337話 鳥が関係してるっぽい
皆と別れて森の中を歩きだしたんだが、すぐに見慣れない草を発見できていた。
名称:鳥除け草
レア度:1 品質:★10
効果:鳥が嫌がる効果がある。採取から30分経過で、ゴミになってしまう。イベント終了時に、消滅する。
鳥除けね。今回のレイドボスは鳥型のモンスなのだろうか? もしくは、敵が鳥? 昔見たヒッチコックの映画みたいな状況になったら、ちょっと怖いな。
「まあいいや。もう少し採取をしてみて、調合と錬金を試そう!」
その後、俺たちは歩きながら鳥除け草を採取しまくっていた。群生している場所もあったりして、もう10個は手に入った。
「そろそろレシピを確認してみるか」
そう思って調べてみると、鳥除け草3つで、鳥除け剤・水薬というアイテムを作ることができた。
名称:鳥除け剤・水薬
レア度:1 品質:★10
効果:触れた鳥にダメージを与える。イベント終了時に、消滅する。
液体で、鳥にぶつけるとダメージを与えることができるらしい。
「これを大量に作ればいいのか?」
鳥にぶつけるってのが難しそうだが……。まあ、他にやることもないし、ガンガン作っていこう。
道中で他のプレイヤーたちとすれ違うが、知り合いはいない。ほとんどのプレイヤーは廃砦に向かっているようだな。
そのせいで、逆に向かう俺が目立ってしょうがなかった。メッチャ見られているのだ。まあ、仕方ないけど。
そのまま歩き続けた俺は、程なくしてイベントフィールドの端にまで到達していた。イベント開始から15分くらいかな?
そこがフィールドの端だと分かったのは、そこに透明な壁が存在していたからだ。森を抜けると、青々とした平原が広がっていたんだが、そちらに足を踏み入れることができなかった。
「見えない壁があるか」
「ヤー!」
「そう怒るなって。運営だってわざとやってるわけじゃないんだからさ」
「ヤヤ!」
「はいはい、鼻を打って痛かったな~」
「ヤ~」
先頭を意気揚々と飛んでいたファウが、壁に衝突してプンスカポーズで怒っている。
それにしても、ここで行き止まりか。意外と狭いな。いや、レイドボス戦にだけ使うフィールドと考えたら、むしろ広いか。
もしボスが逃走するタイプだったら、結構面倒になるかもしれなかった。
「モグモ!」
「お? どうしたドリモ?」
「モグ!」
平原を見つめていると、ドリモが呼びにくる。何か発見したらしい。俺のローブの裾を引っ張っている。
後についていくと、森の木々の合間から黒々とした何かが見えた。さらに近寄ると、岩石の塊であると分かる。
岩塊の高さは周囲の木よりも少し低いくらいで、直径は5メートル程だろう。何かイベントが発生するかと思ったら、単なる採掘ポイントであったらしい。
「モグ! モグ!」
ドリモが一心不乱にツルハシを振っている。インベントリを確認すると、こちらでもイベント限定アイテムが入手できていた。
名称:鳥除け石
レア度:1 品質:★10
効果:鳥が嫌がる効果がある。採掘から30分経過で、ゴミになってしまう。イベント終了時に、消滅する。
名称:鳥除け鉱
レア度:1 品質:★10
効果:鳥が嫌がる効果がある。採取から30分経過で、ゴミになってしまう。イベント終了時に、消滅する。
鳥除け石は鳥除け剤・粉薬というアイテムになるな。鳥除け剤・水薬の粉バージョンだ。でも、飛んでいる相手に投げつけるなら、液体よりは使いやすいかもしれない。
鳥除け鉱は俺には使えない。どうも、製錬などの鍛冶系技能が必要であるらしかった。イベント用鉄鉱石と同じである。
「これは、イベントにヒムカを連れてくるべきだったか……」
いっそこの場で鍛冶を習得してしまおうかとも考えたが、どちらにせよ道具がない。
「とりあえずインベントリに入れておこう」
消滅まではまだ30分ある。それまでに鍛冶持ちの他のプレイヤーに出会えるかもしれないしね。ダメならヒムカを呼べばいいさ。
「クマ?」
「……なんでもない。護衛を頼むな」
「クマ!」
すまんクママ。ヒムカと入れ替えるならお前なんだ。だって、敵が少ないうえに、めっちゃ弱いんだもん。それに、ここは採取が重要そうだからな。
「他にも採取できる物があるかもしれないし、できるだけ歩き回ってみよう」
「フム!」
「そうだなー、川か湖でもあれば、ルフレも活躍できるんだけどなー」
「フムム!」
「分かった分かった。探すから! 引っ張るなって!」
自分も活躍したいルフレに先導されること20分。俺たちはフィールドの縁を時計回りに歩いていた。採取、採掘ポイントはそれなりにある。
しかも、ルフレ念願の水辺に辿りつけたぞ。まあ、小さい泉であるが。
「フムム!」
「あ、こら! 何がいるかも分からないんだぞ!」
「フム?」
「そんな小首を傾げられても……。そりゃあ、ここまでのモンスターは弱いが、ここもそうとは限らないんだ。慎重に行くぞ」
「フム」
分かってくれたらしい。コクコクと頷いている。俺は抜き足差し足で歩き出したルフレとともに、ゆっくりと泉に近づいていった。そして、2人で泉の淵から中をのぞいてみる。結構深いな。底が見通せない。
「泉っていうか、ちょっと広い井戸?」
「フム~」
「……気配察知にモンスターは引っかからないし、潜るしかないか」
「フム!」
ルフレがやる気満々だ。ただ、ちょっと狭いから、慎重に行かないといけないだろう。
「オルト、周辺の探索は頼む」
「ムム」
「ルフレ、行くぞ」
「フムム!」
そして、俺はルフレとともに泉に飛び込んだ。一応、壁面にも何かないか調べながら、少しずつ潜っていく。
結局、底に辿り着いてしまった。特に何もないか?
「フム……。フム!」
俺が何も発見できずにいると、ルフレが俺の肩をトントントントンと勢い良く叩き始めた。そして、あそこあそこって感じで、泉の底を指差している。
よくよく観察してみると、なにやら白い石のような物がいくつか埋まっていた。それらを掘り出して、上に戻ってみる。
名称:鳥寄せ石
レア度:1 品質:★10
効果:鳥の注目を惹く効果がある。採取から30分経過で、ゴミになってしまう。イベント終了時に、消滅する。
鳥除けではなく、鳥寄せだった。なるほど、こっちは鳥を集める効果があるみたいだった。
「これで作れるのは――鳥寄せ餌? 薬じゃなくて、鳥を誘き出す餌になるみたいだな」
まあ、採取に苦労したし、きっと有用なアイテムなのだろう。
そんな風にアイテムを確認していると、周辺で採取をしているはずのオルトが戻ってくる。しかも、プレイヤーを連れて。
「よう。こんなところにいたのか」
「あれー? ルイン? どうしたんだ?」
「ユートが廃砦とは逆側に向かったと聞いてな。何かあるのかと思って、探してたのさ」
「ふーん?」
だが、これは非常に助かったぞ。鳥除け鉱を無駄にせずに済むのだ。
「良い所に来てくれた」
「う、うむ?」
次回は2/6更新予定です。




