42話 アシハナ
何故か予約投稿が出来なくなってしまいました。
私のPCの不調が原因なんですかね……? 理由が分からない。
予約投稿が出来るようになるまでは、毎朝8時更新が無理そうですね。
とりあえず今日分を投稿します。
「気は済んだか?」
「うん!」
「じゃあ、本題に行きたいんだが」
「養蜂箱でしょ? いいよ、作ってあげる」
「え? 作れるの?」
「作った事はないけど、作れるよ。最近覚えたレシピに載ってたはずだし」
めっちゃ話が早いな。でもトッププレイヤーだっていうし、木工のレベルも高いんだろう。
「クママちゃんのために、最高の養蜂箱を作ってあげる!」
ただ問題が一つ。
「幾らくらいかかる?」
今の手持ちは6000G。トッププレイヤーにオーダーメイドなんかしたら、どれくらいかかってしまう事か……。
「あまりお金が無いの?」
「使ったばかりでな。明後日まで待ってもらえば、20000Gくらいは用意できるが」
「そう。正直それじゃ足らないかな~」
「だよな。素材も出来もそこそこでいいから、安い養蜂箱とかないか?」
「だめよ! そんな手抜き品、私のプライドが許さないわ!」
となると、今回はアシハナに頼むのは無理か。
俺が断ろうとしているのが分かったのか、アシハナが慌てたように俺の言葉を遮った。
「待った! ちょっと待った! クママちゃんの養蜂箱は私が作る!」
「いや、でも金が無いから」
「うーん、でもでも~」
アシハナはクママにひしと抱き付くと、イヤイヤと首を振る。俺が困った顔で頭をかいていると、ソーヤくんが口を開いた。
「じゃあ、材料を取りに行ったらどうですか? 材料持ち込みにすれば、少しは安くなるし」
「どういうことだ?」
「いえ、アシハナさん、始まりの町周辺で木材を探したいって言ってたじゃないですか」
「うん! 伐採のレベルが30を超えたからね! ほら、最近は始まりの町でも色々と新たな発見があったみたいだし。採取物も、未発見の物があるんじゃないかと思ってね!」
スキルレベルが30? さすがトップ生産者は凄いな。
「僕もそろそろ素材の採取に行こうと思ってたし。ユートさんも一緒に採取に行きませんか?」
「それは有り難いけど、俺はあまり強くないぞ。うちのモンス達も、まだそんなにレベルが高いわけじゃないし」
「それは僕も一緒です」
「私と一緒なら大丈夫だよ! 始まりの町周辺の敵なら任せておいて! 私の斧で一刀両断なんだから!」
戦闘が問題ないなら、一緒に採取に行くのもいいかな? 熟練者に案内してもらいながら採取ツアーとか、俺たちにとっては利益しかない。
「でも、アシハナは良いのか? 俺たちに得ばかりなんだが」
「ぐふふふふ。採取の最中はクママちゃんと一緒――」
むしろアシハナにとってはご褒美だったらしい。
「ただ、良い材料が採れなかったらどうするんだ?」
「その場合は分割で良いよ! クママちゃんに免じて、最低価格にしておくから。多分、35000Gくらいかな?」
「高っ!」
「その代わり性能は保証するから」
「……分かった。それでいい」
「じゃあ決まりですね」
「いつ行く? 今から?」
「さすがに今からは……。3時間後でどうですか?」
「俺もそれでいいぞ。ただ、パーティはどうする? 俺は従魔が4体いるから、5人パーティーなんだが。そっちのスキル構成で、連れていく従魔を変えるぞ」
ソーヤ君は後衛だろうが、アシハナはどうだ? 斧とか言ってたから、前衛の可能性もあるが。
「チームを組めば良いんじゃない?」
「チーム?」
「ああ、ユートさんはソロですもんね」
チームというのは、2パーティで組める合同パーティのことらしい。これを組むと、経験値が最初に2で割られ、その後パーティ内に割り振られるのだ。
レイドとは違うのかと訊いたら、説明してくれた。レイドパーティは100人規模で組める上、ドロップが個人で手に入るが、チームの場合はドロップもパーティ単位らしい。
明確なデメリットとしては、ボスのHPが少々増える事。それと、エンカウント率が上がる事と、モンスタードロップ率が大幅に減る事だ。単純にパーティ2つでドロップ率2倍とはいかないらしい。
「それを、ユートさんたちと、僕とアシハナさんで組むわけです」
例えば経験値が100のモンスターを倒したとすると、まずは俺たちとソーヤくんたちに50ずつ割り振られる。
その後、5人パーティの俺たちにはそれぞれ10ずつ。ソーヤとアシハナには25ずつ割り振られるのだ。
一見するとソーヤ君たちが得しているが、モンスの経験値は俺の経験値みたいなもんだからな。実は俺が50、2人が25という構図だ。
まあ、2人が良いなら構わないか。せめて戦闘や採取で貢献しよう。余りにも俺たちが得しすぎる形だったら、ドロップを少し渡したりとか、後で調整も出来るだろう。
「じゃあ、チームで行くか」
「うん!」
「3時間後にここで集合で良いですか?」
「分かった。3時間後に戻ってくるから」
3時間後。
俺たちは西門の前に集合していた。
「じゃあ、皆揃いましたね」
「これがユートさんのモンスちゃんたちね! 皆可愛いわ~。ユートさん、分かってるじゃない!」
まあ、狙って可愛い従魔を揃えたわけじゃないんだけどな。改めて見ると、子供2人に、動物2匹。可愛すぎるな。迫力不足とも言えるが。
「ねえ! 紹介してよ!」
「はいはい。こいつがノームのオルト」
「ム!」
「この子が樹精のサクラ」
「――♪」
「で、こいつが灰色リスのリック」
「キュキュ!」
「で、もう知ってると思うがハニーベアのクママだ」
「クマ!」
俺が紹介する度に、うちの子たちはシュタッと手を上げて、アシハナにアピールする。その度に彼女は黄色い声を上げ、モンス達に抱き付いていた。
鼻息も荒く、うちの子たちを舐め回すように見つめるその眼はちょっと怖い。引くわー。
「はぁはぁはぁ。みんな可愛すぎる……。鼻血出そう」
「ちょ、アシハナさん! 気を付けてくださいよ! 下手したらハラスメントですよ!」
「うう。私今からテイマーになる」
「いやいや、そんな簡単に決めるなって」
「そうですよ。アシハナさんがウッドカッター辞めたら、残念がる人いっぱいいますよ」
「でもでも―!」
「テイムを覚えるだけにしといてください」
「うう……そうする。ねえユートさん」
「何だ?」
「ユートさんは始まりの町を拠点にしてるの?」
「まあ、しばらくはそうなるかな?」
「分かったわ」
何が? 俺が首をかしげていると、ソーヤ君がボソッと呟いた。
「このまま始まりの町に居ついちゃいそうですね」




