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427話 三人娘の配信

「キュ?」

「どうしたリック?」


 亡霊岬の先端で少し休んでいたら、俺の左肩の上で寝ていたリックが体を起こした。耳を左右に動かし、周囲の音を聞いている。


「キュ!」


 リックの視線が、岬の入り口側を向いた。


 釣られてそちらを向くと、複数の人影がこちらに向かって走ってくるのが見える。そちらには薄く霧が出ているせいで、相手の姿は良く見えない。


「ア、アンデッドか?」


 ここは安全地帯だと思っていたが、そうじゃなかったのだろうか?


 緊張しながら待ち構えていると、複数の足音が聞こえてくる。しかし、俺たちはすぐに警戒を解いていた。


「ちょ、待って待って! 滑るから! フィルマ、速いから!」

「クルミ、腰に掴まらないで! きゃぁ!」

「くくく……楽しそうね」

「楽しくない! リキュー助けてよぉ!」

「またゾンビィ! クルミお願い! クルミってばぁ!」

「骨はいいけど腐ってるのは嫌ぁ!」

「くくく……なら私の爆弾で爆散……」

「「それは絶対ダメ!」」


 聞いたことのある声がしたのだ。クルミ、フィルマ、リキューの三人娘だろう。


 そのまま数十秒ほど待っていると。やはり見知った顔が霧の向こうから現れる。


「あっれー? 白銀さんだー!」

「え? 本当だ」

「くくく……白銀さんとエンカウント」


 赤いアフロに牛の角。背負った巨大ハンマーが目を引く、小柄な牛獣人のクルミ。


 魚のヒレのような耳を持った、青いショートヘアーの真面目系魚人。フィルマ。


 紫髪に和装。それでいてエキセントリックな笑い方が特徴的な爆弾魔のリキュー。


 相変わらず仲が良さそうな3人だ。


「もしかして沈没船か?」

「え? ということは白銀さんも?」

「おう。お前らもあの岩礁を見つけたのか?」

「あ、ちょーっと待った!」

「え? どうした?」


 俺が話を聞こうとすると、クルミが慌てた様子で俺の言葉を遮った。そして、何やら虚空に向かって喋り出す。


「えーっと、ちょっと知り合いに会ったんで、ここで配信止めまーす! 再開は10分後で! ごめんね!」


 配信? 生配信をしてたのか?


