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34話 職業系称号

 さて、新たな仲間となった灰色リスのリックなんだが、面白い能力があった。採集のスキルだ。採取ではない。採集だ。


 名前からして採取系だと思っていたんだが、これが単なる採取じゃなかった。言葉通り、採って集めてくるスキルだったのだ。俺から離れてどこか行ったと思ったら、木の実を持ってきたのである。


「これって青どんぐりか?」


 携帯食を美味しくしてくれるそうだが、どれくらい美味しくなるのかね。


 でも、リックが採集してきてくれるのは嬉しいな。その後も町に戻るまでに青どんぐり4つ、胡桃を4つ取ってきてくれた。便利だ。でも戦闘の時にどっか行っちゃってたら困るんだけど……。


 そう思っていたら、どうやら遠くには行っていないようだと分かった。採集の範囲があり、その中に採集できる物があると、採ってくるようだ。


 これなら戦闘時にいないということもないだろう。むしろ少し離れていれば、奇襲になっていいかもしれん。


「ふぅ。町に戻ってきたか」


 初めての本格戦闘は楽しかったけど疲れたぜ。


「やっぱ畑は落ち着くな」

「ム」

「――♪」


 でかい木が2本になって、なんか凄い癒し効果がアップした気がする。緑に囲まれているだけでも落ち着くし。森は別だぜ? いつモンスターに襲われるか分からないからな。


 これ、長椅子でも設置して、ダラダラできるようにできないかな。テーブルも合わせて置いて、ティータイムもいいかもしれない。納屋の中はいじれないけど、外はどうなんだろうな。


 リックは緑桃の木にするすると登ると、枝の上で丸くなった。気に入ってくれたようで良かったよ。


「ム?」

「おっと、そうだった」


 オルトに裾を引っ張られて思い出した。


「ほい。胡桃だ。これも植えられるか?」

「ムー?」

「だめなのか?」

「ムム」


 首を横に振りつつ、胡桃は俺に突き返してくる。何だ? 胡桃は植えられるけど、これじゃダメってことなのか?


 俺は今日ゲットした他の6つの胡桃も出してみる。するとオルトはその内の1つを摘み上げると、満足げにうなずいていた。


 俺には全く違いが分からんが、オルトが満足ならいいや。


「じゃあ、頼んだぜ?」

「ム!」

「俺はちょっと出かけるから」

「――♪」

 

 オルトとサクラが居れば畑は問題ない。俺はアリッサさんの露店に向かった。


「こんにちは」

「あら、珍しい時間に来たわね。薬? それとも情報?」

「両方で。まずはいつものを」


 とりあえず調合した薬を売る。そして、次に売るのは情報だ。


「ふふ。やっぱりユート君は面白いわね! うちに情報を売ってくれた数ではあなたが断トツよ。それで、どんな情報?」

「称号について」

「また?」


 もうアリッサさんは驚くというよりは呆れた感じの表情だった。


「ついさっき3匹目のモンスターをテイムしたんですが、その時に」


 俺はステータス欄の新称号を見せる。


「なるほどね。職業系の称号か」

「もしかして他の職業でもあるんですかね?」

「ええ。アルケミストで、初回からの作成物5つがオリジナル品だったらオリジナリティの塊。サモナーは初回から3匹の契約モンスが全部ユニークだったら、ユニークモンスターラバーっていう称号がつくわね」


 初回からっていうのが難題だよな。よほど上手くボーナスを取ってなきゃ、狙っても難しいし。情報を知った頃にはもう取得不可能ってことになるだろう。


「もしかしてユニークモンスターマニアも?」

「残念。先日仕入れたばかりの情報だわ。うちに売りに来ただけでも2人が取得してるわね」


 実は今日発表された集計データで、称号取得者が11人まで増えていたんだが、この職業系称号を取得した人間が何人もいたらしい。


「この情報、βの時に一応確認されてたのよ。取得がβテスト最終日だったから検証もされなかったし、確定情報として掲示板なんかにアップされてもいないけど。それを知ってるβテスターが狙ってたみたいね」

「でも、それって変じゃないですか? だって、βテストを最終日までプレイしてたら、テイムモンスターが3匹なんてことありえないと思いますけど」

「そんなことないわよ。いくつか手段があるわね。一つが、テイムを後から取得した場合。他には転職システムでテイマーに転職した場合ね」


 そういう事か。初回からのテイムモンスが3匹連続でユニークだった場合。つまり、テイマーじゃなくても良いのだ。あとからテイムを取得しても称号が取れるらしい。


「でも、だったらユニークモンスターマニアって、結構簡単に取得できません?」


 とりあえずテイムを取得しておいて、いつかユニークモンスターと遭遇した時にテイムしていけばいいんだし。そう言ったら、アリッサさんに首を振られた。


「そう簡単な話じゃないのよ。ユートくん、リックちゃんをテイムした時、結構苦労しなかった?」

「しました。MPギリギリでしたからね」

「従魔術を持っているテイマーでさえそうなのよ? 使役とテイムしか持っていないプレイヤーがユニークモンスをテイムできる確率なんて、100分の1じゃきかないと思うわ。普通に考えたら逃走されるか、タイムアップになるでしょうね」


