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343話 オーガコング撃破


 ルインと、サッキュンのゴーレムを先頭にして、こちらを睨むオーガコングと対峙する。


「ウゴゴゴゴゴゴ――」


 両手で胸を叩くドラミングも、普通のゴリラとは迫力が段違いだった。強そうだ。さて、どんな攻撃を仕掛けてくるのか。


「――ゴゴゴゴゴゴ」

「ドラミング長いな」


 周囲には、未だにドラミングによる重低音が響き続けている。


「――ゴゴゴゴゴゴゴ」

「というか、ドラミングが終わらないな!」


 オーガコングは、ずっと自分の胸を叩き続けている。すると、オーガコングの黒い体毛が段々と赤く変色し始めたではないか。


 ドラミングと無関係とは思えない。放っておいていいのか?


「ど、どうする?」

「ドラミングによって、何らかの強化が入るのか?」

「とりあえず、一発いっとく?」


 結局、俺たちは作戦を変更して動き出す。相手の攻撃を待つのではなく、こちらから先制攻撃を仕掛けることにしたのだ。


「サッキュン頼む」

「りょーかいりょーかい」


 サッキュンがモンスターを召喚して、攻撃を仕掛ける。


 サモンモンスターを一瞬だけ呼び出して、能力を1度だけ使用させる瞬間召喚だ。


 呼び出したのは、鱗の代りに青っぽい岩を身に纏った蛇タイプのモンスターだった。そのモンスターが口から岩の塊を吐き出し、オーガコングを攻撃する。


「ゴゴゴ――ウゴ!」


 オオ、ドラミングが止まった。ただ、赤くなった体毛は元に戻らない。


 直後、オーガコングが一気に跳び上がった。


「くるぞ!」

「ウゴオオ!」


 オーガコングが跳躍の勢いのままに、ルインに向かって右の拳を振りおろす。小指側を下に向けた、いわゆる鉄槌打ちって奴だ。


 ドゴオオオオオ!


「ぬうう!」


 凄まじい衝撃音が響き渡る。受け止めるには受け止めたのだが、ルインが数歩後退していた。しかも僅かにダメージを受けている。


 軽減しきれなかったダメージが、ルインに通ってしまったのだろう。ルイン自身は戦闘職ではないが、装備は最高レベルだ。何せ、鍛冶師だからな。自分の装備は常に最高の物を揃えているはずだ。


 しかも、盾スキルのレベルも相当高かった。そのルインが受け止めきれない?


 となると、今の攻撃は相当な威力があったと見るべきだろう。


「こりゃあ、エリア9のボスの攻撃に近い威力があるぞ!」

「うへー、まじ?」

「マジだ!」

「この人数でそれはきつくない?」


 しかも、実質戦力はサッキュンとルインだからな。俺たちだって頑張るつもりだが、さすがにエリア9のボス相当と言われては、役に立てるとは思えん。


 そう思って絶望的な気持ちでいたんだが、どうやらそこまでの化け物ではないようだった。


 連続して繰り出してきたオーガコングの攻撃を、ルインの盾があっさりと弾き返したのだ。オーガコングはシールドによるカウンターを食らい、仰向けにひっくり返っている。


 その理由は一目瞭然であった。


「毛の色で、攻撃力が変化するのか!」

「黒い時は大したことないな」


 1撃目の攻撃を放った後、赤みがかっていたオーガコングの体毛が黒に戻っていたのだ。そして、攻撃力が一気に下がったらしい。


「ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!」

「また始めやがった!」

「うるさっ!」


 オーガコングが再度ドラミングをし始める。同時に、毛皮の色がまた赤く変化し始めていた。

 

 どうやら、ドラミング→攻撃力アップ→攻撃で元に戻る→ドラミング、を繰り返すのがこいつのパターンであるらしい。


「サッキュン!」

「わかってるって!」

「ユートもやれ! 一発当てるだけでも妨害できるかもしんねぇ!」

「わかった!」


 ルインの推測通りだった。


 どんなに弱くても一発攻撃が入れば、ドラミングを中断させられるのだ。それを数度繰り返せば、強化が不十分なままで攻撃を仕掛けてくる。


 それをルインが弾き、皆で攻撃を叩き込むと言うことを繰り返せば、ほぼ完封であった。ほぼというのは、オーガコングが数度に1度、巨木の上に逃げて、そこでドラミングを行うからだ。


 その際は遠距離攻撃や、空を飛ぶモンスによって攻撃を仕掛けなくてはならない。だが、鬱蒼と茂る枝葉に邪魔をされて、中々攻撃を届かせることができなかった。結局、前衛のルインが何度かダメージを受けることになってしまったのである。


 木登りができるリックが大活躍する場面だったと思うんだが……。調子に乗って前に出過ぎて、咆哮で吹っ飛ばされたのだ。


「ギギュー!」

「リックゥゥ!」


 攻撃力が低い状態でよかった。それでもHPが半分削られたけど。しかも気絶状態に陥って早々に戦線離脱だ。


 やっぱり俺たちだけだったらヤバかったかもしれない。ただ、サッキュンやルインにとってはそこまで強い敵ではなかったのだろう。


「これで終わりですよっと!」

「ゴガアアア……」


 サッキュンのオーバーヘッドキックでHPゲージを吹き飛ばされたオーガコングが、目の前でポリゴンに変わっていく。


「意外と弱かったなー」

「いや、最後の狂化はかなりやばかったぞ。サッキュンのおかげですぐ倒せたがな」


 俺は後ろから魔術を撃っていただけなんで気付かなかったが、ルインは結構危ない橋を渡っていたらしい。


 自分の盾の耐久値をチェックして唸っている。


 オーガコングは残りHPが1割を切ると狂暴になって暴れ回るタイプのボスだった。毛が真っ赤に染まり、角が倍くらいの長さになって、動きも相当速くなっていたように思う。


 ただ、ルインはダメージを食らっても自己回復系のスキルですぐに回復していたし、直撃はなかったので、彼にとっては大したことはないと思ってたんだが……。


「攻撃力はドラミング最大時と同じ、速さも2段階は上がっていた。サッキュンの仕掛けがもう少し遅かったら、儂ももっとダメージを受けていただろう」


 ボスだけは第2陣仕様ではなかったということか。10分ほどで倒せたので、HPは低かったらしい。だが、攻撃力は前線のボス級という、アンバランスな設定だったようだ。


「とりあえず、少し休憩するか?」

「すまん。盾の耐久を回復せねばならんからな」

「瞑想ターイム!」


 俺もモンス達を労っておこう。みんな活躍してくれたのだ。ずっと気絶状態でおねんねしていたリック以外は。


「キュー……」


 煤けた背中で、がっくりとうなだれている。自分だけ役に立たなかったことが悔しいらしい。


「ほらリック、落ち込むなって」

「キュ……」

「次は活躍すればいいだろう?」

「キュ?」

「レイドボス戦が本番なんだ。その時頼む」

「キキュ!」


 リックがやる気をみなぎらせた表情で、拳を握っている。うんうん、元気が出たようだな。ただ、やる気が空回りして、暴走だけはしないでほしいな。


「キュキュー!」


 大丈夫だよね?


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