399話 配信してた
ボス戦のドロップを確認するためにステータスウィンドウを開こうとすると、あることに気付いた。
「あれ? 配信中……? え?」
ブラキオVSティラノの恐竜大決戦。後で自分で楽しむ用に撮影してたんだけど、何故か生配信してしまっていた。
どうしてだ? 少し調べてみると、マモリの日記帳が原因だと分かった。以前、日記帳のアップロードを許可してからずっと、撮影した映像をすぐにアップできるような設定になっていたのだ。
多分、撮影開始直後に何度か出ていた、「撮影開始しますか?」的な問いの中に「映像をアップロードしますか?」という問いが入っていたんだろう。そして、俺は戦闘中で注意力散漫だったせいでそれに気付かず、Yesを選択してしまったわけだ。
「とりあえず停止してっと……。うーん、やっちまったな」
だが、考えてみたら悪い事じゃないのか? 俺の戦闘方法に隠す部分なんかないし。むしろ、あの大迫力の戦闘を他のプレイヤーと共有したいのだ。
「ま、やっちまった物は仕方ない。改めてドロップを――」
ピッポーン。
「うん? アナウンス?」
《古代の島にて、ボスの1体、イベントブラキオが討伐されました。これにより、海流の一部が弱まります》
『イベントブラキオを初討伐したユートさんに、イベント引換券が授与されます』
まさかワールドアナウンスが流れるようなボスだったとは! 完全に運と偶然が重なった結果なんだが……。
これで、他のプレイヤーもこの島に来やすくなったということなんだろう。少しはイベント攻略に貢献できたかな?
いや、今回は個人戦だから、むしろライバルたちが有利に? ま、別に構わんか。そもそも上位入賞なんて最初から狙ってないし……。
イベント引換券は、イベント終了時に特別なアイテムに引き換えることができるチケットであるようだ。
引き換え可能アイテムはその時が来るまで秘密っぽい。まあ、ワクワクしながら待たせてもらうとしよう。
「よし、今度こそドロップの確認だ」
気を取り直してインベントリを開く。すると、かなりの数のアイテムが入っていた。これが全部、ボスドロップか?
「恐竜肉が17個。骨付き恐竜肉が12個。高級骨付き恐竜肉が5個」
肉祭りだ。これでしばらくは食べる物に困らんな。イベント後に持ち越しできるなら、ホームでキッチリ調理もしてみたい。
「後は……鱗と皮に――」
ラプトルなどからもドロップする恐竜の鱗と、恐竜の皮。それに、ボスドロップと思われる恐竜の上鱗に恐竜の上皮。この辺はなんとなく予想ができていた。
「恐竜の骨は……デカッ!」
出汁でも取れるのかと思ったら、メチャクチャ大きかった。全長で150センチくらいはあるだろう。いわゆる大腿骨とか、そういった骨の形をしている。武器などに加工するためのアイテムっぽかった。
恐竜の上骨も同じだ。こっちは黒い骨である。
あとは、雷恐竜の厚皮に、雷恐竜の尾骨。雷恐竜の霜降り肉に雷恐竜の尖尾骨というのが、ボスドロップだろう。ブラキオサウルスは雷竜などと呼ばれることから、雷恐竜はイベントブラキオのことだと思われた。
ただ、ドロップした素材はそれだけにとどまらない。
恐竜の大牙に恐竜の大爪。さらに暴君恐竜の剣牙と、暴君恐竜の逆鱗、暴君恐竜の頭骨というアイテムまで手に入っていたのだ。
どう考えても、イベントティラノのドロップだろう。なんと、イベントブラキオだけではなく、イベントティラノまで倒したことになっていたらしい。
あの経験値も、それ故なのだろう。
「しかも、イベトも凄まじいぞ」
なんと、6万イベトも手に入っていた。イベントパキケファロ120匹分である。さすがボスだね!
「まじか~」
死ぬ思いをしたし、実際にヒムカやサクラは死に戻ってしまった。だが、それに見合うだけの収穫はあったということだろう。
また召喚した時に、ヒムカとサクラはたくさん褒めて、甘やかそう。あの2人の犠牲がなかったら、俺は絶対に死に戻ってたからな。
あー、いかんいかん。2人のことを悔やみ過ぎると他の子たちも心配するから、あまり落ち込み過ぎないようにしてたのに……。
「クマ?」
「大丈夫。なんでもないよ。確認も終わったし、いよいよ先に進みますか!」
「モグ!」
「ヤー!」
さて、パーティの陣容が一気に変わってしまったな。前衛がドリモとクママ。遊撃がリックとペルカ。援護がファウとアイネ。回復役が俺しかいない、うちとしては珍しい攻撃偏重型の編成だ。
狭い場所では頼りになるヒムカもいないし、今まで以上に慎重に進まないといけないだろう。
なんせ、ここからは未知の領域。テーブルマウンテンの頂上だ。失われた世界的な? いや、すでに恐竜には遭遇してるけどさ。
広場を抜け、さらに上へと向かう坂に足を踏み入れる。
正直、迷ったのだ。イベント中は一定時間経過ごとに6時間以上の睡眠をとらなくてはいけない。
すでに夜だし、どこかで眠らないといけないんだが……。テーブルマウンテンの上に、安全地帯があるとも限らない。
確実に安全な場所を求めるなら、テーブルマウンテンの麓に下りるのがいいだろう。しかし、その間にボスがリポップしてしまう危険があった。
イベントブラキオが何時間で再出現するかは分からないが、せっかく倒したのにまた道を塞がれてしまうかもしれない。
ティラノを利用する方法が次も上手くいくかは分からないし、博打になるだろう。
結局どちらも博打の要素があるなら、進む方がマシだと考えたのだ。
そうして、ゆっくりとつづら折りになった坂を上り続けた俺たちは、ついに登り切ることに成功していた。
まあ、戦闘も罠もなかったので、危険はゼロだったのだが。
「うーん。また森か」
「クマー」
「セーフティエリアとか分からんよな?」
「キュー」
初見の場所だし、仕方ないだろう。
「少し歩き回ってみよう。もしモンスターが出現するようだったら、坂道まで退避する」
恐竜があの坂まで侵入できることはティラノで発見済みだが、森の中よりはましだと思うのだ。
そうして歩き回ること10分。
「おりゃああああ! やった! 捕まえたぞ!」
「ヤー!」
「フマー!」
俺たちは巨大なカブトムシを捕まえることに成功していた。
いやー、だってこの森、敵が一切出現しないのだ。
しかも、昆虫の楽園である。普通の蝶やトンボだけではなく、下にもいたメガネウラに、初見の巨大カブトムシまで。そこら中の木に止まっている。
「やっべー、虫かご足りなくなるかも!」
レビューを2つもいただきました!
指を怪我していたせいでお礼ができず、そのままお礼するのを忘れてました。
申し訳ありません<(_ _)>
それにしても、色々な褒め方をして下さって、作者のやる気はマックスですよ!
バランスの良さを褒めて頂くのは、かなり嬉しいです。作者自身、男女比率が偏り過ぎないように気を付けておりますので。
そして、自分が描いた作品で感動したといっていただけるのも、やはり嬉しいです。物書き冥利に尽きるって感じですかね?
今後とも、当作品をよろしくお願いいたします。