 タイムアップっていうのは、戦闘の時間制限のことだ。このゲームではレイド、ボス戦以外の戦闘は最大30分となっている。それを過ぎると強制終了となるのだ。


 使役も合わせて取得して、さらに運が良ければってとこか。


「それに転職か」


 システムとしてあるのは知ってるが、基礎レベル20以上って話だから、俺にとってはまだまだ先の話なんだよな。


「じゃあ、俺も他のスキルで称号を狙えるかもしれないんですかね?」

「もちろんよ。錬金とかどう?」

「もう無理です。普通に合成を使ってしまいました」

「そう、じゃあ無理ねぇ」


 初期ボーナスで錬金のレベルを上げて、レシピを取得して、さらにレシピを工夫しなくてはいけないんだろう。しかも失敗したらゴミが出来るから、絶対に失敗できない。


「農業ではないですか?」

「うーん。まだ確認されてないわ」


 それは残念だ。まあ、余裕ができたら色々情報を調べて、狙ってみるのもいいかもしれない。


 次はサクラの情報だな。


「次は情報を買いたいんですが、樹精ってわかります?」

「ええ。相当珍しいはずだけど……。もしかしてテイムしたの?」

「はい。2匹目がそうでした」


 俺はサクラを手に入れた経緯をアリッサさんに説明した。


「樹精って、今のところ出現エリアは特定されていないわね。ただ、森フィールドとかの木の中に樹齢が高い木があることがあって、その木から出現することがあるっていう話よ。βテストの時には、第1エリアでも出現が報告されてるわ。製品版だと、第2エリアで撃破報告があるみたい」


 フィールドボス未満、ユニークモンスター以上みたいな存在なのかね? 


「あとは、元になっている樹の種類によって能力が多少違うらしいわよ」


 アリッサさんに教えてもらった樹精の基礎データがこんな感じだ。


樹精

体力、精神がやや高め

スキル:育樹、樹魔術、光合成、再生、忍耐、水耐性、木工、森守

装備:樹精の武器、樹精の衣


 サクラは採取、魅了が追加されてる。これがサクラの特殊能力故か、レベルアップのおかげか、いまいち分からないな。


 スキルの忍耐は吹き飛ばし耐性、森守は森林にいる時の行動にボーナスが付くらしい。


「それで、樹精の話は売ってもらえるってことで良いの?」

「えっと? 俺が情報を買ったんですよ?」

「あのね、水臨樹を植えたら樹精が手に入ったなんて、結構貴重な情報よ? まあ、真似するのはしばらく無理だろうけど」


 そんなに難しいとは思わなかったが、他の人が俺と同じ方法で樹精を手に入れるのはかなり難しいらしい。


 まず、現状では祭壇に行く方法が限られているので水臨樹の実を手に入れるのが難しい。


 そして、水臨樹を育てるためには育樹スキルが必要だが、このスキルを持っているプレイヤーがまだ居ない。育樹を入手するには農業スキルをLv40まで上げる必要があるらしいのだ。現状でのトップファーマーの農業スキルのレベル帯は30前後らしい。40まで到達するにはまだ時間がかかるだろう。


 しかも、従魔を入手するには、テイムが必要だ。場合によっては、出現条件に従魔術か使役スキルが必要かもしれない。だとすると、テイマーが育樹を手に入れて、水臨樹を育てる必要がある。


 はっきり言って、俺以外のプレイヤーが樹精を手に入れたいなら、森を徘徊して樹精を探す方が遥かにましだし、早いのだった。


 結論、サクラを従魔に出来たのはオルトのおかげってことだな。


 サクラのことは連れてればバレるし、だったら情報を独り占めして影口を叩かれるよりも、さっさと情報を開示しちゃった方が良い気がするな。


 俺はアリッサさんに情報を売ることにした。情報代を引いて1500Gの収入だ。


 さて、用事も済ませたしこの後はリックの装備品でも買いに行くか。オルト達と違って初期装備がなにもなかったし。それに、俺も後衛で行くって決めたからな。先延ばしにしてきた杖の購入もついでにしたいのだ。



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― 新着の感想 ―
バンバン情報を開示するのに、他人に話されたら嫌がるのなんかチグハグしてる感じする
サクラは掲載分のほかに鞭術もありますね。ごほうび?
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