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377話 釣りポイント

 ルフレとペルカが船を曳き始めて10分。


「フムムー♪!」

「ペンペペーン♪」


 ルフレとペルカは、鼻歌混じりに船を曳き続けている。結構な重労働だと思うんだけど、楽しいなら結構だ。


「ゲームの中だけど、潮風が気持ちいいな」

「ムー!」

「モグ!」


 俺と一緒に、オルトとドリモが目を細め、両手を上げて全身で風を感じている。


 潮風の匂いや、べた付く感じが苦手という人もいるらしいが、俺はそのへん全然平気だ。むしろ、磯っぽい匂いを嗅ぐと、テンションが上がってくるほどである。


「モグー」

「ドリモは海が気に入ったか?」

「モグ」


 本来は土の中に住むモグラのモンスターなのに、船の上で潮風を浴びる感覚がいたく気に入ったらしい。普通、太陽の光とか水辺を嫌うと思うんだけどね。


 ドリモは船首を陣取り、全身で風を浴びながら上機嫌でヒゲをなびかせている。まるでタイタニックの例のシーンのようなポーズだ。いや、1人だけどね。


 そんなドリモを微妙そうな顔で見ているのが、相変わらずのヒムカだ。


 周りを水に囲まれた状況に、心が休まらないらしい。俺の背中にひっついたまま、決して離れようとしなかった。


「ヒムカー、ごめんなー」

「ヒムー……」


 だが、ヒムカを送還するわけにはいかない。鍛冶系の依頼をこなすのに、どうしてもヒムカの力が必要なのだ。


「それにしても、どこまで行くつもりなんだ?」


 とっくに村のエリアからは外に出て、フィールドの海を進み始めている。何度か他のプレイヤーさんとすれ違ったから、間違いない。うちみたいに、モンスに船を引かせているプレイヤーもいた。


 出現するモンスターは水霊の試練に登場する雑魚ばかりなので、ペルカの経験値になってもらっているが……。


「なあ! ルフレ! ペルカ! もういいんじゃないか?」

「フムムムムー!」

「ペペペペーン!」

「あかん、聞いてない」


 船曳きーズハイ? まあ、戻る時は自動なんだし、遭難することはないだろう。もう少し好きにさせてやるか。


 そんなことを考えていたら、急に船が減速した。


「ペン!」

「うん? 急に止まってどうしたんだ?」


 疲れたのかと思ったら、ペルカが何やら俺にジェスチャーで訴えかけている。


「海の中に何かいる……?」


 2人の表情を見るに、モンスターではないっぽいけど。


「ペン!」

「海の中に?」

「ペペン!」

「たくさん……? あ! もしかして、魚がたくさんいるってことか?」

「ペン!」


 どうやらペルカたちは、暴走していたわけではなく、魚の多いポイントまで連れてきてくれたらしい。これは期待できるだろう。


「ペーン!」

「おお! 漁火」


 ペルカが黄色い炎を生み出し、水中に沈める。一部の魚が寄ってくるっていう話だし、楽しみだ。


「よし! いっちょやってみますか!」


 俺は報酬でゲットした餌を釣り竿にセットし、早速海に投げ込んでみた。


 すると、5分もせずに魚が釣れていた。ビギニアジである。その後も、入れ食い状態だ。早い時には1分くらいで釣れてしまう。


 結局、1時間で30匹ほどのビギニアジを釣り上げることに成功していた。それに加えて、ビギニイカが4杯ほどだ。


「見事にアジばっかりだな」


 どうも、アジの群れに遭遇したらしい。ペルカたちが案内してくれたおかげだろう。一番安い魚とは言え、30匹も釣り上げれば完全に元は取れている。


 さらにイカも加えれば、ウハウハだ。イカは、ペルカの漁火のおかげかね?


「フムー!」

「ペペーン!」

「おお! また捕ってきてくれたのか!」


 しかも、ペルカやルフレが素潜りで色々な魚を捕まえてきてくれるのだ。中には店で売っていなかったビギニタイまで含まれている。


 たった1時間で、50匹近くもの魚をゲットできてしまっていた。金額にすれば1500イベトほどになるだろうか?


「料理して売れば、かなり稼げるぞ!」


 ただ、問題も少しある。


「――?」

「ム?」


 今回は短い時間だったし、初の船旅と言うことでオルトたちも楽しんでいた。しかし、この時間が伸びたら?


 また明日以降も釣りはしたいし、できれば何時間か釣りの時間をとりたい。


 だが、オルトたちは絶対に飽きるだろう。


「海の上でも、飽きないようにするにはどうしたらいいんだ?」


 理想は釣りだ。だが、釣りスキルがなければ――。


「いや、そうだ! 確かスキル付与装備の釣り竿が作れたはずだ!」


 スキル付与というのはその名前の通り、作る段階で工夫することで、アイテムにスキルを付与する作業のことだ。


 スキル付与装備は、装備者や使用者にスキルの効果を与えてくれる。


「サクラの木工と、俺の錬金があれば釣りスキル付与の釣り竿も作れるはずだ!」


 レシピはすでに知っている。ただ、高性能の物は作れないので、釣りスキル付与の釣り竿を作ったことはないけどね。


「後は素材だな。木材と糸と、魚介類」


 魚介類は、今日釣った魚がある。町なら木材や糸はあるかね?


「よし。町に戻って材料探しだ!」


 遊楽の浜で遊んだ後にだけどな!


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