439話 イベントスピノ撃破
HPが30%を切り、狂暴化したスピノは凄まじく強かった。
いや、当たり前なんだけどさ、その前の地雷ハメが上手くいきすぎてて、ちょっとだけ舐めてました。
噛み付きに爪に尻尾攻撃。口から吐き出す水弾と、攻撃も多彩である。
「グギャオオォォォォ!」
「ムムー!」
「オルトちゃん! 頑張って! とりゃああぁぁ!」
「モグモー!」
攻撃を食らう度に、うちのモンスたちが大ダメージを食らってしまう。クルミが5、6発耐えた後に、オルト、ドリモ、ヒムカが順番に2発ずつ受け、その間にクルミを回復する。
そんな風に、盾役が入れ代わり立ち代わりで攻撃を防ぎ続けることで、前線を維持することができていた。
「フマ~マ~」
「ラランララ~♪」
アイネとファウのバフも大活躍である。彼女たちの防御アップバフがなければ、もっとダメージ量が増えて回復が追い付かなくなっているはずなのだ。
それでもルフレだけでは皆の回復が追い付かず、俺もオルトたちの回復にかかりっきりだった。本当にギリギリの戦いだ。
しかし、しばらくするとそのローテーションが崩れ始める。
「ギャアアアオオォォォォ!」
「うぎゃ!」
スピノに新しく加わった、水を纏った爪の攻撃で、クルミがノックバックさせられたのだ。スピノのHPが残り2割を下回ったことで、さらに狂暴になったらしい。
慌てて回復を開始するが、追いつかない。しかも、攻撃頻度がアップしやがった。その分防御力も下がったが、そこに付け入ることができるほどの余裕がない。
「グギャァァ!」
「ヒムー!」
「ヒムカ! 下がれ!」
瀕死状態に陥ったドリモ、オルトをサクラ、クママにチェンジし、ギリギリ戦線を維持している状態だ。
それでも、リキューやフィルマの攻撃でイベントスピノを削っていく。誰も諦めていないのが救いだろう。
HPが1割以下になると、さらに行動パターンが変化した。地雷でダメージを与えまくっていたヒムカがターゲットになり、狙われてしまったのだ。
ヒムカに下がるように言ったのだが、スピノは執念深かった。しかも、凄まじく速い。
なんと、沼地の水の中を泳いで移動することで、超高速で動き回り始めたのだ。水面から出る巨大な背ビレが水をかき分けながら、逃げるヒムカを追っていく。
大慌てで逃げるヒムカだが、その背にイベントスピノの水弾が直撃した。つんのめるように湿地に倒れ込むヒムカ。
「ヒム……」
「や、やばい!」
弱点ダメージだったせいで、ヒムカは一発で瀕死状態だ。朦朧も入ったようで、立ち上がることもできない。
「そ、そうだ! ヒムカ送還! 召喚、リック!」
俺は大慌てでヒムカを送還すると、リックを呼び出した。スピノの目の前にいたヒムカが姿を消し、俺の目の前にリックが現れる。
「ギャオオゥ?」
ターゲットが消えてしまい、スピノが動きを止めてしまう。AIでも困惑することがあるらしいな。
「ルフレも魔力が尽きたか……。ここからは攻撃重視でいくしかないな。ルフレ送還! 召喚ペルカ!」
「ペペーン!」
「よーし! 私も頑張っちゃうよ!」
「私も!」
「くくく……囮役は任せて」
リキューが宣言した通り、ヒムカの次のターゲットはリキューであった。彼女も地雷ダメージでヘイトを稼いでいたからな。
ただ、ヒムカの場合はカウンター能力である逆襲者の挑発効果もあり、ヘイトを稼ぎまくってしまっていたのだ。そのせいで、リキューよりも先に狙われたのだろう。
「クママとサクラはリキューの護衛! リックとペルカは攻撃しまくれ!」
「クックマ!」
「――!」
5分後。
「今だ!」
「たあああぁぁ! 打ち壊しクラッシャー!」
「ギャァァァ……」
五倍ほどに巨大化したハンマーを振り下ろすという、クルミのド派手なアーツがスピノの鼻っ面に炸裂する。
それがトドメとなり、スピノの巨体がポリゴンとなって消えて行った。俺の樹木魔術が軽く足止めになったおかげだし、3人娘に寄生しっぱなしとはならずに済んだだろう。
「ふぅ。何とか勝てたか……」
途中、スピノがランダムで放つ水弾を食らった時は、本当に危険だったけどね。リキューのフラグ発言が現実になってしまうのかと、マジで焦ったのだ。
「やった! やったね白銀さん!」
「くくく……ナイスファイト」
「ペルカちゃんも頑張ったね!」
「ペペーン」
ペルカはフィルマに高い高いされて、文字通り持ち上げられている。フィルマもペルカも楽しそうで、Win-Winの関係だ。
「ファウとアイネは、サポート途切れさせずによく頑張ってくれたな」
「フマー!」
「ヤヤー!」
俺がアイネたちを褒めていると、クママとリックも近寄ってきた。どちらの顔にも「俺たちも頑張りましたけど?」的な表情が浮かんでいた。
「お前たちも、途中で呼び出されてもパニックにならず、よく頑張ってくれたな!」
「クマ!」
「キュ!」
クママと、その頭上で喜ぶリックの獣コンビ。リックめ、湿地で濡れるのが嫌でクママを足代わりにしておるな。
「勿論、サクラもだぞ」
「――♪」
しかし、なんだかんだ言ってボス恐竜を全種類倒してしまった。
「さて、報酬の確認をしますか」