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43話 探検と採取

緑桃伐採前、アシハナとリックを一旦入れ替える描写を追加しました。

 採取に出た俺たちは、西の森を順調に進んでいた。俺は木の実や草類。ソーヤ君、アシハナは木材をゲットしている。


 ただ、アシハナが求めているレア木材は見つからないみたいだな。ここまでで手に入った木材は、ビギニ杉という最低ランクの素材だけらしい。初心者がレベル上げに使う木材だ。俺が以前手に入れた杉の杖も、このビギニ杉から作った杖らしい。


 俺も雑草を探してはいるが、街中にも生えている利用価値のない本当の意味での雑草しかなかった。


 戦闘に関してはアシハナが瞬殺だ。敵が複数でも関係ない。さすが有名プレイヤーだな。おかげで素材は手に入るけど、完全に寄生プレイになっている。せめてアシハナが楽しめるようにとクママに犠牲になってもらっているが。済まぬ、クママ。


 あと、そのクママの戦闘力も確認してみたが、悪くない。戦闘時にはその可愛いヌイグルミハンドからシャキーンと爪が飛び出し、中々の攻撃力を発揮するのだ。足は速くないが、一撃が重い重戦士タイプである。


 更なる素材を求め、俺たちは西の森の中にある川までやって来た。相変わらず目新しい素材はないけど、水軽石や腐葉土はいくらあっても困らないからな。


 しばらく河原を探索していると、アシハナが急に足を止めた。


「あ、ヤバい。満腹度がもう20%切っちゃった」


 このゲームはHPや満腹度が一定以下になるとアラートが知らせてくれる。アシハナは満腹アラートが出たらしい。


「僕もそろそろ休憩したいですね。MPが怪しくなってきましたし」

「でも、この辺にセーフティーゾーンなんかないだろ?」


 セーフティーゾーンというのは、フィールド内に設置された、モンスターが侵入してこないエリアの事だ。山小屋だったり、神聖な木の根元だったり、色々な場所がある。そこなら安全に休んだりログアウトしたりできるらしい。HPやMPの自動回復量も増えるらしいし。


 逆にセーフティーゾーン以外の場所でログアウトするとアバターがその場に残り、モンスターに攻撃されてしまうのだ。そして、次回ログインすると死に戻りしているという訳である。


 食事するだけなら歩きながら携帯食で済ませられるが、休憩となるとその辺でとはいかない。


「ふっふっふ。これがあれば大丈夫よ!」

「何だ? ゴザ?」

「そうよ! 木工と細工、神聖魔術を駆使して作った私の自信作なんだから!」


名称:魔除けのゴザ

レア度:4 品質:★6

効果:30分間セーフティーゾーンを発生させる。使用回数:2/3


 すでにレア度4のアイテムを自作していることも驚きだが、この効果も凄いな。要はどこでも休憩、ログアウト可能ってことだろ?


「ささ、少しの間休憩しましょ」

「有り難いんだが、狭くないか? 6人パーティだったら全員は乗れないんじゃないかと思うけど?」


 俺の場合はモンスたちが小さいからな。リックに至っては俺の肩に乗ってればスペースを取らないし、クママはアシハナに抱っこされてるし。辛うじて皆で入ることは出来そうだった。