 首を捻っていたら、クルミが詳しく教えてくれた。


 なんでも、イベント中の配信順位によっては、イベトが僅かに貰えるらしく、彼女たちも上位を狙って配信をしていたらしい。


 リキューはかなり嫌がったそうだが、クルミの懇願に負けた形であるという。


 俺やモンスにはモザイクがかかったうえで、声も聞こえないようになっているらしいので安心だ。


「へぇー、そうなのか」

「なんで白銀さんが他人事なの! 今一番なのは、白銀さんだよ!」

「え? ああ、ブラキオ戦か!」

「そうそう。あれには勝てないと思うけど、上位に入ればそこそこ儲かるからね。頑張ってるんだよ」


 まだ情報が出回っていない沈没船の配信なら、上位が見込めるらしい。そこに、俺がすでにいたので焦ったのだろう。


「も、もしかして配信済み?」

「え? いや、してないしてない」

「そう、よかったー。配信し始めてすぐにやめることになるかと……」


 彼女たちは、この亡霊岬から配信し始めたそうだ。そして、配信の最後に、ここまでの道筋を語る計画であるらしい。なかなか考えているな。


「あー! ルフレちゃんにペルカちゃん!」

「フム?」

「ペン?」


 おっと、ルフレたちを見つけた海の生き物好きのフィルマが凄い反応だ。ルフレたちが目を白黒させている。


 だが、以前に遊んでもらったお姉さんだと思い出したようで、すぐに笑顔でフィルマに抱き付いていた。


 実は可愛いモノ好きのリキューも一緒になって、ワチャワチャしている。


 その間に、俺はクルミと情報交換だ。


「古代の島にはいってないのか?」

「行ったよ? うちはフィルマがいるから、海底ルートが楽勝だったもん」

「あー、それは確かに簡単に行きそうだ」


 ていうか、うちもルフレとペルカがいるから、そのルートでも良かったのかもな。その前に力技で突破してしまったが。


「ブラキオで死にかけたけど、なんとかレイドを組んで突破できたんだ」

「え? レイド?」

「どうも、人数で強さが変化するタイプのボスだったっぽいよ?」

「あ、そうなのか」

「KTKとかジークフリードがいなかったら、全滅してたかもね。ほら、白銀さんちのペルカ君やアイネちゃんみたいに、KTKがブラキオの頭に張り付いてさ」

「あれを生身でやったのか? すごいなKTK。さすがだぜ」

「他にもトッププレイヤーが勢ぞろいだったよ。あとは白銀さんがいれば完璧?」

「ははは。そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺みたいなエンジョイ勢がそんな凄い戦闘に交ざれるわけがないだろ」

「えー? いけるとおもうけど?」

「むりむり」


 さらに、彼女からはメチャクチャ貴重な情報を教えてもらってしまった。まず一つ目が、俺のまだ埋めていない図鑑の情報だ。


「あの岩山に、金色の山羊か」

「うん。あとは、この奇想天外っていう変な植物もそこだね」


 なんと、伝説の漁師に琥珀があると教えてもらった岩山。俺はすでに琥珀を所持していたためショートカットしてしまったが、そこにも図鑑用のレア動物が生息しているらしい。


 危ない危ない。ここで教えてもらってなかったら、完全にスルーしていたところだ。


 ただ、一番の爆弾情報は、恐竜についての情報だろう。なんと、古代の島のイベント恐竜たちには低確率でユニーク個体がおり、それを倒すと特殊なアイテムが手に入るらしい。


「恐竜飼育セット引換券、だと……?」

「うん。ホームオブジェクトなんだってさ」


 イベント終了時に、その引換券があれば報酬として入手できるらしい。俺はイベント引換券というアイテムを所持しているから、それで引き換えができるかもしれない。


 しかし、できない可能性もあった。確実に恐竜を手に入れたければ、やはりユニーク恐竜を狩るしか手はないだろう。


 代わりに、俺の持っている悪魔の情報などを教える。クルミは恐竜飼育セットの情報よりも凄い情報だと驚いてくれたが、これは寧ろ広めたい情報なんだよな。


「悪魔にアンモライト……」

「そうなんだけど、どう思う?」

「やばくない? 多分、白銀さんしか知らない情報だと思うけど」

「間違いないわ……くくく」

「だよな。これもっと広めないと、最終日に苦労すると思うんだ」


 そこで思いついた。この情報、クルミたちの生配信で流してもらえばいいんじゃね? 大勢のプレイヤーに広まるだろうし、クルミたちの生配信の視聴数がそれなりに延びる可能性もある。


 恐竜飼育セットの情報のお礼になると思うのだ。そのことを告げたら、むしろクルミたちが貰いすぎると言われたが、そこは広めてもらうのと相殺だと押し切っておいた。


「うーん……。そこまで言うなら、本当に配信しちゃうからね?」

「頼むよ」


 よしよし、これで最終日のイベントに間に合いそうだな!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 3人娘の登場と、他プレイヤーの進行状況が解った事。 こう、大勢のプレイヤーがわちゃわちゃしてる中で、 気が付けば一人で脇道に迷い込んで本筋に影響与えるユートが面白いもので。 リキューがし…
[良い点] 浮気だうみゃー!!
[気になる点] アリッサがケツの毛まで毟り取られる光景を密かに楽しみにしてたから時間差でしょんぼりしてるところ [一言] ユートくんへ正当な評価が回ってくれることを祈る
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