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368話 クママの新装備

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 ペルカが仲間になり、早耳猫に情報を売りにいった翌日。


 俺は畑を見て回っていた。


「おー、海苔の養殖は順調だな」

「ムム!」

「――!」


 この海苔の養殖場は、オルトだけではなくサクラの手も入っていた。海苔を付着させる柵みたいなやつが、サクラの手作りなのだ。


 水を塩水に変えるのは、非常に簡単だ。設定画面で、真水と海水を選べるからな。ただ、水の品質が最低であるため、水の品質を上げるには自ら水を採取してきて、プールに注ぎ込まないといけないのだ。


 真水に関しては、色々な場所で採取できるので高品質を確保できている。だが、海水はまだ入手できていないので、デフォルトの海水を使用するしかないようだ。


「他には――」

「ムム!」

「お? どうしたオルト? プール以外に見せたいものがあるのか?」

「ム!」


 オルトに引っ張られていった先には、見たことがない草が生えていた。見た目は大きなクローバーだ。しかも五つ葉である。


「ここって……。ああ! そうか! 前に植えた謎の種がようやく育ったのか!」

「ムム!」


 1週間ほど前に品種改良で生み出した、新品種だろう。鑑定してみると、名前が『異常のクローバー』となっている。


 摂取した対象に、毒、麻痺、睡眠、加重/酩酊、暗闇の状態異常をランダムで与えるようだ。それぞれの異常に判定があるらしく、場合によっては多重状態異常も狙えるという。


 既に作り出している人もいるので多少は出回っているが、栽培が難しいらしく、結構な高値で取引されている。


「やったな! これ、育てられるか?」

「ム!」

「よしよし。これを量産して、色々な薬を作るぞー」


 売るもよし、使うもよしだ。


「じゃあ、今日はやることがいっぱいだぞ!」


 明日から第二陣記念のイベントである。その為の準備も進めないといけない。


「イベントは持ち込めるアイテムに制限があるんだよな」


 詳細は既に告知が出ている。まず、今回はサーバー分けがない。メチャクチャ広いマップが用意されるらしい。


 時間が加速されることで、リアルでは4時間しか経過しないが、ゲーム内では7日間となる。その間にログアウトは可能だが、リアルで少し用事を済ませただけでも、イベント内ではかなりの時間が経過してしまうだろう。


 そして重要なことが、イベントに持ち込めるアイテムは、事前に設定しておいた装備品以外に10個のアイテムのみということである。


 町や村がどの程度の規模で存在しているのかが分からない以上、このアイテム設定はかなり重要になるだろう。


 俺は生産メインの後衛にするつもりだ。まず、調合、料理、錬金セット。これらの生産道具は、セット1つで1アイテムという扱いになるので、これで3枠となる。さらに、農耕用のクワ、伐採オノ、採掘ピッケル、釣り竿、釣り餌も持って行きたい。素材の採取も必要なのだ。


 これで8枠である。あと2つなんだが、ここで俺が目を付けたのが脱出の玉と逃走の玉だ。生産職はあまり戦闘をせずとも済むっぽいが、何があるかは分からない。緊急脱出用のアイテムは重要だろう。


「あとは、装備品も更新しないと……」


 全部のモンスを連れていけない以上、イベント中は従魔の宝珠が重要になる。現在俺が持っている宝珠は4つだが、装備品の関係で3つしか装備できていない。まずはそれをどうにかしないといけないだろう。


 あと、ペルカをどうするかも問題だ。レベリングがてら、イベントに連れて行くかどうか。


「うーん、水場でペルカの能力を確認してからだな」

「ペン?」


 まあ、まずは装備品からだ。俺は装備品を外部で買う必要があるクママ、リック、ペルカを連れて、ルインの店に向かった。


「こんちゃーっす」

「ユートか。イベントでは世話になったのう」

「そりゃあ、こっちの台詞だ。それで、今日はアクセサリー類を見たいんだけど」

「どんな効果を希望しておる?」

「スロットが多ければ多いほどいい。従魔の宝珠を装備したいんだ」

「なるほどな。となると、この辺ではどうだ?」

「ピアスか」

「魔術スキル全般に微ボーナスがあり、空きスロットが3つだ。どうだ?」

「そりゃあ、嬉しいな! ぜひ欲しいんだが! あと、従魔の装備も頼む!」

「了解した」


 想像よりもお高かったが、金はある! 他にも、リックのマフラーとか、勧められるがままに防具を購入してしまったぜ。


 特に高かったのが、クママの装備である。


「白いシャツに、黒いジャケット。赤いアスコットタイって、メチャクチャお洒落さんだな」

「クマ!」


 クママがドヤ顔で腕を組む。だが、そんな姿も可愛いのだ。


 初期のクママの装備に似ているが、これは偶然ではない。なんでも、クママの可愛い姿が人気になって以降、ハニーベアの装備はこのスタイルがデフォルト扱いになっているそうだ。


 細かい違いはあっても、シャツ、ジャケット、ネクタイ系装備の3点セットである。


 それ故、ルインの店でも同じ系統の防具が常に用意してあるらしい。


 耐暑、火炎耐性のある白雪のシャツ。大地耐性、腕力強化能力がある黒土のジャケット。耐寒、氷結耐性のある蓄熱のアスコットタイ。かなりいい装備だろう。


「キキュ!」

「おうおう。リックも似合ってるぞ~」

「キュ!」


 まあ、いつも通りの赤スカーフだから、見た目は全く変わってないけどね。ただ、麻痺、毒耐性に、火炎耐性まで付いた、高性能防具なのである。


 残念なのは、ペルカ用の装備でしっくりくるものがなかったことだろう。俺以上に、ルインが残念そうだったけど。


 あの厳めしいドワーフ面で、リックを撫でながらもう片方の手でペルカを撫でている姿には、笑いをこらえるのが大変だった。小動物好きなのは気づいてたけど、可愛い動物全般が好きっぽいな。またペルカを連れてきてやろう。



「出遅れテイマーのその日暮らし 第3巻」が今月末発売されます。

ラバーストラップ&短編付き限定版などもございますので、ぜひよろしくお願いいたします。


レビューを頂きました。

風邪で寝込んでいる最中に読んで、大変励まされました。

ありがとうございます。


それと、砂糖の件で1つミスがありました。

作中では、今まで発見されていなかった砂糖が唐突に出てしまっておりますが、

307話~308話の間に他のプレイヤーによって発見され、市場に大量に流通するようになったという設定です。

完全に説明するのを忘れておりました。

366話にその説明文を追加しますが、ストーリーに大きな変化はございません。

ご指摘いただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 動物好きを素直に解放しない動物好きはほっこりする。
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