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422話 伝説の漁師

 花屋のお爺さんが、様々な情報を語り出す。


 古代の島があること。そこに行くための経路を巨大クラゲが塞いでしまい、今は行く手段が分からないと言うこと。以前、クラゲをどうにかしようとした本島の南側にいた海賊たちが、クラゲに全滅させられたという事。


 ほとんどがもう知っている情報だ。順当な進め方をしてきていれば、これで古代の島へと挑む最低限の準備が整ったって感じなんだろう。


 ただ、知らない話もあった。


「これは先代から聞いた話なんじゃが、古代の島の中央に、巨大な花が咲くことがあるそうじゃよ」

「巨大な花……。ショクダイオオコンニャクのことですかね?」

「済まんな。どんな花かは分からん。儂も伝承を聞いただけなんじゃ」


 数十年に一度開花するその巨花は、見るだけで幸せになれると言い伝えられているという。


「その花に辿り着くのは危険な道を通らねばならん。儂が聞いたことがあるのは、海の魚を好物とする、背に巨大な帆を背負った肉食竜がいるという話じゃな」


 背に帆? スピノのことかな? 海の魚が好物か……。多分攻略に関係する情報だろう。海の魚で気を引けるとか、そういうことかもしれない。


「そうじゃ! お主に耳寄りな情報を教えてやろう」

「なんです?」

「バザールで毎日開催されておるオークションで、時おり島に関するアイテムが出品されるらしいぞ? その中には、古の地図なども含まれているそうじゃ」


 そう言えば、夜にバザールでオークションが開催されてるって情報があったな。プレイヤー同士が消耗品のやり取りをするための場だと思っていたが、NPCの出品もあるらしい。


 そこで、攻略に役立つアイテムが出品されるってことだろう。


 しかも、爺さんの話はこれで終わらなかった。笑顔を引っ込めて、妙に感情を感じさせない真剣な顔で語り出す。一瞬フリーズしたような気がしたけど、気のせいだよな?


「花に辿り着けたとしても気を付けるんじゃ。花を狙う者がおる」

「狙う者?」

「悪魔じゃよ。開花してすぐに、その花を狙ってやってくるじゃろう。その巨花は、悪魔の嫌う匂いを発しているそうじゃ。花を守るには、悪魔を倒すしかないが……。人の身では難しいじゃろうな」

「悪魔……」

「一説によると、古代の島で手に入る虹の石があれば、悪魔の力を弱めることがあるそうじゃ」

「虹の石……。アンモライトのことですか?」

「さてのう……。儂も詳しくは知らん。そういう伝承を聞いただけじゃからなぁ」


 でも、アンモライトの事だとしか思えないよな。この情報、広めた方がいいか? 多分、最終日に悪魔が出現するってことだと思うんだが、確実にレイド戦になる。


 だったら、俺以外の皆にも準備を進めてもらわないと大変なことになりそうだ。


 掲示板に書き込むのが早いんだろうが、俺にはハードルが高い。やっぱ、早耳猫に持ち込むのがいいだろうな。


「だとすると、伝説の漁師と、沈没船の情報も集めてからの方がいいかもしれないな。古代の島に行くための方法が手に入るだろうし」


 とりあえず花屋の店内に戻った俺は、いつの間にか店番に戻っていた少女に声をかけてみた。


「さっきは案内ありがとうな」

「ううん! 私の仕事だから! ねぇ、お店見てってよ!」


 少女に促されるがままに、店内を物色する。その間、うちの子たちは女の子に構ってもらっていた。どっちも楽しそうでいい事だ。


 店内には、アジサイやヒマワリなどの花が、切り花として売られている。その中には、俺がまだ登録していないトケイソウが混じっていた。


 ただ、鑑定しても図鑑には登録できない。


「うーん。まあ、そんな高くないし、買ってみるか。なあ、このトケイソウ1本もらえるか?」

「はーい!」


 予想通り、購入したトケイソウを取り出して鑑定すると、図鑑に登録することができた。


「よし、あとは伝説の漁師だな」

「ねぇねぇ! お兄ちゃんは婆ちゃんにも会いたいの?」

「婆ちゃん?」

「うん。伝説の漁師に会いたいんでしょ? うちの婆ちゃんの事だよ!」


 なんと、伝説の漁師もここの関係者だったらしい。


「どこに行けば会えるかね?」

「お兄ちゃんはいい人だし、特別に教えてあげる! 婆ちゃんなら、村の北外れにある岩場にいると思うよ!」

「おお、ありがとう。行ってみるよ」

「うん!」


 少女に教えてもらった通り、村の北へと向かう。岩場と言われたが、想像以上に難所だ。岩はかなり巨大で、登るのにオルトの土魔術が必要だった。


 教えてもらわなければ中々ここを探そうとは思わんかっただろう。


 その岩場を越えた先に、灰色の外套を身に纏った小柄な人間がいるのが見えた。細長い岩の突端に腰かけ、海に釣り糸を垂らしている。


 驚かさないようにあえて音を立てて近づくと、その人物が軽く振り返る。


「誰だい?」

「あー、旅の者なんですが、ここに伝説の漁師がいると聞きまして」

「どこで聞いた?」

「南の漁村の、魚拓集めが趣味のお爺さんです」

「そうか、あいつの紹介か。だったら話を聞かねばならんだろうね。で、何が聞きたいんだい?」


 メチャクチャ迫力のあるお婆さんだった! ぎろりと睨まれた時には、何もしてないのに思わず「すいませんでしたー!」って謝りそうになってしまったのだ。


 ただ、魚拓爺さんのことを話したら、少し表情が緩んだ。


「古代の島にいる、巨大魚を釣り上げる方法を知りたいんです」

「ほう? 古代の島に行ったことがあるのか?」

「はい。そこで、巨大魚がいるっていう湖も行ったんですけど、モササウルスを見て、釣りは諦めました」

「なるほどねぇ。釣り上げたいのかい?」

「はい!」

「ふむ……。いいだろう。それじゃあ、まずは下準備からだ。この村から少し南に行ったところに、大きな岩山がある。そこでは、極まれに琥珀が採掘できるんだが、まずはそれを採ってきてもらおうか」


 琥珀ね。もうあるけど、岩山の琥珀じゃなきゃだめなのか?


「おお、琥珀を持ってきたのかい」


 ああ、やっぱり持ってる琥珀を渡せばよかったらしい。明らかなお使いクエストをショートカットできるのは楽でいいのだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] もうほとんど一人ですべての謎解きかけてて笑うw 一瞬フリーズしたのは例の運営の追加分だからかな
[良い点] 主人公がエンジョイ勢として楽しんでいるのがよく伝わります [気になる点] > 掲示板に書き込むのが早いんだろうが、俺には敷居が高い。 掲示板への書き込み経験がないので敷居が高いというのは…
[良い点] 白銀さんが活躍する度に、アリッサさんの悲鳴と主任の涙混じりの笑い声が聞こえる。 [気になる点] 普通ならご都合主義と思うのに、白銀さんだから~っと思うのが不思議。 [一言] 勢いでコミック…
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