの攻撃は避けづらい。そして、攻撃を食らってしまうと崖から落下し、大ダメージを食らってしまう。
ただ、俺とアメリアにとっては、全く問題がなかった。まあ、俺というか、アメリアのおかげだけど。
「いやー、ノームが4体もいるからどうなることかと思ったが、協力するとこんなことまでできるんだな」
「凄いっしょ! さすがノーム!」
アメリアの従魔のノームたちが協力し合うことで、非常に大きな足場を作り出すことができたのだ。10畳くらいはあるだろう。
そのお陰でプテラ相手に余裕を持って戦うことができていた。
攻撃面では、ウサギたちが大活躍だ。凄まじい速度で宙を跳び回り、プテラを蹴りであっさりと叩き落とす。
俺たちが仕留めやすいように、足場の上に落とすだけの余裕があるようだった。
ウサギって、実は凄い武闘派だったんだな。あの蹴りだけは絶対に食らいたくないぜ。
「というか、アメリアのウサギたち、明らかに宙を走ってるよな?」
「うん。足場っていうスキルを使うと、空中に見えない足場を一瞬だけ作れるんだって」
「なるほど、見えない足場か」
どう見ても、空中を縦横無尽に駆け巡っている。あれがウサギのデフォルトだとすると、敵としてウサギが登場した時に勝てるとは思えんのだけど……。
アメリアのウサギたちが特別だといいな。
「っていうか、白銀さんとこのリックちゃんも凄いじゃん。あの木の実のブワーッていう奴!」
「あれには俺も驚いたよ。新技なんだ」
「へー、そうなんだ」
アメリアが両手を広げて「ブワーッ」と言っているのは、リックの木実弾のことだ。しかし、今までの木実弾とは効果が違っていた。
今まではダメージを与えるだけだった青どんぐり弾が、敵に当たった直後に破裂し、追加で多段ダメージが発生するようになったのだ。
ダメージは低いが範囲攻撃でもあり、かなり強化されていた。
どうやら樹呪術の効果であるらしい。長ったらしい儀式が必要だと聞いていたが、所持しているだけでも効果が出る場合があるようだ。
「キキュー!」
「おお! やった!」
今もリックが投げた青どんぐり弾が空を飛び回るプテラに直撃し、叩き落としたところであった。
ただ、ウサギさんたちみたく落とす方向を調整したりは難しいので、普通に崖の下に落ちていってしまったが。
「リック、ファウ、アイネ、止めを頼んだ」
「キュ!」
「ヤー!」
「フマ!」
ファウの火魔召喚と、リックの超前歯撃があれば、止めを刺すのは難しくない。リックを背に乗せたアイネと、ファウが崖の下に飛んで行った。
リックが一気に強化されたな。毎回思うけど、進化はやっぱりすごいわ。眼下を見ると、小さいリックが2メートルオーバーのプテラの首に噛みついて、倒しているのが見える。
リアルだったら衝撃映像だろう。ゲームで良かった。
さらにプテラを狩ること5匹。
「やった! レアドロップ!」
「じゃあ、素材も十分集まったか?」
「うん。白銀さんは1匹倒すだけで良かったのに、わざわざ付き合ってくれてありがとう」
「こっちこそ、プテラの素材が集まって助かった。軽いし、これなら俺でも使えそうだ」
とは言え、アメリアとの共闘はこれで終わりではない。プテラのレアドロップが必要数集まるまで付き合う代わりに、プレシオ、トリケラ狩りを手伝ってもらうことになっているのだ。
俺としては得しかない提案だったから、ぜひにと頷いておいた。まあ、アメリアとしては、できるだけ長くオルトと一緒にいたかっただけだろうがな。
「じゃ、このままトリケラ探しに行こうか?」
「そうだな。トリケラ、プレシオの順番に行けば、道順的に無駄もないし」
「だね!」
アメリアのノームたちは、道中でも大活躍だった。
どんな敵が来ても完璧な壁役を務めるだけではなく、土魔術での足止めや、簡単な陣地構築。さらにそれぞれの進化先によって、色々な能力を発揮したのだ。
「イベントトリケラが雑魚扱いだったな。あんな戦い方があるとは」
「トリケラは突進力は凄いけど、後ろに進むのは下手だから! それに、うちのノームたちは優秀だから!」
アメリアがドヤ顔するのも無理はない。トリケラの前と左右を壁で覆って動きを封じ、後方から攻撃をし続けるという方法を使い、無傷で完勝してしまったのである。
オルトも土魔術で壁を作ったりできるが、ノームが揃って協力すると速さも規模も段違いだった。分担することで、大きな構築物もすぐに作り上げることができるのだ。
相手が群れであっても、即席陣地を利用することであっさりと狩れてしまった。ステゴやパキケファロも相手にならない。ティラノからだけは逃げたけどね。
さすがに足手まといを連れて戦うのは無理だということだった。すっげーオブラートに包んで、戦力に不安があるって言い方をしてくれたけどさ。足引っ張ってすまん。
「砂浜に戻ってきたな」
「頼りにしてるよ! うちの面子は、水には相性悪いから」
土の精霊4体に、ウサギ2匹だもんな。
「ここまではアメリアに助けられてばかりだったが、プレシオ狩りは俺に任せてくれ。プレシオの倒し方も知ってる!」
「おー! さすが白銀さん!」
まあ、全部、3人娘に教えてもらった情報だけどね! それ用のアイテムまでもらっちゃったし。