「だって、どこでもお昼寝できるようにって作ったからさ。私が寝っ転がれる大きさに作ったの」

「なるほど」

「でも、この倍くらいのサイズを作れば、皆欲しがるんじゃないですか?」

「嫌よ。こればっか作る羽目になって、遊べなくなっちゃうじゃない。レシピは早耳猫に売ったから、その内量産が始まるんじゃない?」

「欲が無い。いや、ある意味欲望に素直なのかね?」

「そんなのどうでもいいから早く休憩しましょ? 効果は30分しかないし」

「30分経ったらどうなるんだ?」

「使用回数が自動的に消費されて、30分延長されるわよ? でも、あと2回しか使えないから勿体ないでしょ?」


 という事で、俺たちはゴザの上に輪になって座り、各々が満腹度を回復させることになった。しかし、アシハナもソーヤ君も生産職なのに、食べるのは携帯食なのか。


 俺はクッキーを食べつつ、ティータイムだ。料理セットで湯を沸かし、ハーブティーを作る。一応気分を出すために、安物のティーポットも購入済みだ。特に効果が変わる訳ではないが、鍋からティーポットにハーブティーを移し、そこからティーカップにお茶を注いだ。うーん、大自然の中で飲むハーブティーも悪くないね。ハーブティーで満腹度は回復しないが、森でのティータイムは俺的には大満足だ。満腹度はクッキーで回復させればいいしね。


「ね、ねえ。それって自分で作ったの?」

「これか? ああ、全部自作だぞ」

「すごいですね! ジュースに、クッキー?」

「ハーブティーっていうのも初めて見たんだけど」


 アシハナとソーヤくんは俺がモンス達にあげている食べ物を驚きの表情で見ている。料理のスキルを取ってなければ、こんなものなのかもな。町で食料は売っているが、ゲーム内で食事を楽しもうと思わなければ、携帯食で十分なんだし。


「良ければどうだ?」

「やった! ちょうだい!」

「いいんですか?」

「ああ、感想も聞いてみたいしな」


 まずはハーブティーを淹れて渡してやる。こんなこともあろうかと、ティーカップは準備してあったのだ。まあ、4つセットの物を2つ買ったので、余っているだけだけどね。


「うーん。良い香りね」

「美味しいですね! この世界で水とポーション以外の飲み物、初めて飲んだかもしれません」

「じゃあ、こっちのクッキーも頂きます」

「うま! 何このクッキー! 超美味いんですけど!」

「本当ですね。凄く美味しいですよ」

「今まで損してたわ! 今後はもっとちゃんとした物食べることにする! 食事なんて、満腹度を回復させるためだけの物って割り切ってたわ」

「僕もですね。露店で色々売ってますし、無理してでも購入しよう」


 おお、ベタ褒めですな。


「ねえ、これ売ってないの?」

「うん? どういうことだ?」

「だから、このハーブティーとクッキー、どこかに卸したりしてないの? もしくは自分の露店で売ってたりは?」

「いや、量産してるわけじゃないからな」

「そう。残念ね……」


 俺は本気で残念がる2人を見て、嬉しくなってしまった。それだけ気に入ってくれたってことだからな。


「ハーブティーの茶葉なら分けてやれるけど」


 実は調子に乗って作りまくったのだ。それに元が雑草のハーブティーは売値も期待できないし、作った奴は全部インベントリに仕舞い込んである。作ろうと思えば直ぐに作れるし、気に入ってくれたなら分けても構わない。


「良いの? ぜひ!」

「貴重な物じゃないんですか?」

「いやいや、全然。今日は楽させてもらってるし、そのお礼だと思ってよ」

「ありがとうございます」

「ありがと!」


 その後、俺たちは和気あいあいとお茶を楽しみ、再び探索を開始した。



 30分後。


「見えたわ。緑桃の木よ」

「実は生ってませんね」

「ここまで来たんだし、せめて桃の木くらいは手に入れないとね」


 2人はそれぞれの伐採オノを緑桃に打ち込む。俺からはただ木に斧を叩きつけているようにしか見えないが、これで伐採できているらしい。まあ、木が消えたら他のプレイヤーが採取とかできなくなるしね。伐採を成功させると、一定時間が経過するまで伐採カーソルが消失するという仕様なんだとか。


「緑桃は木材としても使えるんだな」

「柔らかいから防具には使えないけど、杖なんかには使えるわよ。性能はさほどでもないけど、緑桃の木自体が少ないからね。プレイヤーにはそこそこの値段で売れるわ。ユートさんも採っておいたら?」

