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434話 大物過ぎる!

 もう少しで釣り上げられそうだった怪魚が、目の前でイベントモサに食べられてしまった。しかも、問題はそれだけではない。


「やべっ! 竿持ってかれる!」


 釣り糸の先にいた怪魚をモサが食ったということは、つまりモサに俺の釣り糸が咥えられているということだ。


「て、手放した方がいいか……?」


 引きずり込まれたらヤバい! だが、万が一モサが口を開けたら、まだ怪魚を回収できる可能性はあるかもしれんし……どうしよう!


「グオォォ……!」

「あれ? 意外と引きが弱い……?」


 悩んでいる内に、何やらモサの動きが鈍り始めた。その場から動かず、全身を震わせている。


 痙攣しているようにも見えるが、一体何が起きているんだ?


 身構えつつ首を傾げていたら、イベントモサがいきなり動いた。同時に、俺の体も上に向かって大きく引っ張られる。


「うおぉぉっ?」

「――!」

「ムム!」


 なんと、モサが水中から一気に跳躍したのだ。それも、俺たちの方へと向かって。


 だが、俺たちが踏みつぶされるようなことはなかった。その跳躍力は凄まじく、俺たちの頭上を越えて、後方へと落下したのである。


 結果、俺は斜め後ろへと引っ張られることになり、思い切り後頭部を強打していた。リアルだったらヤバいことになっていただろう。


 ちょっとダメージが入っているし。


「うごぉぉ……何が、どうなってるんだよ!」

「グオオォ……」


 混乱しつつもなんとか起き上がると、目の前にイベントモサの巨体があった。仰向けに寝っ転がり、苦し気に呻いている。


 もしかして、怪魚を食うとこうなるのか?


「デカイのを狙ってたのは確かだけどさ! 大物過ぎる!」

「ムー」

「でもこれ、攻撃のチャンスなんだけど……。ど、どうしよう」


 俺が悩んでいたら、すでにドリモとサクラが動き出していた。


「モグモー!」

「――!」


 ええ? 攻撃命令を出していないぞ? もしかしてイベントモサを地上に引きずり出したことで、戦闘開始扱いになっているのか?


 俺が止める間もなく、ドリモのツルハシとサクラの樹魔術が炸裂した。思ったよりも効いている。腹が弱点なのだろう。白くて柔らかそうだしな。


 弱所看破を使ってみる。まあ、効かないけど。何度も使うと、やはり腹部が急所であると分かった。


 そうこうしている内に、対岸にいたプレイヤーたちがやってきたな。


「白銀さん! 無事っすか?」

「サッキュン! すまん! 勝手に攻撃してしまった!」

「いえいえ! むしろこっちこそすんません。どうも、HPが3割以下で行動パターンが変わるみたいなんすよ……」


 だから急にこっちに現れたのか。


「しかし、さすが白銀さん! どうやってこいつを地上に? なんか奥の手的な?」

「あー、後で教えるから、とりあえず攻撃したらどうだ?」

「それもそうっすね!」


 ということで、プレイヤーたちによる総攻撃が始まった。やはり腹部が弱点らしく、凄まじい勢いでイベントモサのHPが減っていく。


 しかし、モサもただやられ続ける訳がなかった。地上で的になること十数秒。多分、俺が釣り上げて1分が経過した時だろう。


 背筋を使って思い切りその体を跳ね上げると、うつ伏せ状態に戻ったのだ。さらに、その全身から電気のような物を放ってきた。


 かなり高威力なようで、数人のプレイヤーが死に戻りしている。しかも麻痺効果があるらしく、半数近くが戦闘不能に追い込まれてしまっていた。


 まずいぞ! このままだと前衛の人たちが全滅するかもしれん!


 しかし、俺の心配を余所に、イベントモサは倒れているプレイヤーたちには襲い掛からなかった。


「グルルルル……」

「え? 俺?」


 イベントモサの金色の爬虫類アイが、俺をしっかりと睨みつけているのが分かる。いや、俺はそんなにヘイトを溜めるような行動は……。


「白銀さんが釣り上げたからでしょ! ゲキ怒っすよ!」

「ああ! なるほど!」

「他にあいつのヘイト集めちゃう系の行動、何かしてません?」

「いや、うちの子たちがちょっと攻撃したけど、俺は攻撃してない! 弱所看破で急所を探っただけだ!」

「それそれ! あれ、アクティブモンスターに使うと、メッチャヘイト溜まるんすよ! 攻撃ほどじゃないけど、バフスキル使うのと同じくらいはヤバいって言われてんす!」

「マジか!」


 ユニークステゴ戦でも、妙に俺が狙われるなーと思ったが、まさか弱所看破のせいだったとは! このスキル、ソロテイマーには諸刃の剣過ぎないか?


「白銀さん! 俺の後ろに!」


 サッキュンが俺を庇う様に前に出た。そして、ゴーレムとカメを召喚し、壁とする。


 そこにイベントモサの突進攻撃が炸裂した。体を左右にくねらせ、驚くほどに素早く動く。


 だが、サッキュンはさすがだった。


「召喚! タマ!」

「ガオオオォォ!」

「そしてぇぇ! こいつを食らいやがれぇ!」


 召喚獣を弾き飛ばしたことで勢いが弱まったイベントモサに対し、奥の手である白虎を召喚してさらにその勢いを削いだ。最後は白く輝く右手をフックのように振り抜き、イベントモサの横っ面を思い切り殴り飛ばす。


「グギャァァァァ!」

「さ、さすがサッキュン!」


 やっぱ前線プレイヤーの戦闘力ハンパねー!


 モサの軌道が逸れ、そのまま近くにあった樹に衝突した。鼻っ面を勢いよく殴打したからか、モサの動きが止まっている。多分、朦朧状態になったのだろう。


 最後は全員の総攻撃で、何とかイベントモサのHPを削りきったのであった。


「なんか……。メッチャ疲れた……。釣りしてたはずなのに、いつの間にかボスと戦ってたし」

「ふっふー! さーっすが白銀さんすね!」


次回は25日更新予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] チャラ敬礼するモンス達……ドリモなんかは、結構渋く格好良くなりそうなイメージ。ちょい悪オヤジ風?w サクラの場合、ギャルっぽいのかな? むしろ茶目っ気のある今時な女子って感じだろうか? …
[良い点] さすしろ&サッキュン△ イベモサさん、モンハンのガノトトス+ヴォルガノス+ラギアクルスみたいな動作+戦闘パターンしますな。 [一言] 敵も排除したし、さあ怪魚釣り直そうか!
[良い点] サッキュン…口調以外は普通に有能なプレイヤーだよねぇ [気になる点] たまに異世界もので鑑定スキルを人物に使うの御法度的なやつかな? [一言] さーてなにが手にはいるのか……
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