表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
410/867

410話 蓮の池


「おー、こりゃまた綺麗な場所だな!」

「ヤー!」

「フマー!」


 ホームでの休憩を終え、バザールを出発して1時間。


 俺たちはバザール西の森の中にあるという池に到着していた。聞いていた通り、大きな蓮の葉が水面に浮かび、薄桃色の蓮の花が咲き誇っている。


 ため息が漏れる程の美しさだ。


「ヤヤー!」

「フーマー!」


 そんな神秘的なこの池に、ファウやアイネが恐ろしいほどにマッチしている。蓮の花に腰かけるファウなんて、絵になり過ぎて見入ってしまった。


「ファウー、こっち向いてー」

「ラランラ~♪」

「いいね~」


 カメラマン気分で、ファウのスクショをバシバシ撮りまくった。蓮の花の中で楽器を演奏する妖精さんだぞ?


 恐竜のスクショも撮りまくってしまったが、やっぱり可愛いモンスのスクショもいいものなのだ。


「アイネもいいねぇ」

「フマ?」


 白い髪を棚引かせながら睡蓮の間を飛ぶアイネも、幻想的なうえに可愛いという超絶コンボをかましてくる。水面から立ち上る僅かな霧が、これまた良い演出になっているのだ。


「クママとドリモは……」

「クマ~?」

「モグ?」

「……他に良い場所があったら撮ろうな」


 この場所だと女の子たちがいいかもしれない。


 ルフレも連れてくればよかったかな? ペルカと入れ替えようか迷ったんだけど、レベリングするためにペルカのままできてしまったのだ。


「ペン?」

「なんでもないよ。それよりも、水中の探索は頼むからな?」

「ペペン!」


 俺はとりあえず図鑑を埋めちゃいますか。この池にはここだけでしか確認されていない動植物が、何種類かいるらしいのだ。


「えーっと、まずはこのスイレンだろ。あと、大きいのはオオオニバスだって話だが……」


 池の中央付近に浮かぶ直径2メートルくらいありそうな巨大な蓮は、オオオニバスという珍しい種類であるらしい。まあ、確かにこんなデカい蓮は見たことがないもんな。


「お、メダカ発見。あっちはシオカラトンボか」


 腰くらいの深さの池を歩いて移動して、動植物を鑑定していく。


「ペペン!」

「こいつはゲンゴロウじゃないか! よくやったペルカ」

「ペーン!」


 モンスたちの助けも借りて、事前情報で確認されているものはほぼ登録し終えただろう。クママの昆虫誘引スキルも大活躍だ。トンボとかがバンバン近寄ってくる。


 残りは1種類だけだった。


「あとはバシリスクか……」


 バシリスクっていうのは石化の邪眼を持った蜥蜴の怪物――ではなく、水面を走ることが可能な珍しい蜥蜴のことだ。リアルでもちゃんと存在している種類である。


「よし、みんな少し隠れるぞ」

「モグ」

「クマ」

「いいか、水面をよーく見るんだ。小さい蜥蜴がピャーッと走るからな」

「ペン」

「キュ!」


 そして、俺たちは全員で水辺の草の陰に身を隠し、池をじっと観察した。こうしてジッとしていると、隣にいるモンスたちの息遣いもハッキリと感じられる。


 さすがリアルさが売りのVRゲーム。ちゃんとモンスたちの呼吸まで再現されているとは。


 ファウやリックの呼吸は小さい。ほとんど聞こえない。


 ペルカやドリモも、意外にも静かな呼吸だ。野生のなせる業なのだろうか?


 ただ、同じ動物タイプのクママの息は結構デカいけどね。鼻で息をするたびに、目の前の草がピロピロと動いている。


 あと、アイネも意外と呼吸が煩い。どうも、みんなで隠れるという行為が楽しく、テンションが上がって呼吸も荒くなってしまっているようだ。


 フンスフンスという荒い鼻息の音が聞こえている。


 そんなモンスたちを見てホッコリしていたら、不意にアイネが声を上げた。


「フマ!」

「もしかして見付けたのか? どこだ?」

「フマフマ!」

「え? どこ?」


 俺が見つけられないでいたら、アイネが草むらから飛び出していってしまう。


「フーマー!」


 進化して飛行速度が上がったアイネは、まさにギュンと加速して水面スレスレを飛んで行く。その向かう先には、水面を高速で移動する何かの影があった。


 結構遠かったが、ちゃんと鑑定できている。バシリスクだ。


「いたー! よくやってくれたアイネ!」

「フマフ――フギュッ!」


 俺が褒めたことで調子に乗ったのか、アイネはバシリスクを捕まえようとして、失敗してしまっていた。


 バシリスクを捕まえようと伸ばした手が水面に引っかかり、バランスを崩したのである。大きな水柱があがり、アイネが池に落下した。


「アイネ! 大丈夫か!」

「フマー……」


 よかった、溺れてもいないし、ダメージもなさそうだ。結構な勢いだったからな。


「池の探索も終わったし、次はこの南西にあるっていう農村にいこうか」

「フマ!」


 自分の頭を風魔術で乾かしているアイネを抱きかかえて、俺は次の目的地を思案する。


 その農村にはイヌとネコがたくさん飼われており、村の中心には花畑があるらしい。恐竜や昆虫が男の子用だとすれば、花と可愛い動物が女の子用なのだろう。


 どんな村なのか、今から楽しみである。


イベントトリケラのサイズが間違っていたので、5メートルから8メートルに変更しました。


12/28日から、出遅れテイマー全巻重版記念キャンペーンが始まります。

出遅れテイマー×転剣コラボ短編小冊子を手にれるチャンスですよ!

対象店舗などの情報はGCノベルズ様のHPにて掲載中ですので、ぜひチェックしてみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これは滾る(モンス好きたちが) [一言] 意外と白銀さんって得意フィールドだからって必ず連れてくわけじゃないよね(・ω・)水中行軍スキルは池の中に入らないなら問題なさそうだけども…
[一言] みんな楽しそうで癒やされました。心が。 次回の農村は私にとって桃源郷かもしれないデス。もふもふセラピーで魂が浄化されるかも。
[一言] クママの昆虫誘引スキル。 夏休みの昆虫採集には最強ですな。 アイネはなかなかのお転婆娘のようです。 目が離せない系の子供ですな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