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395話 ティラノVSブラキオ

 俺たちが、巨大恐竜と共にボスエリアに閉じ込められておよそ40分。すでに動画は5本目だ。


 普通の戦闘なら30分すると強制終了となるんだが、ボス戦ではそうもいかない。しかも特殊なボス戦ぽいしな。


 未だにイベントブラキオとイベントティラノが激しい争いを繰り広げていた。


 ティラノが巨大な顎で噛み付き、ブラキオが長い首をしならせてハンマーのような頭突きを繰り出す。


「まさに恐竜大決戦」

「ムー」


 俺たちは常に移動しながら、暴れ回る2匹から一定の距離を取り続けていた。


 だが、それで安全なのかというとそうではない。


「ブウウウモオオオオオ!」

「アレくるぞ! オルト!」

「ム!」


 イベントブラキオがその場で身を翻すと、その長い尻尾を思い切り水平に振る。極太の鞭と化した尾が、イベントティラノの体を吹き飛ばし、一気に大ダメージを与える。俺たちが食らったら消し飛ぶだろう。


 ただ、尻尾自体はそこまで心配することはない。なにせ、遥か頭上を通過するからだ。


 だが、この攻撃はこれで終わりではない。むしろ、俺たちにとってはこの後が恐怖だった。


 ガガガガガガ!


 ブラキオの長い尾が木々や岩を弾き飛ばし、まるで散弾のように無数の破片がこちらに飛んでくるのだ。


 岩の陰にいる場合なら問題ないんだが、今のような移動中は最悪である。


「ムッムー!」


 こんな時はオルトに頼るしかなかった。守護者スキルを発動したオルトが、俺たち全員を庇うために前に出る。小っちゃいが、頼もしい背中だ。


 俺たちだって、何もしない訳じゃない。俺とサクラでそれぞれ魔術を発動し、オルトの防御力を上昇させる。ルフレの治療者がオルトのHPを回復し続け、ヒムカとドリモはオルトを後ろから支えていた。


「ペッペーン!」


 ペルカは――応援だ。何せレベルが低いから、ちょっと失敗するだけで死に戻るからね。


「ムムー!」


 高速で飛来した礫をクワと己の体で受け止めたオルトが、大ダメージを受けて片膝をつく。


「オルト! 大丈夫かっ!」

「ムーム!」


 オルトはどこかニヒルな表情でフッと微笑むと、サムズアップで自らの無事をアピールした。完全にドリモの影響だろう。


 でも、ドリモがやるとカッコイイのに、オルトがやると子供が背伸びしてるみたいでひたすら可愛いのはなぜだろうな。


 まあ、こんなことをやる余裕があるのは分かった。


「とにかく、離れるぞ!」

「ムー」


 さて、オルトはまだ元気っぽいし、回復はルフレに任せればいいだろう。


 問題は向こうだ。


「ガオオオォ……」

「ブモオオオォォォー!」


 イベントティラノが負けそうだった。


 やはり、ボスが相手では分が悪いのだろう。そもそも、ティラノの方が大分小さいしな。


 ティラノのHPが残り2割。ブラキオは6割ってところだった。このままティラノが負けると、次は俺たちだ。


 このボスフィールドであの巨大なイベントブラキオから逃げ切ることなどできるはずもないし、絶対に死に戻るだろう。


 ティラノが勝った場合、ボス戦が終了し、逃げ出せる可能性が僅かに残っているんだが……。


「ガオ……」

「ブモオオオオ!」


 闘志は失っていないが、完全に足にきている。今もイベントブラキオの突進で吹き飛ばされてしまった。


「俺たちが生き残る道は……」

「――?」

「ティラノの支援だ! こうなったらティラノを応援して、勝ってもらうしかない!」

「ペ、ペン?」

「不安なのは分かるが、やるぞ!」

「ヒム!」


 そこから、俺たちの戦いは始まった。イベントブラキオの動きを少しでも阻害するような攻撃を放ちつつ、ティラノに回復やバフを飛ばす。


 ヘイトは気にしなくてもいい。ブラキオもティラノも互いに大ダメージを与えあっており、俺たちが少し何かした程度ではヘイトがこっちに移ることはないからだ。


 気を付けなくてはならないのは、流れ弾や、その戦闘に巻き込まれることだ。少しミスをするだけで死に戻るだろう。


 今まで以上に神経をすり減らしながら、両者の戦いに介入していく。だが、やはり俺たちがちょっと手助けをした程度では、どうしようもなかった。


 ティラノがブラキオによってドンドン追い込まれていく。


 そんな中、イベントブラキオが今までにない動きをした。


 そのモーションは尻尾を使った攻撃に似ているが、明らかに尻尾の位置が低い。どう考えても、地面スレスレだろう。


「それってつまり――」


 俺たちもまとめて攻撃しようとしてるってことか!


 俺たちにヘイトが向かずとも、多少うざいとは思ったのだろうか? 範囲攻撃でティラノもろとも攻撃しようと考えたらしい。


「ブウウモオオオォォォ!」


 超巨大な尻尾が地面を削りながらこちらに襲いかかってくる光景は、まるで岩でできた壁が迫ってくるかのようであった。


 あー、これは死んだな。俺が諦めとともにそう思った直後。


「ヒムー!」


 俺の目に飛び込んできたのは、全身に逆襲者の光を纏ったヒムカが、自ら尻尾に向かっていく姿であった。


「ヒ、ヒムカー!」

「ヒムムー!」


 そして、ヒムカがブラキオの尻尾に弾き飛ばされ、10数メートル上空へと舞い上がる。当然ながらHPが残っているわけもなく、俺と目が合った直後にヒムカがポリゴンとなって消えていくのが見えた。


「ヒム――」


 だが、サムズアップしながら消えていくヒムカは、無駄死にではない。逆襲者はカウンタースキルだ。つまり、相手の攻撃が強い方がダメージが大きい。


「ブモオオオォ?」


 凄まじいダメージを尻尾に受けたことで、イベントブラキオがバランスを崩していた。尻尾攻撃が中断されただけではなく、ブラキオがその場で転んだではないか。


「ヒムカ、助かったぞ!」


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