「いや、うちは伐採持ちがいないんだよ」

「伐採があれば便利よ?」

「木工持ちだったらそうだろうけど」

「モンスの中に木工持ちはいないんですか? いたら、その子のレベリングに使えますよ?」

「む、それはそうか」


 サクラは木工を持っている。確かに、木材を渡しておくだけで色々作ってもらえるのは嬉しいよな。サクラの経験値も溜まるだろうし。


「うーん。もう一種類魔術取って、あとはステに振るつもりだったんだけどな……伐採か」

「取る? とっちゃう?」

「取ってもいいんだけど、伐採用の斧が無い」

「ではこれをどうぞ」

「準備良いな!」


 ソーヤ君が取り出したのは、小振りなオノだった。


「これを進呈します」

「いや、ちゃんと対価を払うよ」

「いいですよ。耐久値は半減してるし、買っても400Gの初期アイテムですから」


 それでも対価無しに貰うのはな。ただでさえこの採取ツアーは俺たちが得してばかりなのに。お金を払えば――いや、そういえばソーヤ君が気に入りそうなアイテムがあったな。価値も同じくらいだし。


「じゃあ、俺からはこれを進呈するよ」

「これは――栞ですか!」


 おおう。思ったよりも食いつきが凄い。


「押し花の栞。凄いですね!」

「気に入ってもらえたなら良かった」

「ありがとうございます。栞があるってことは、本があるってことですからね! 魔導書の存在に繋がる手がかりかもしれません」

「そこまで凄い物じゃないと思うけど」

「これはどうしたんですか?」

「花屋で買ったんだよ」

「花屋? そんなのあったかな?」

「今度案内するかい?」

「ぜひ!」


 ただ、ソーヤ君は花屋に入れるかな? 植物知識が無いと入れないとすると、かなり面倒なんだよな。


 まあ、とりあえずパーティを組んで花屋に行ってみよう。一人でも条件を満たせてれば、入れる可能性もあるし。


 ダメだったらその時考えればいいか。ソーヤ君の情熱だったら、畑くらい買っちゃうかもしれないな。


「じゃあ、伐採を取得しよう」

「あ、待って。パーティ調整するから」

「?」

「緑桃は伐採レベル高くないといけないから。えーと、私をパーティに加えてくれる?」

「了解」


 アシハナをパーティに加える。すると、伐採スキルを獲得した直後、俺の目には緑桃の幹に採取ポイントが浮かび上がっていた。斧のマークが伐採ポイントであることを示しているんだろう。アシハナがパーティに加わったおかげで伐採ポイントが共有され、俺にも見えるようになったようだ。


 この森の中で唯一、緑桃の木だけは伐採ポイントを発見するのに高レベルの伐採が必要らしい。


 ソーヤ君と交換した伐採オノを木の幹に叩き込む。すると、緑桃の木が光に包まれ、伐採ポイントが消失した。


 インベントリを確認すると、木材・緑桃というアイテムが増えている。伐採レベルが低いせいか、品質は★1だけどな。


 俺が緑桃を伐採したらすぐにアシハナがパーティを抜けた。このまま戦闘になったら、俺たちの経験値が減ってしまうからだろう。律儀だね。そこまで気にしなくてもいいんだけど。


「サクラに木工を任せる訳だし、もっと木材が欲しいな。ここまでの道中でも伐採すればよかった」


 俺は他にも使える木が無いか探してみた。そして、一本の木を見つける。


 森中にある他の雑木と同じなのだが、伐採を取得したおかげで木材に使える物が判別できるようになったらしい。


「クヌギの木か」


 とりあえず伐採してみよう。緑桃と同じように伐採オノを振るうと、クヌギの木が光り輝き、木材・雑木・クヌギをゲットできていた。


 雑木だし、どうせ効果はないんだろうけど。スキルレベルを上げるにはちょうどいいかも。失敗しても勿体なくないしな。そうやってインベントリを確認していると、アシハナが目を見開いて驚きの声を上げていた。


「ねえ! 今なにしたの?」


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