423話 沈没船前の準備
前話、予約に失敗して13:00投稿になっていました。
申し訳ありません。
岩場で釣りをしているお婆さんに、一番品質の低い琥珀を渡す。すると、お婆さんが琥珀の使い道を説明してくれた。
「この琥珀を使って、餌を作るのさ。巨大魚にとって琥珀は好物だが、デカブツの水恐竜にとっては嫌な臭いになるらしい。琥珀の品質で変化するが、最低でも5分はイベントモサを近寄らせないで釣りができる」
「たった5分ですか……」
「もっと長い時間効果が続く餌を作りたけりゃ、もっといい琥珀を使うんだね」
そう言いつつ、何やら小袋を渡してくれる。琥珀餌の素というアイテムだ。
「そいつは、古代の島に棲んでる巨大トンボと水から作るアイテムだ。それと琥珀を混ぜ合わせれば餌が作れる」
「おお! ありがとうございます!」
「うむ、がんばれよ」
「はい!」
古代の島の巨大トンボは、メガネウラのことだろう。だったら俺でも作れそうだ。試しに、メガネウラのドロップアイテムであるメガネウラの標本を砕き、水と混ぜ合わせてみる。
すると、琥珀餌の素が作れた。これで補充はどうにかなる。あとは品質だろう。
村に戻って、広場の隅で軽く実験してみたが、古代の島の池の水が一番相性が良さそうだ。品質がかなり高くなった。これに琥珀を砕いて調合すると、餌の完成である。
「琥珀餌か。古代の島に行く前にたくさん造っておこう」
ただ、その前に沈没船だ。岬の先に沈んでいるという情報だけしかないからね。
「村で聞き込みをしていくか。新情報が分かるかもしれんし」
そう思って沈没船に関しての情報を集めると、興味深い話が聞けた。どうやら、岬の先と言っても、陸上から近寄れるような場所ではないらしい。
船を借りて行った方がいいと言われた。となると、ルフレとペルカは連れてこないといけないだろう。
あのコンビ、船を引っ張る楽しさに目覚めてしまったらしいからな。連れて行かなかったとバレたら、絶対に拗ねるのだ。
ということで、俺は一度ホームに戻ることにした。
「ただいまー」
「フムー!」
「ペペーン!」
「はいはい」
飛び付いてくるとわかっていれば、受け止めることもできる。俺は駆け寄ってくるモンスたちをガシッと受け止めては、ワシャワシャ撫でまくった。その後は軽く左右へどいてもらう。
「クマー!」
「ちょま、クママは――」
「クマッ!」
「ぐえ!」
軽いルフレたちであればともかく、クママの突進はさすがに無理でした。タックルを食らったアメフト選手のように、背後に倒れ込む。
「モグ」
「サンキュードリモ」
ドリモまで突進してこなくて本当によかった。それどころか、俺を助け起こしてくれる。
早速、パーティ選びなんだが、これが結構難しい。まず、絶対に必要なのがルフレとペルカの水コンビだ。
「ペペン!」
「フムー!」
「で、絶対に連れて行けそうにないのが……」
「ヒム!」
自分で手を上げるのが、シティボーイヒムカくんである。沈没船なんて、水中だし汚いし、どんな生き物がいるかも分からんし、ヒムカにとっては最悪の場所だろう。
「だよな。ヒムカは留守番で」
「ヒムム!」
「あと、アイネも今回はお留守番かな」
「フ、フマ?」
「ちょ、そんなガーンって顔するなって! 罪悪感湧くだろ!」
だって、仕方ないじゃないか。沈没船なんてきっと狭いだろうし、その飛行能力をフルには活かせないと思うのだ。
「残りのメンバーは――」
「キキュー!」
「ヤー!」
俺が悩んでいたら何やらモンスたちが輪になりはじめた。どうした? 飽きたか?
だが、違っていた。
「ムームーム!」
オルトの掛け声で、皆が一斉に右手を前に突き出す。その姿は、完全にジャンケンをしているようにしか見えなかった。
覗き込むと、実際にジャンケンをしている。オルトやサクラはともかく、ドリモやリックも上手くジャンケンできていた。器用だ。
ただ、謎なのがクママである。そのポテッとしたヌイグルミハンドをただ突き出しているようにしか見えない。
グーなのか? だとすると、クママとオルトの勝ちだろう。2人だけグーで、他の奴らがチョキなのだ。
そう思ったが、どうやら違うらしい。
「ムム!」
「クマー!」
みんなが、悔し気に嘆いて、再びジャンケンをし始めたのだ。
となると、クママはパーだったということだ。
「うむ。分からん」
それでもモンス同士では分かっているらしい。数度あいこが続き、ついに決着がついた。
「ムムー!」
オルトが両手で頭を抱え、「オーマイガッ!」って感じで天を仰ぐ。毎回何をするにも全力で楽しそうだよね。
「モグ」
ドリモがオルトを慰めているが、その姿には妙な哀愁があった。そう。今回はオルトとドリモがお留守番となったのだ。
「あーもー、次は連れて行ってやるから! そんな絶望すんなって」
「ム……?」
「約束するから」
「ム」
「なんだ?」
オルトがそっと手を伸ばしてくる。そして、自分の小指を俺の小指にそっと搦めた。
「あー、はいはい。ゆーびきーりげーんまーん」
「ムームムーム、ムームムー」
この約束破ったら、後が怖そうだ。忘れないようにしよう。