336話 イベントアイテム
イベント開始が合図され、周囲の障壁が消える。さて、俺はどうしようか。素材集めをしたいところだけど、この森にモンスターはいるのか?
少し考え込んでいた俺の耳に、リックの声が聞こえてきた。
「キキュ!」
どうやら早速モンスターが湧いたらしい。リックが全速力で駆けていくのが見える。
「キキュー!」
「ギャウゥ!」
敵は蜥蜴か。真っ赤な体色のコモドドラゴンである。デカイ蜥蜴っていうのは、意外と迫力がある。
正直、遠目でもビビった。爬虫類が平気な俺でもこうなんだから、嫌いな人だったら悲鳴を上げるかもしれない。
「って、リック! 気を付けろ!」
リアルだったら、完全にお前が餌だから! しかし、その心配は杞憂だったらしい。蜥蜴は非常に弱かった。何せ、リックの先制攻撃一発で倒されてしまったのだ。
まあ、第5エリア解放記念だし、第2陣のことも考えたらそこまで強い敵を配置したりしないか。これなら俺たちのパーティだけでも探索できそうだった。
「さて、ドロップはどうなってるかな?」
イベント中、経験値が入らないことはすでに告知があった。モンスターを倒すうまみはドロップだけになるんだが――。
名称:イベント用鉄鉱石
レア度:1 品質:★10
効果:素材。イベント終了時に、消滅する。
「えーっと、イベント限定アイテムっぽいな」
こうやって素材をゲットしろってことか。
「白銀さん、何か出ました?」
コクテンが声をかけてくる。
「ああ、こんなのが」
「なるほど……。廃砦の修復に使うんでしょうかね?」
「かもな」
「白銀さんはこの後どうします?」
「俺? ボス戦だとあまり役には立たないだろうし、素材を集めてボス戦に有用なアイテムってやつを作るかな~」
「なるほど」
「コクテンたちはどうするんだ?」
「いやー、我々だと採取はあまり役に立ちそうもないので……。モンスターを狩る感じですね」
そうやってコクテンたちと話していると、何故か他のプレイヤーたちも集まってくる。
「あのー、俺たちってどうしたらいいでしょう?」
いや、もう自由に行動していいと思うんだけど……。何で俺に聞く? せめてコクテンに質問しなさい。
それにしても、全員が自主的に行動しないって、どうしたの? もしや、自己主張の弱いタイプのプレイヤーさんが固まってしまったか? それか、第二陣の人たちなのかもしれない。
だとすると、トッププレイヤーであるコクテンの指示を聞こうと考えるのもおかしくはなかった。
俺に声をかけてきたのは――今モンスターを倒したからかね? それか、コクテンに直接話を聞くのが怖いのかもしれない。強そうな鎧に身を包んだコクテンたちは、いかにも上位プレイヤーな感じで見た目の迫力が凄いのだ。
話してみれば、腰の低い良い奴なんだけど。
それに対して、俺は弱そうだからね。声をかけやすかったに違いない。
「俺は採取がてらこの辺を回るつもりだけど」
「え? お、俺たちは?」
「別にこのグループで行動しろって言われているわけじゃないし、自由に行動していいと思うぞ?」
どうも、彼らはこのランダムで集められたグループで行動するつもりだったらしい。どうしようかね。もし第2陣の人ばかりだったら、イベントでどう動けばいいのか分からないのも理解できる。
こ、これはもしかして先輩風を吹かすチャンス? ちょっとだけイキがって、イベントの心得とか語っても許されちゃう場面か?
いや、止めておこう。だって、コクテンがいるし。トッププレイヤーの前でルーキープレイヤーに偉そうにするとか、恥ずかしすぎる。
「で、でも……」
やはり不安げにしているプレイヤーたち。そんなに俺の顔色をうかがわなくても……。あ、そうか! 完全に頭から抜け落ちていたが、このイベントは俺たちが発生させたんだった!
このレイドイベントに参加するプレイヤーはそのことについて知っている人が多いらしいし、このプレイヤーたちもそうなのだろう。
そして、俺がイベント参加プレイヤーたちを仕切っていると勘違いしているに違いない。そう考えれば、わざわざ俺の指示を仰ごうと考えた理由に説明も付く。
「俺のことは気にしないでいいぞ。別にリーダーって訳でもないし」
「じゃあ、やることが分からないという人たちは、我々と一緒に廃砦に行ってみましょうか?」
最終的にはコクテンがまとめてくれた。さすがクラマスをやってるだけある。
結局、俺たち以外の全員がコクテンに付いていくらしい。ただね、1つ失敗したことがある。
「廃砦にいくのか……」
出発したコクテンたちを見送りながら、俺は次の行動に悩んでしまう。だって、俺もとりあえず廃砦に行こうかと思っていたのだ。
だがこの状況で廃砦に行ったら、絶対にすぐに再会するだろう。別れたばかりでそれは、超気まずい。
「仕方ない……。廃砦には後で行けばいいや。先に採取を始めよう」
「ムムー!」
「ヤー!」
「キキュ!」
「もしかしたら、釣りや採掘のポイントもあるかもしれん。ルフレやドリモも、その時は頼む」
「フム!」
「モグ!」
俺の言葉に敬礼をして答えてくれるモンスたちを見て、クママが焦った様子で声をあげた。俺の横で飛び跳ねて、自分もいるよアピールをしている。
「クマ! クママ!」
「クママもちゃんと仕事があるぞ。どんなモンスターが出現するか分からないんだ。みんなの護衛役として、しっかり頑張ってくれ」
「クマッ!」
実際、出現する敵によっては採取どころの騒ぎではないだろうしね。
「じゃあ、出発だ! 目指すは――とりあえず廃砦から逆に行ってみようか」
最悪、ボスが出現するまでに着いていればいいのだ。
次回は2/2更新予定です。




